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第23話 車に乗っていこう

 本州と四国を結ぶ本州四国連絡橋の一つで、十の橋の総称が瀬戸大橋。鉄道道路併用橋としては世界最長らしい。恐らく、この異世界においては橋として世界最長だろう。

 ただし、香川から瀬戸大橋を進んでいっても本州にはたどり着かない。櫃石島ひついしじまから先は半場崩落しているらしい。

 その瀬戸大橋を、自衛軍の高軌道車が走っている。乗っているのは、自衛軍の兵士が7人に俺、さらに秘書のおっさんの9人だった。さらに先行して走っているのは軽装甲軌道者、通称ラブと呼ばれる車だ。さらに後ろをついてくるのは73式大型トラック。乗っているのは歩兵部隊だ。

 自衛軍の兵士の装備は、迷彩服に防弾チョッキ、ヘルメット、自動小銃は89式5.56mm小銃と言うらしいを持っている。

 さて、どう見ても車両も装備も自衛隊の物だな。

 見る限り、兵士の人たちも緊張した面持ちのようだ。俺はというと、緊張していない。あまり、緊張とはほど遠いタイプだ。

 向かっている先は、瀬戸大橋が架かっている香川県は与島だ。

 今更だが、秘書のおっさんは、実は副知事だった。今更過ぎる新事実だ。

 いや、だって、秘書課ってあったし、秘書だと思っても仕方ないと思う。

 その事を告げると秘書……副知事は「よくそう思われます」とガックリと肩を落としていた。

まぁ、どうでもいいか。

 あれから県庁に戻り、そのまま高軌道車に副知事のおっさんと一緒に詰め込まれて、車は走り出し、今は瀬戸大橋を走っている。

 簡単な説明を受けたが、どうも凶暴なモンスターが確認されたらしい。何度も襲撃し、何度も逃げられる、否、話を聞く限りは、追い返すのが精一杯のようだ。


「自衛隊の装備で追い返すのが精一杯ね……どんな化け物だ。ゴ○ラか? ○ジラなのか?」

「ゴジ○ではありません。自衛隊の装備を使っていますが、装備の消耗も激しく……今は、余力としても限界になりつつあります」

「なるほどね」


 確かに、弾薬、燃料の消耗、見かけてないが戦車やヘリを使おうにも兵器自体のパーツが消耗するし、武器の消耗するだろう。異世界で現代兵器でチートなんて制限時間付きってわけね。


「で、どんな化け物なわけ? 」

「便宜上、ターゲット08、通称炎蜥蜴(ホムラトカゲ)と呼んでいます」

「蜥蜴ね。でかいのか? 」

「大きいです。さらに鱗が固く、銃弾程度は弾かれ、手榴弾も効かない。素速すぎて、迫撃砲もなかなか当たらない。戦車やヘリを出したいが、今は、整備中……いえ、パーツの換えが無くて出撃できない状況です。あまりに危険すぎて安易に戦わないように討伐自体には賞金をかけていませんし」

「そこまでいくか。俺のアプリが効くかどうかだな。結構無茶やらないといけないだろうかな」


 手助けを求めたのも人手も武器も無いからか。

 電池の残量は徐々に回復もするから、今は100%に近くなっている。最も、電池∞アプリは、容量増加や回復速度増加に金使ってないから、一戦やるのにどれだけ保つか。


「期待しています。あの凍る炎なら効くかもしれませんよ」


 それ、メインじゃないです。でも、名前的に炎属性っぽいが、さて、炎も冷気もどの程度効くかな。


「効かないかもしれないな」

「自信がありませんか? 」

「無い」


 俺は断言した。根拠もなくあるなんて言うタイプでもないし。


「そう言わずに」

「効かないかもしれないだろ? 」

「いえ、効くと信じましょう。信じるのです」


 随分と力強く言う。


「いや、だから、やってみないとわからん」

「そうです。何事もやってみなければわかりません。前向きに考えましょう! 」


 副知事は、目をかっぴらいて、とんでもないぐらいに目に力を入れる。


「前向きね」

「そうです。前向きに、ポジティブに! 今なら炎が効くかもしれない! 銃が効くかもしれない! 理や常識なんて強い意志の前では無視できる! そう、信じるのです! 人の言と書いて信じる。まずは、言葉にして信じてみるので! 」


 ……このおっさん、なんでこんなに前向きなのだろう? ここまでくると躁病かなにかじゃないだろうか?

 もしかして、あの知事もこんな風に励まされているのだろうか? いや、無意味な前向きにすがるようなタイプでもないかな?


「いいですか。福井知事も絶望と言える選挙戦を勝ち抜いて、僅差で今の座につき、次々と革新的な政策を実施したカリスマ知事であり」

「副知事」


 運転席の横に座っていた自衛軍の方がこちらを見ながら呼びかける。


「五月蠅い」


 一言、副知事に言い放ち、また前を向いてしまった。

 副知事はシュンとして黙り込んでしまった。

 さっきから色々と副知事が不遇だ。しかし、俺も五月蠅いと思い始めていたので何も言わなかった。

 日は暮れて、漆黒の闇の中を、瀬戸大橋を駆けていく。


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