表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/68

第30話 お風呂からあがろう

 両手に冷たいイメージ。

 冷食工場で全身で経験した冷気のイメージ。

 それを掌で再現して、それが冷たく燃えるイメージ。

 なんだか、矛盾しているが、俺はその方がイメージしやすい。炎のイメージが強すぎる所為だろうか。

 そうしている内に、冷たい炎が出来上がり、器の中の水を凍らせていく。ある程度凍ったところで、炎を消した。器の中には、ガラス瓶に入った牛乳や水が入っており、急速に冷却されていく。もう数分も待てば、十分に冷えるだろう。


「ほら」

「便利だな。君のやり方は、真似る気はしないが、ホワイト・アートは買っても良いかもしれないな」


 バカが、器を見ながら呟く。辺りを見渡せば、自衛軍に方々が、冷えていく牛乳に注視していた。もしかして、アプリの能力も珍しいが、それ以上に冷たい牛乳が貴重だったか?


「勝手にしろよ」


バカに一言、そう言った。

 風呂をあがって、休憩室に行くと、これまた知事の計らいで水と一人一瓶までの牛乳が用意されていた。ただし、常温。そういうわけで、バカが再び水を出して、俺が冷やしていた。


「しかし、サラマンドラ相手に使っていなかったな?」


 バカが不思議そうに問いかける。


「冷気が弱いんだよ。人間相手に動きを鈍らせるぐらいしか出力がない」

「そういうことか。鍛錬が足りないな。ヒーローたるもの、人しれないところで、隠れて鍛錬をするべきだ」


 随分と妙に上から目線のバカの抗議だった。


「お前のヒーローのイメージって何よ?」

「聞くか?そうか聞くのか」

「やっぱいいや」


 長くなりそうだし。また、なにか勘違いでやらかしていそうだし。

 しかし、ヒーローね。スマホの借り物の力でヒーローになりましたって、何だが違和感があるな。スマホが無ければ、いや、スマホがあっても十全とは言えない戦いだった。


「君、聞きたまえ!」


 そう言ったところで、スマホが鳴った。当然、相手はあの世の神だ。しかし、よく考えると、このスマホって何処でもつながるのだろうか。


「おう、なんだ?」

「いやー、細マッチョの体を十分に堪能し、目の保養ができたよ。たくましいね。たくましいね」


 カトリーヌ・大塚は、ちょっと浮かれた様子だ。のぞきじゃないか。


「見ているんじゃねーよ。盗撮かよ。バラエティでも見てろ」

「七時から九時代の番組ってつまんないんだもん。ニュースもつまらん。ぜーんぶつまらない! 」


 あの世の番組事情は、地球と同様なのだろうか。


「そうかい。で、何のようだ?」

「いや、一応凍ったバナナで釘を刺しておこうと思ってね」

「は?」


 なんで態々凍ったバナナで釘を刺すのか、いや、突っ込みどころはそこじゃない。


「お仕事は一応終わっているから、速やかにフェニックスに向かって報告するように」

「言われなくてもわかってる。戻ったら殴るからな」

「は、はい? な、何故!? 心当たりが無いのだけど!」


 本気で言っているのかこいつ。


「勝手にあーだこーだ、言ってこき使っているだろうが。そもそも、世界救済士なんやらになるなんて同意もしてない」


 色々と流れに従って動いていたが、そもそも、俺は同意も何もしていない。そもそも、まともに戦ったこともないのに、不思議なスマホ片手に参戦なんて無茶も良いところだろうが。


「あんなにノリノリでアプリ使っておいて、今更!?」

「それとこれは話が別だ」

「あーあー、聞こえない」

「こっちは良好だ」

「この番号は現在使われておりません」

「お前からかけてきたんだろうが!」


 と叫んだところで、電話が切れていた。逃げやがった。


「随分と雇い主に反抗的だな。よくクビにならないものだ。時給を下げられても知らないぞ」


 バカもとい、アレクサンダー・ワトソンが呆れたように言いながら、勝手に冷えた牛乳を飲みながら、並ぶ自衛軍にも手渡していた。


「勝手に飲むなよ」

「別に君の許可もいらないだろう」

「そりゃそうだがな」


 俺も、牛乳を手にとって飲み始める。少しばかり薄い気がするが、しっかりと牛乳だ。キンキンに冷えた牛乳が喉を突き抜けていくのが心地良い。やっぱり、冷やして飲むのが正義だな。

 そして、決してうどんのゆで汁なんかではなかった点は安心だ。しかし、うどんのゆで汁の処理も大変な気がするが、どういう浄水方法をとっているのだろうか。


「しかし、雇い主って神らしいが、ポンコツだぞ」

「見られているというのに口が減らないな。いいじゃないか、さっきも言ったが、僕は死んだことでヒーローになれた。ヒーローとして生きていける」

「死んでいるけどな」

「転生だから、生きている」

「ふーむ」

「何か不満なのか? ヒーローであることに?」

「不満というか違和感だ」


 そういって、俺は両足を投げ出して伸ばした。


「借り物の与えられた力でヒーローごっこ。良いように使われているだけだろ? 違うか?」


ずっと、思っていたのは、そのことだ。自分の力で勝ち取った力ではない、大抵、そういった力は、使う側が使われるように思えて仕方ない。


「違うね。選ばれた人間に与えられた力だ。その力を正しく使うことは間違いか?」

「やっぱり、お前とは意見が違うな」

「例えば、銃がある。殺人鬼を殺すのに使ったら正義、強盗に使ったなら間違い。これ以上の道理があるか?」

「殺人鬼にも良い奴はいるかもしれないし、強盗相手が悪人なら?」

「飛躍しすぎだ。例えを複雑にするな」

「そうか? そういうことだと思うけどな」


 そういって、どうせ答えのでないモヤモヤと一緒に牛乳を飲み干す。しかし、モヤモヤは消えない。

 さてさて、俺は一体、どんな風に生きていきたいのかなっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ