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遠足大事典 -Ensoyclopedia- 作者:シェフ

~ 当日編 レースパート ~

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持ち物18  妖の華


 キャップのつばを目深に下ろして影を作り、麻門宮まかどみやは少しはなれて様子を見ていた。
 まだ油断はできない。
 手負いのけものが、追いつめたはずの一宮いちのみや 乙乎おとこがなにをしでかすか、わかったものではないからだ。

 乙乎が赤い矢印を紙にかいたものをたくさん作って、それで傭兵部隊をほんろうすること。
 その策はすでに見破っていて、現地の本当の矢印は青かなにかに塗りかわっていること。
 そういったことを、じつは麻門宮は、ミカドから聞かされていた。
 聞いたときは半信半疑だった。
 お互いに確証もないのにそこまで読み合い、実際に対策と反撃をこころみる。
 それを裏づける彼らの決意と行動力には感心したが、かといって答え合わせが必要ないわけではなかった。

 いま、こうして麻門宮はほかのチームに先行させて乙乎を追わせ、乙乎の出方をたしかめていた。
 はたして、ミカドの言ったとおりだった。
 乙乎とミカド、この二人のひきいるチーム同士の勝負は、尋常なものじゃない。
 というのはつまり、これはただの競争じゃなく、この舞台にくるまでのあいだに、水面下でものすごい読み合いを重ねてきた結果だということ。
 さっき答え合わせといったが、きょうのこの遠足当日が、2週間前からの頭脳戦の答え合わせになっているんだ。

 麻門宮は頭を動かさずに、視線だけを左右にはわせた。
 乙乎の姿は見えない。
 それを探し回る先行の自然観察チームも、いまだ奥まで踏みいってはいない。
 それはそうだ。
 麻門宮が矢印の正体をさけんだが、それが本当であるかどうか、彼らにはわからないのだろう。
 ……と、そこまで考えて麻門宮はキャップの下で愕然とした。
 矢印のことをミカドから聞いていたのは、ウチのチームだけだった?
 先行部隊にはついさけんだが、あれは真実を教えるためではなく、確認としての意味合いだったのに。
 わたしらのチームにだけ真相をつたえ、ほかの攻撃部隊にはだまっている。
 なんで、そんなことをする?
 いま、ここにくるまでに実に2チームも、真相を知らなかったばっかりに、乙乎によって倒されてしまったじゃないか。
 おかげで、こうしてふいを突くみたいなことで乙乎を捕まえる寸前に追いこむことになったわけだし、まったく。

 ふい、といえば、と麻門宮はふと気づいた。
 これはひょっとして、乙乎の意表を突くための、ミカドの作戦だったんじゃないか?
 よく『敵をあざむくにはまず味方から』とかいう、あれだ。
 乙乎の矢印をあるていどまで通用させて、安心したところを狙い撃ち。
 この状況は、まさにそれになる。
 たしかにそれならつじつまがあうし、現に成功している。
 だけど……と、麻門宮はうなった。

 気にいらないね、なにも知らない人を利用する、ミカドのやりかたはさ。

 麻門宮は心の中でぶつくさとぼやきながら、乙乎のいるであろう木陰にむかって、包囲の輪をせばめていった。
 麻門宮は、黙りこんで考えごとをしているとき、その長身に見合わぬ小さな口がへの字に結ばれるくせがある。
 そんなとき、ふだんから親しくしている仲間が、ここではチームメイトの鹿洲かしゅう旅岡たびおかが、横からほっぺたを突っついたり手のひらではさんでくるくるもんだりしてくる。
 緊張をほぐしたり、不機嫌そうな表情を直したりしてくれるスキンシップ。
 麻門宮もそれをわかってて、野球の練習試合の前には、わざとふくれっ面をして見せることもある。
 とてもいい仲間にめぐまれたわけだが、その二人とも半包囲にくわわっているため、いまはそういったことはなかった。

 包囲の先にある木陰。
 まわりには、さっき乙乎がはりめぐらせたたこ糸が広がっている。
 つまり、その中心に乙乎がいるわけだ。
 じりじりと近づく。

 糸が音もなく少したわんだ。
 こまかくふるえて、糸が幹からはずれ、小枝に巻きついていたところが動画の逆再生のように反対に回って画用紙が戻っていく。
 たこ糸の持ち主が、正確無比に糸をあやつって矢印を回収しているのだ。
 画用紙はやぶれず傷一つつかず、糸からはずれたりはしない。
 鎖のように編みこんである糸自体も丈夫なようだ。
 もしどこかでとれたり千切れたりして落ちると、それが『ゴミのポイ捨て』あつかいになってしまう。
『持ち主が最後に触った状態で地面についたゴミは、最優先で拾って片づけなくてはならない』。
 遠足のルールだ。
 それを防ぐためのこの操糸術。この瞬間のために、どれだけの練習を積み重ねたのか。
 麻門宮には想像もつかなかったが、おそらく宿題の時間を犠牲にしていることだけはまちがいなかった。

 さて、糸と画用紙がまるで生き物のようにひとところに集まるや、そこが爆発するかのように落ち葉をけちらして人影が躍り出た。
 一宮乙乎だ!
 きっと、またバナナを神速で食べて、瞬間的にスタミナを回復させてのダッシュだろう。
 乙乎はこちらを振り向きもせず、一目散に森の奥に駆け出した。
 その方角が、目的地の大岩につうじているかはわからない。
 でも、いまは追うしかない。

「逃がさないっ!」

 麻門宮はチームメイトの二人をともなって走り出した。
 その前を先行のチームがゆく。
 乙乎の背中が見えた。
 頭には細いはちまきをたなびかせて、その左右にはさきほどのたこ糸と画用紙がひらひらとついてきている。
 麻門宮はこれを好機と見た。
 乙乎は矢印をしまいきれていない。
 あれではいつはずれて落ちるかわからなくて気が散るだろうし、なにより空気抵抗が大きくてスピード自体が落ちている。
 このまま追い続ければ捕らえられる!

 と、同時に、麻門宮は拍子抜けな気がした。
 あれだけがんばって準備をした乙乎の遠足が、大岩の上にのぼるとかいう面白そうな目的が、ここでついえてしまうのか。
 乙乎は綿密な計画を立てて作戦を練ってきたのだろうが、一つ失敗しただけで、こうももろくなるのか。
 麻門宮の目は、無様に宙を舞う画用紙をただ映していた。
 あれは、こちらの部隊を罠にはめるものなんかではもはやない。
 降参をあらわす白旗だ。
 もう負けだから、追ってこないでと、そういう情けない意思表示だ。
 時代劇なんかでやる、たたきふせられた悪役がふんどしをひらひらさせながらみっともなく逃げていくのと同じだ。

 麻門宮は背中のリュックサックにはいったペットボトルに意識をやった。
 これは、行きのバスに乗る前に乙乎から渡されたものだ。
 あのバナナ・オレがはいっている。
 乙乎の合図でこのバナナ・オレを飲むことで、契約が成立する。
 謀反モード、というやつで乙乎の協力をすることになっているわけだが。
 コレの出番ももうこないだろう。
 もともと、こちらが乙乎から受けていた依頼は、ミカド本人に逆襲して足止めをすることだった。
 でも、いまやそんな余裕はない。
 なら、予定を変更して、いま乙乎の背中を襲う傭兵たちを食い止めるか?
 それも、たぶんムリだ。
 まず、そうするための乙乎の指示が必要だから。
 こちらを振り返ってはなしかけているヒマはなさそうだ。
 仮にそれができたとしても、こちらがバナナ・オレを飲んでからでないと乙乎の協力はしないし、そうしてるあいだに乙乎が捕まってゲームセット。
 悪く思わないでほしいが、そういう契約になっている。
 だから、こういう緊迫した場面で臨機応変な対応はそもそもできない。

(あーあ、残念だね。けどまあ、ここまでがんばったとは思うよ。ちゃんとやきゅうさそってあげるから、それでよしとするんだね――)

 はあ、と麻門宮が走りながらこっそり嘆息したとき。

 前方の地面が爆発した。

「なっ――」

「ぐわあああーっ!?」

 さっき乙乎が潜伏場所から駆け出したときの情景が脳裏をかすめた。
 激しく落ち葉を巻き上げ、ロケットみたいな勢いで発射する人影。
 だけどいま、そうしたのは乙乎ではなかった。
 発射の方向も前ではなかった。

 落ち葉の舞い上がるほうを見る。
 前を走っていた傭兵が、二人いない。
 麻門宮は顔を上げた。
 夏の再来のように差しこむ強い日差しが、森のこずえにさえぎられて空はせまい。
 キャップのつばの下で目を細め、逆光に黒く焦げた二つの人影をとらえる。
 傭兵たちが空中に吹き飛ばされたのだ。

 麻門宮は視線を地面に戻した。
 降りそそぐ落ち葉の向こう、黄色いものが見え隠れしている。
 麻門宮には、いやほかの誰にでも、それがなにか一目でわかった。

「バナナの……皮……!」


  ――バナナの皮――

  バショウ科の多年草で、その中で果実を食用にするもの。
  の、皮。
  バナナの皮は食べられないが、バナナ自体は世界中できわめて広く流通している。
  では、世界中で大量にあまったバナナの皮はどうするのか。
  ごく当然、答えはおのずと集約される。
  すなわち、皮を踏んですべって転ぶ、古典的なギャグとして世界中で息をするように自然に広く利用されるのだ。

  バナナの皮の内側には、すべりやすい植物油がたくさんふくまれている。
  つまりよくすべる。
  古くから映画などでもよく利用され、世界的に有名なかの喜劇王も多用してお茶の間に普及したほど。

  ちなみに、ギャグとしてではなく大真面目な学術研究をおこなった、日本国の学者・馬淵清資氏らは西暦2014年にイグ・ノーベル賞を受賞するという、本当に素晴らしい業績を残していて、どちらかというとそっちのほうが世界的に重要である。

    『遠足大事典 -Ensoyclopedia- 用語集』(詩得符出版刊)より抜粋


 森を舞う落ち葉の柱に元どおり顔面から落ちてきた二人の傭兵を見て、残り一人は完全に色をうしない委縮した。
 これ以上進むと、自分も同じ目にあうと思ったのだろう。

 麻門宮も一瞬足をとめて、我を忘れた。
 なにが起きたのかはわかる。
 バナナの皮で傭兵が天高く転ばされた。
 やったのは、たぶん乙乎だ。
 だけど、なんでそんなことが起きた?
 傭兵たちはバナナの皮が見えなかったのか?
 それに、バナナの皮を地面に置くだなんて、そんなことをしてもいいのか?
 『持ち主が最後に触った状態で地面についたゴミは、最優先で拾って片づけなくてはならない』。
 遠足のルールだ。
 傭兵にケガをさせないようにふんわり転ばせたのはいいけど、そのあと拾いに引き返さないといけないのに――

 はっと我に返る。
 前に進みながら、乙乎の背中を目で追う。
 乙乎の横に、さっきからひらひらしていた矢印はまだあったが、それはようやくするすると、糸をたぐりよせて両手に吸いこまれて行っていた。
 それを見た瞬間、麻門宮は理解した。
 そして驚愕した。

 乙乎は、わざと矢印を出しっぱなしにしていたんだ……!

 左右にひらひらと画用紙をしまいそこねて、カッコわるく逃げまどっていたのは演技だった。
 万策尽きたと見せかけて、不用意に背後に近づかせるため。
 矢印自体は方向をしめさなくても、目の前をうっとうしくちらつかせて視線をそちらにそらさせるため。
 そして足元の注意がおろそかになったところで、バナナの皮をしかけて転ばせる。
 走る勢いはそのままに、力の向きだけをきれいに変えて大空へと打ち上げる――バナナの皮を差し出す位置、角度、タイミング、すべて職人の経験と勘がいかんなく発揮された熟練の技!
 当然、遠足で他人にケガをおわせてはいけないので、落ち葉のたくさんあるところにやさしく顔面から激突させる。

 バナナの皮を地面に置く行為、それ自体もアウトではなかった。
 バナナの皮はいま、地面から消えている。
 麻門宮はたしかに見た。
 皮の根元に、やはりたこ糸がくくりつけられている。
 さっきの画用紙と同じように、乙乎の手首のスナップで皮が宙を舞い、あるじのもとへと帰っていったのだ。
 しまいこんだ先は、リュックサックの下。腰の後ろにつけられたウエストポーチ。
 バナナを鞘から抜いて食べたあと、皮はそこに『捨てた』のではなかった。
 皮だけをまきびしとしてはなつための、ウエストポーチは第2のホルスターだった!

 麻門宮が知っているはずもないが、乙乎が自室に置いてきた『遠足のしおり』のメモ帳部分に、この作戦の名前がきちんと書かれている。

約束の儀式スリッピングスネアー≫!!

 これで、攻撃部隊の3チームはすべて倒れ、麻門宮のチームが残された。



 乙乎は走る速度をすこしゆるめた。
 背後から迫りくる気配はない。
 皮にひっかからなかった最後の一人も、その場で足をとめたようだ。
 乙乎は内心ほっとした。

 乙乎の持ってきたバナナは、全部で2本。
 必然、皮は2枚しかない。
 皮や糸はちぎれてこそいないものの、一度使った分の傷みやゆるみがあって、再利用はできない。
 だからもし、最後の一人ががんばって追ってきた場合、これ以上しかける罠はもうないのだ。

 とはいえ、これは運よくたまたま追ってこなかった、というわけではない。
 あるていどの期待はあった。
 相手の立場から考える。
 追っ手からすれば、乙乎があとどれくらいの皮を持っているかはわからないし、使用済みの皮を再利用できるかどうかも知らない。
 それどころか、ほかにどんなしかけを作って手ぐすね引いて待ちかまえているか、わかったものではない。
 その上でいま、仲間の二人が一瞬で倒された。
 このまま追えば、次は自分の番だ。
 むざむざやられに行くようなことはしたくない。
 だから追うのをあきらめる、という理屈だった。

 ミカドのはなった刺客たち、3チーム分の脅威は消えた。
 そして、のこる麻門宮たちだが、このチームにはすでに調略をしかけてある。
 つまり、契約が発動し、内応がなれば、麻門宮は実質味方だ。
 本人たちにはそのときのシチュエーションをすでに伝えてある。

 乙乎は障害物の少ない道に移って、右手をさっと上げた。
 麻門宮のチームを呼ぶ合図だ。
 打ち合わせのとおり、3人が駆け寄ってきた。
 合流して、いまや4人とも走る速さは小走り。
 そのまま乙乎は手を前に出し、森のある地点をさししめした。

 小高い丘のようになっている地形。
 木々は相変わらず密集しているが、このあたりは日当たりや風通しがいいのか、太く立派な幹のものが多い。
 横枝もびっしり張り出して網目のようになっている。
 すこし行くと、前がちょっとした崖になっていて、そのまま進むにはあぶない。
 だがその分ここは見晴らしがよくて、広場に続く近くの道が見えるところもあった。
 ここは、乙乎と音菜、それに友親が、運動会の代休に下見をして、特に気をつけるべきとした箇所だ。

 乙乎はこの場所を合流地点にした。
 向こうにうっすら見える道には、だれの姿もない。
 ミカドがいまどのあたりにいるのかは、ここからでは判別できない。
 確認のためには、この丘をおりて道まで出る必要がある。
 だが、ゲリラ戦術中の乙乎が目立つところに行くわけにはいかない。

 ――ころあいだ。

 あごからしたたる汗を上着のそででぬぐうと、乙乎はばっと麻門宮のほうに振り向いてさけんだ。

「謀反モード、発動だ! 麻門宮隊、バナナ・オレを取り出して携帯!」

 麻門宮たちはだまって互いのリュックサックを開け始めた。
 バナナ・オレのペットボトルは上のほうにいれていたようで、3人ともすぐに取り出すことができた。
 乙乎は3本のボトルを見てから、さらに指示を出す。

「各員、バナナ・オレを摂取! 飲み終わり次第ここを出発し、ミカドを探索するんだ!」 

 バナナ・オレは通常のバナナとちがって、ミキサーでこまかくくだかれている。
 そのうえ牛乳とまざっていることでのど越しがよくて飲みやすく、消化もよいのでエネルギーになりやすい。ついでに水分も補給できると、いいことづくめのアイテムだ。
 麻門宮たちがこれを飲んで体力を回復させたところで、ミカドの本隊に奇襲をこころみる。
 これが、麻門宮のチームに説明していた作戦だ。

「本隊を見つけ次第、リーダーを攻撃! 野球にさそって、楽しいひとときをすごすように!」

 乙乎は右手を鋭く横に広げて、道のほうをしめした。

 麻門宮たちは、やはりだまってペットボトルのふたをあけはじめた。
 それを見て、乙乎はちらっと道のほうに視線を送った。
 ここで都合よくミカドたちが通りかかってくれたりするとよかったのだが、そうそううまくはいかないものだ。

 それにしても、きょうはいい天気だ。
 それに暑い。
 気温が高いのもそうだが、ここまでいっしょけんめい走ってきたから、全身汗だくだ。
 体力も消耗して、それなりに疲れた。
 だが、とても心地のいい疲れだ。
 この大好きな遠足の場で全力をつくして、目的を達成させるためにがんばるということ。
 これは本当に、なにものにもかえがたい充実感をもたらしてくれる。

「きょうは暑いね」

 麻門宮がはなしかけてきた。
 まったく同感だ。
 体温も上がって、身体がよく動く、とてもいい日だ。

「乙乎はさ、お弁当になに持ってきたの? やっぱり、おにぎり?」

 麻門宮が続けて問いかける。
 乙乎は一瞬だまりこんだが、質問には答えた。

「ああ、定番だろ? 中身はうめぼしだ。一番うまいからな」

 言いながら、乙乎の心臓がどくんと跳ねた。
 鼓動は見るまに高く、早くなっていく。

「だよねー。わたしもおにぎりさ。パンとかだと、おなかにたまらなくてね。……でも、わたしのはうめぼしじゃなくて、しおこんぶとおかかだけど」

 そう切り返して、麻門宮はまただまった。
 足元の落ち葉が、そよ風に押されてカサカサと鳴る。
 乙乎のひたいから、かいていた汗の最後の一滴が散った。

 ペットボトルのふた。
 当然、これをはずさないと中のバナナ・オレを飲むことはできない。
 さっき乙乎が指示してから、すこし時間がたった。
 だが、まだふたはあけられていない。

「ねえ、ひとつ気になったんだけど」

 麻門宮がまた、はなしかけてきた。
 顔をややうつむけて。
 ペットボトルのふたに手をそえて。

 その手を麻門宮は、しっかりと。
 右に。
 回転させた。

「このバナナ・オレ……悪くなってるよ」

 麻門宮は決然と顔を上げた。
 そして後ろの2人も。

 ペットボトルを、した手に投げ返しながら。

 それらの3本が乙乎の身体に当たって、抱えるように受け取ったとき、ひときわ強い風がこの丘を渡っていった。
 こずえがさわがしくゆれ、あたりの落ち葉がごそっと巻き上げられた。
 ☆★ 次回予告 ★☆

決裂した交渉。破棄された契約。
ならなかった、調略。

疲れた身体、両手に荷物、相手は複数、逃げ場のない地形。
最悪の状況。
これをくつがえす逆転の一手は――

次回、遠足大事典 -Ensoyclopedia-
持ち物19  真・〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

――サブタイトルがネタバレになるので、伏字にさせていただきます。
+注意+
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