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第20話 改正しよう

「とりあえず、俺のことを色々と説明させてもらう」


 知事のおっさんも、俺の向かいのソファに座り、うなずいた。


「俺は愛本恋太郎。世界救済士という仕事で、所謂神様から派遣されてきた。うん、改めて思うと、大げさな名前だし、わけがわからんな」

「神? 」


 知事は怪訝そうな顔をする。


「俺も、それはよくわからん。本当に神なのかもはっきりしない。それで、フェニックスで勇者召喚とやらでこちらの世界に来た」


 ここで、フェニックスの名前を出したのは、十分に話の通じる人だと思えたからだ。


「そんなことが……いや、十分にあり得るか」


 案外に、知事の頭は柔らかいのか、それとも柔軟でないと異世界でやっていけないのか。


「まぁ、香川丸ごと召喚されるよりはな」

「……それで、条約を改正と聞いたが、何をだ? 奴隷……移民の条件、待遇か? それとも、各種技術の提供? 」

「うどんだそうだ」

「うどん? 」


 知事は不思議そうにこちらを見てくる。いや、あんたらがしたんじゃないのかと。


「うどんが週7日は多いから、週5日にしてくれって」

「そんなことは条約に……書いてないが? 」

「はぁ? 」


 おい、大前提の条件からして間違ってないか?

 俺、何しに来たんだ?

 つーか、本当にこれ、世界救済士って奴の仕事なのか?


「国王、条約を結んだ際に、確か、週7日食べてくださいと言った趣旨の発言をした記憶があります」


 知事の横に立っていた秘書のおっさんが、口を挟む。


「そういえば、冗談で言った気がするが」

「もしかすると、本気にされてしまったのでは? いえ、もしかするとですが……」

「いや、しかし、条約文には書いてない……いや、まさか、公の場での発言も条約に含まれると思われたのか? 」

「こちらとは、常識が違いますし、あり得る話です。公の場での発言が条約文と同等の価値があると判断すると……」


 俺にとってはあり得ないのだが。そうとは知らない二人が、話を進めていく。

 いや、そんな馬鹿な話が……。


「確かに。一度、調べておいてくれるか? 」

「了解です」


 秘書がしっかりと返事をする。うん、秘書のおっさんも中々頼りになる感じだ。


「俺、何をしに来たんだろうな」


 そういえば、海に落ちて泳いだのもあって、今になってドッと疲れてきた。何だろう、もう、ちゃんとした風呂に入って思いっきり寝たいな。


「そう言わずに。いやはや、我々としても、異世界の現地民との交流はまだまだうまくいってない状況で……」

「そうかい。……ちなみに、言葉違うのはどうした? 」


 少しばかり気になっていた事だ。


「それは、異世界人の中に、言語に関する魔法を使える人がいる。本来は、精霊と交信するための魔法らしいが、それで我々と意思疎通をしてきた」

「魔法? 」


 そういうこと、あるのだろうか? 魔法って奥が深いようだ。


「それを足がかりにして、我々のような凡人もこちらの世界の言葉を覚えたりしている。なんせ、今じゃ、学校教育でもこちらの異世界語をカリキュラムに組み込んでいるしね」


ふむ、ラノベにあるような、異世界に行ったらスキルが貰えるっていうようなご都合主義は起きていないって事か。しかし、言語に関する魔法ね。俺のアプリと似たようなものだろうか。いや、アプリがそういった魔法を元にして作られているのだろうか。ふむ、今度、ポンコツに聞いておくか。


「なるほどね。若い奴が言葉覚えて、商売しに行ってるなんて聞いたが、そういう流れがあったのか」

「そうだね。そういう若者がいるおかげで、なんとか交流も進んでいる……いずれ、我々は選択しなくてはならないのだろうね」

「選択? 」


 聞き返すと知事は立ち上がった。


「飯でも食べながら、少し、話でもしないか? 」


 飯か。

 しかも、知事。

 これは、もしかすると料亭とか?

 財閥のお偉いさんと密会をする料亭とか?

 愛人と逢瀬をする料亭とか?

 つまらない土産ですといって、まんじゅうの下に札束が入っている料亭?

 いや、食糧事情が厳しいこの世界で、料亭が経営しているのかと。

 でも、もし、経営していたとしたら。

 この世界に来てからと言うか、死んでからの食事事情が切実なので、期待したいところだ。

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