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第14話 お風呂に入ろう

 浴槽の壁に描かれているのは、山と海岸だ。長閑な風景に見える。しかし、それほど特徴はないが、何処かの風景だろうか。客は、俺の他には三、四人しかいない。湯船にはお湯は少なめで、しかもぬるかった。燃料と水が足りず、ケチっているのだろう。その割に、入浴料は1000円とスーパー銭湯よりも高いのだから、渋い顔にもなる。

 ちなみに金は、ゴールドを円に両替した。この香川では、円もゴールドもどっちも使える店が多いらしい、そのことに気がついたのは銀行で両替した後のことだ。

 すぐに浴場の絵のことを忘れ、古くさいマッサージチェアに座る。百円を入れようとしたら、動きませんの張り紙が貼ってあって、あえなく使用をあきらめた。そもそも、脱衣所も照明が付いておらずうす暗いのだから、電気も使用をケチっているのだろう。

 スマホを取り出して、ダメでどうしようもないポンコツ女神、略してダ女神に電話を入れる。


「ヤッホー。どうかした? 」


 相変わらず脳天気な声が、スマホから聞こえてくる。いや、しかし、こいつって本当に神様で御利益があるのだろうか。なにか変わった能力とか持っているのだろうか。

 そもそも、本当に神と言える存在なのだろうか。

 貧乏神とか邪神かもしれないが、それなら納得できなくもない。


「ひとまずすっきりしたんで、今後の報告な」

「いや、そんな、一発抜いたとか報告されてもね。花も恥じらう乙女な私としては戸惑いがっ」

「風呂に入ったんだよ! 銭湯でな! どっかの誰かのせいで、海水で濡れたからな! どういう頭しているんだよ! 」


 花も恥じらう乙女が、すっきり=抜いたって発想しねぇだろ。


「こっちの事、見ていたんじゃないのか? 」

「流石に銭湯に入るなら、チャンネル変えて、ワイドショー見てました」

「異世界の? 」

「こっちの世界だよ。どこぞの美人過ぎる神様が実は整形だったって大スクープやってた」


 本当に、あの神域とか呼ばれる世界は、日本の片田舎かなにかじゃないだろうか。


「それは、どうでもいい。本当に、お前の頭がどうなっているのかがわからん」

「私の頭ではピンク色の象が水浴びしている長閑な風景が広がっています」

「ピンクエレファントって酒や麻薬の幻覚って意味だって知っているか? 」


 それで、間違いないなら、俺が認定してやろう。


「コホン。それはともかく、結局どうするの? 殴り込み? 」


 態とらしく咳払いをする。話をすり替えているが、話が進まないから、これ以上突っ込むのはやめておこう。


「出来たら避けたいな。とりあえず、集めた情報によると、トップは香川県国王だ。国王だけど、選挙で選ばれるのだと。さらに、県議員も選挙で選ばれる。知事の名前を国王にしただけだろうな」

「異世界でも民主主義は生きているみたいだね」

「本当に選挙が民主主義ならな」


選挙は、実際問題コネと世襲なんて話もあるしな。どういう状況なのか知らないが。


「おやおや、選挙が民主主義でないなんて、ティーンエイジャー特有の反抗心かな? 」


 カトリーヌ・大塚が、ニヤニヤと笑っているかのように言う。多分、本当に、笑っているのだろうな。こいつ、そんなに、社会に不満のある幼さがあるんじゃないかと。


「そんなつまらないもんじゃないさ」

「ふっふーん、どうだかね。元ヤンだし」

「ヤンキーじゃねぇつーの」

「でも、殴り込みでしょ? 結局? 」

「そりゃ、そうだけどな。まぁ、出来るだけ避けたいんだけどな」


 いい手が思いつかないのだから、それしか無いだろうか。可及的速やかに県庁に潜入し、国王に会い、ひとまずは話をしてみるか。

 しかし、フェニックスからの人間だと言うなって言われているが、いっそのこと、使者って名乗った方がやりやすいだろうか。もっとも、それを証明する書類などもないのだから、無理があるだろうか。


「そういえば、アプリにね、武器を召喚するスキルもあるんだよね」

「適当に見ていたら、あったな」


 そうそう、スキルにはそういったタイプもあるようだ。


「おすすめはね、投げたら必ず敵に当たって戻ってくるグングニノレ! 石に突き刺さった伝説の剣カリバーソ! 力一杯打ち付けても壊れないミョノレニノレ! 伝説の剣レーヴァテイソ! ヤドギリを意味するミストノレティソ! 伝説の妖刀木寸正! 」

「アホか! 全部パチもんじゃねーか! 」


 なんだその微妙すぎるネーミングは。


「えー」


 やっぱり、カトリーヌ・大塚はポンコツにしか思えない、そんな不満そうな声を出されてもそんなアプリは買わないからな。

 いい加減に通話を切って、俺はアプリを探し始めるのだった。

 結局、モーニングスターは使うこともなく落としたし、手頃な物があれば使っても良さそうだ。

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