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第10話 聞き込みをしよう

 服は乾いたが、潮臭く、潮が浮いてきてザラザラとした感触が不愉快になる。

 うん、ただ、とりあえず、香川上陸と。

 少し離れた場所には住宅が点在しており、馴染みのある形をしている。いわゆる、日本の普通の家だ。


「香川なら、銭湯とかあるかよな? 」

「あっても、やってるかどうかだね。恋太郎君が言うとおりなら、燃料不足で営業できていないかも」

「だろうな……。それでも、何かしらの施設ぐらいあるといいなー」


 浜辺につながる道を歩きだす。これまでの道中で見かけなかったアスファルト舗装の道だ。思っていたよりも、舗装の状態は悪くないが、これは、車の利用が少ないと言うことだろうか。ただ、補修しようにもアスファルトが手に入るかどうかだな。

 場所はあまりはっきりしないが、大まかな地図から考えた結果、ライラの村から海を渡ればさぬき辺りにたどり着くはずだった。さぬきは、高松の東、小豆島の南ぐらいに位置している。

 いや、地図のアプリかなにか入ってないだろうか。

 スマホを操作してみると、確かに地図マークのアプリが入っていた。

 うん、もっと、何が入っているのか後で確認しておこうか。

 起動すると、地図が画面いっぱいに表示される。縮尺を小さくしていくと、香川県が確認でき、さらに大きくしていくと、他の12の国々が表示されていく。12の国々は、一つの島にまとまっていて、その大きさは香川県とほぼ変わらない。場所的には、香川から見て、かつては淡路島があったあたりからやや西よりといったところ。

 そこで、一つ気がついた。香川の山側がどうなっているのかと注目すると、永遠と海岸線が広がっている。

 もしかして、転移した後に山が大崩壊して、海岸になったのだろうか。

 いや、今は、そこは置いておいて、どこを目指すかと言えば、元県庁所在地もとい現首都高松だ。まぁ、行政機能の問題からそのまま高松にしたのだろうなと思うが、国境に近いというのも如何な物だろうか。

 まぁ、そういうこともあって、不可侵条約結んだのだろうけど。


「さて、本場さぬきだけど、やっぱりうどん!? 」

「くわねーよ。俺は、こっちの世界に来てから、誇張なしでうどんしか食ってないんだぞ。ふざけるな」


 なんで、こう、このポンコツ神はうどんを食わせたがるのか。そもそも、俺は、そば派だし。


「いやいやいや、今まで食べたうどんは、異世界の住民が作ったうどんだよ? 小麦も水も異世界でとれたものだよ。さぬきなら別次元のおいしさかもしれない」

「それでも、俺は食わない」


 そういいながら、俺は、うどん屋の前を素通りした。

 住民も何人か見かけるが、一般的な日本人がしている洋服を着ている。もっとも、どことなく洋服はくたびれたものが多い気がする。そして、そうでない服の人間もいるが、それはそれで、もしかすると手作りなのではないかって感じだ。

 さぬきにいても仕方ないかもしれない、もっと情報を集めるためにも高松まで行ってしまうべきだろうか。

 今度は、炎で飛んでいかない。落下が海の上だから良かったものの、空を飛んでいたら間違いなく落下死だ。俺は死に方をコレクションする気は無かった。


「車か? 」


 何となく広い道を目指して歩いていたが、すれ違うのは人ばかりであったが、今になってようやく動きそうな車を発見した。運転席に人が乗っていて、何やら新聞らしきものを広げている。新聞、あるのだろうかな。

 ガソリンがあるのか、それともないのか。とりあえず、聞いてみよう。

 俺は、コンコンとガラスを叩く。

 運転手は、初老の男性で、洋服を着ている。少しばかり面倒そうな顔をしたが、すぐにドアを開けて出てきてくれた。


「何か用かい? 」

「申し訳ないけど、高松までどう行けばいいのか聞きたくてさ」


 本当は知っているが、とりあえず、話の種に振ってみる。


「この道沿いに行けば着くが、そんなことも知らないのか? 」


 あ、やば、なんだか、怪しげに見ている。


「いやー、イフリートの方に行ってたら、この辺りは初めてで」

「そうかい。あっちの国は大変だろ? 言葉も難しいし。若い連中は、どんどん言葉を覚えて行商しているが、俺みたいなのは今更新しい言葉覚えるのも一苦労でな」


 おっと、なんだか、勝手に納得してくれたようだ。ふむ、なるほど、確かに、俺は自動翻訳アプリがあるが、通常は、言葉を覚えなければならないと。


「ちなみに、ひとつ聞きたいけど。これってガソリンで動いている? 」

「とんでもねぇ。ガソリンなんてもう、ほとんど残ってないさ。貯金を切り崩して、魔石式に改造したんだよ。あーあ、年金ももらえそうにないし、子供は地元から出ていったきりだし、老後をどうやってやりくりしていくかねぇ」

「大変ですよね」


 そう相づちをしつつ、車を観察するが、さほど変わったところは無い。いや、タイヤのホイールに青い魔方陣が描かれている。これが、つまり、魔石式にしたってことだろうか?

 ふむ、やはり、魔法を香川でも使っていたか。そして、動力源として魔石を使っていると。なるほどね。

 とはいえ、生活も苦しそうに思えて仕方ない。

 異世界転移、合う人も合わない奴も当然いるってことか。

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