第21話 回収しよう
県庁から出ると丁度、夕暮れ時だった。
よく考えると、普段ならこういった時間帯は車の音が鳴り響いていそうなものだが、今は全然車が走っていない。なんだろう、五月蠅いだけの音のはずなのに、随分と寂しく感じられる。
少し用があると行って、先に出ていた。しばらくは庁舎の前で待っていればいい。
しかし、香川県知事と飯ね。普通ならない機会だろう。しかし、わざわざ飯を食いながら何の用事なのか。
スマホが振動し、着信を伝える。
しかし、このスマホ、あのポンコツからしかかかってこないもんだから、まるで友達が少ないみたいだな。いや、実際に、死んでから知り合いがいないわけで、友達もいないわけだが。
ひとまずは出てやるか。
「おう。なんだよ? 」
「いやいや、お見事でした。最初っから波動拳を撃って、背後に回り込んで波動拳を撃ち、さらに波動拳から波動拳につなげてフィニッシュの波動拳を撃って、だめ出しに波動拳を下りなんて」
「お前、波動拳しか知らないだろ」
「そ、そんなことないし。火を噴く技とか知ってるし」
「つーか、見てなかったろお前」
そんなどこぞの格闘ゲームみたいな下り、一切無かった。そんなコマンドも入力した覚えがない。
「テヘペロ」
「今のそれがムカツクから、帰ってから今の下りをお前にするわ」
「ぼ、暴力反対! DVは離婚案件よ! 」
「結婚した覚えがねーよ」
誰が、こんなポンコツと何が悲しくて結婚しなきゃならないんだ。
「だってー、ワイドショーで有名な神がダブル不倫なんて報道していたら、そっち見るしかないじゃん。もうね、SNSもツイッターが大炎上よ」
「……神っていうのは、タレントか何かなのか? 」
なんでこう、所帯じみているというか庶民じみているのか。
「有名どころは、芸能人あつかいよ。そりゃさー」
「お前は? 」
「商店街のアイドルです☆」
「ド地域密着じゃねーか」
つーか、あの世界に商店街あるのか? まぁ、初めから終わりまでふざけた神()なので、まともに取り合う気もないが。
「一応、これで、あとは元の国に戻って連絡すればオッケィじゃない?」
「だろうな。俺が本当に必要なのかどうかも判らないが、これで戻れるのだろう? 」
「そうだよ-。戻ってきたらごちそう作っておくから」
「うどんはやめてくれよ? 」
もう、1年分ぐらいは食べた気がする。これ以上うどんを食いたくない。
「えー、だめー? 」
「駄目に決まっているだろ」
今、言わなかったら、絶対にうどんを準備していただろ。
「そういえばさ、さっきさ、なんで燃やしたのに凍っていたの? 」
ん、その質問が来たか。
「ホワイト・アートって名前の冷気を扱うアプリを買った」
「それって、あんな感じに凍らないよ? 燃えないって」
「それプラス、エフェクト・トリックって名前の見た目と効果を入れ替えるアプリも買った」
「あー、あのドマイナーなアプリ買ったの? 」
カトリーヌ・大塚がどこかバカにしたように言う。
マイナーだったのか。いや、個人的には好みだから別にいいけども。
「ふむ、わざわざ、炎にして冷気を扱ったわけ? なんでまた」
「形としては、炎の方がイメージがしやすかったからな」
「でも、冷気のイメージとかよくできたね。なかなか難しいよ? 」
「冷食の工場でバイトしていたから、そのイメージでやってみた」
「なんと! あれって付箋だったわけ? 」
「何の話だよ」
一般論はさておき、俺としては炎のイメージが一番しやすい。その次に冷気だろう。冷気と行っても、冷食工場のひんやりした程度であるが。初見なら騙せるし、単純な炎よりも攻撃力は低いが、一時的に行動阻害できる。鎮圧目的なら、こんなものだろう。
流石に、あの炎で、人を火あぶりにするのは咎めた。
「ちなみに、冷食工場ってどんな仕事なの? 」
「鮭のハラミの塊が凍った状態で届いてな、それを解凍して味付けして、一個一個並べてまた凍らせる作業を永遠とする」
「つまらなそー」
「本当につまらないぞ。先輩の紹介でなければやらなかっただろうな」
死ななければ、あと一週間ほどでやめる予定だった。いきなりバイトが死んだら、工場長は戸惑うだろうな。
「それはともかく、レッド・ワークスもホワイト・アートも、基本性能のままだと普通ならそこまでの威力にならないからね」
「そうなのか? 」
確かに、買ったときに、さらに課金すれば威力や効果があがると説明にあった気はするが。今は、そんなに金の余裕が無いから、
「ぶっちゃけ、レッドワークスなら、基本のままなら普通はちっちゃい火の玉出すぐらいで、実用目的なら、もっと課金しなきゃいけないものだし。よっぽど火の扱いとイメージが上手いんだろうね。それとも、スキルアプリとの相性が良いのかな? 」
「かもな。俺も火が一番いける」
そういって、話もそこそこに通話を切った。




