第12夜
約一年振りのMNHの更新です(汗)
覚えている人いるんだろうか?
「待たせたな明奈ちゃん」
龍星と足軽はエビルズタウン中央病院を出るとその足で桜花へと既に店内に居た明奈に声をかける。
「あ、龍星さん。・・・・・・何ででしょう?スッゴい久しぶりに龍星さんの顔を見た様な気がします」
「・・・・・・気のせいだ。きっと」
誰が何と言おうと明奈の気のせいである。
「そうですよね?ところでお探しの牙狼鬼ですが、今夜辺り南区のアーケード街に出没しする可能性が高いです。・・・・・・師匠はどうやって調べたんでしょうね?」
「一色だからな。考えるだけ無駄じゃないか?」
明奈は一色の情報網に首をかしげ龍星は気にしないように言う。
因みに足長は、
「ふむ。美味い珈琲ですね」
「あらあら〜♪ありがとうね♪」
美桜の煎れた珈琲を飲み感想を言っていた。
「でだ。一色、お前また母さんを怒らせたのか?」
「・・・・・・強制されたのよ」
龍星は後ろを振り向きフリフリエプロンでウェイトレスをやっている一色に声をかけると一色は美桜に強制されたと言ってウェイトレスに従事していた。
「あらあら〜♪一色ちゃん人気あるのよ〜♪ウチの店に就職しない〜?」
「勘弁シテクダサイ・・・・・・(泣)」
ニコニコと言う美桜にさめざめと泣きながら呟く一色であった。
時は流れ午後21時・エビルズタウン南区アーケード街。
「こいつは・・・・・・」
「酷い有り様ですね」
龍星と足長はアーケード街の惨状を見て呟く。
そこは牙狼鬼と何者かの戦闘(壁に爪で削ったかのような跡と拳の跡と術に寄る焦げ跡が残っていた)によって見る影も無くボロクソになっていた。
『・・・・・・らぁっ!』
『・・・ちゃん!』
「足長!」
「はい!」
アーケード街の奥から聞こえた声に龍星達は走り出した。
「待ちなさい!ここから先は危険だ!」
途中、避難誘導をしていた警察に止められた龍星はハンターライセンスを提示し、
「ハンター左島龍星と足長軽だ!この先に追っている妖魔がいるので入らせて貰う!」
「失礼しました!お気をつけ下さい」
「そちらも避難誘導が終わったら退避を!」
龍星と足長は警官に言い残すとアーケード街を奥に走って向かう。
「左島さん、牙狼鬼と戦っているのは誰だと思います?」
「ハンターが居るのは間違いないだろう。残っていた跡とさっき聞こえた声から察するに拳士は男で術師が女って所だろ?」
龍星と足長は走りながら牙狼鬼と戦っているであろう人物達が誰なのかを話し合う。
しばらく走ると戦闘の物だろう破砕音と煙が見えた。
「準備は良いか?」
「勿論。いつでもOKです」
龍星と足長は互いの武器を手に取るとスピードを上げて一気に距離を詰めた。
「おらぁっ!」
男性の拳が蒼い毛並みの狼の獣人・・・・・・牙狼鬼に迫る。だが、牙狼鬼はそれを避けると逆に男性の腹に蹴りを叩き込む。
「グハッ!」
「お兄ちゃん!」
男性の近くに居た陰陽師姿の女性が男性に駆け寄る。
「大丈夫だ!それより気を抜くな!」
しかし、男性は駆け寄る女性を手で制し再び牙狼鬼に向かって攻撃を仕掛ける。
「ッラァッ!」
「グガッ!?」
男性の繰り出したハイキックが牙狼鬼の顔面にヒットし牙狼鬼の体勢が崩れた。
「菊華!」
「はい!喰らえ炎撃符!!」
女性・菊華は懐から数枚の符を取り出すと牙狼鬼に向かって投げた。すると符が凄まじい炎を発し牙狼鬼に張り付いた。
「ギィヤァァァァァァッ!」
火だるまになり悲鳴をあげながら地面を転がる牙狼鬼。
「やった♪」
「これで終わりだな」
男性も菊華も火だるまになった牙狼鬼に安堵の表情を浮かべる。
だが、牙狼鬼は龍星をして手強い相手と言わしめるAランク以上の相手。しかも名前からして分かるであろうが半妖魔だ。
火だるまになった位で終わる相手ではない。
「ウォォォォォォォン!」
火だるまのまま、男性と菊華に向かって駆け出す牙狼鬼の目は攻撃色で真っ赤になっている。
「なっ!?菊華っ!!」
男性が気付いた時には牙狼鬼は既に彼等の近くに迫りその爪を突き出していた。
「菊華っ!!」
男性に出来たのはその身を盾にし妹である菊華を守る事だった。
ガンッ!
「グガッ!?」
牙狼鬼の爪が男性を貫かんとする正にその刹那。
何処からともなく飛んで来た巨大な片刃の剣が牙狼鬼の爪を防いだ。
「「えっ?」」
「アッブネェー!正に間一髪だったな」
「左島さん、アレ通りすぎてたらどうしたんです?」
「大丈夫。間に合うように投げたからな」
「答えになってないよーな?」
男性と菊華が剣が飛来してきた方を見ると其処には二人組の男性・・・・・・龍星と足長が立っていた。
「グルル。誰だ貴様らは?」
腕を押さえながら牙狼鬼が龍星と足長に尋ねる。
「ハンター左島龍星」
「同じく足長軽」
「赤き炎狼竜に・・・・・・知らんな?」
牙狼鬼の言葉に男性と菊華がカクッとなる。
「そりゃあ知らんだろ。今日がエビルズタウンでの初仕事だしな」
足長はそう言うと懐からトンプソンを取り出し戦闘準備に入る。
「左島さん、牽制しますんで剣を」
「頼む」
そう言って足長は牙狼鬼の足下を狙って引き金を引いた。
ズダンッと言う音と共に一発の銃弾が発射され足長の狙い通り牙狼鬼の足下に向かって飛んでいった。
「温いわ!」
足長の目論見通り牙狼鬼は銃弾をバックステップで避け、男性と菊華との間に距離をあけた。
「よっと。さて、此処からは俺と足長の二人が相手だ」
その隙に龍星は距離を詰め壁に突き刺さっていたスウェンガナル・ドラグーン(以後はスウェンガナルDと記す)を引き抜いて肩に担ぐ。
「お前達は後で話がある。とりあえず下がっていろ」
龍星は牙狼鬼から目を離さずに自らの背後にいる男性と菊華に忠告する。
「後から来てふざけた事抜かすな!あいつは俺達の姉貴の手足を喰った敵だ!姉貴の仇は弟妹の俺と菊華でぶっ潰す!てめえこそ下がってやがれ!!」
男性は龍星にそう言うと一気に駆け出し牙狼鬼に殴りかかる。
「ちっ!おい、そこの女」
「は、はい!」
「お前はハンターか?」
「いえ、陰陽庁エビルズタウン支所所属の陰陽師です」
陰陽庁とは平安時代にあったと言われる陰陽寮の現代版であり、古来より伝わる陰陽道を持って影より人々の平穏を守る組織である。
「・・・・・・ちょっと待て。陰陽庁なら牙狼鬼退治が俺指名の依頼っていうのは分かってるんじゃないか!?」
尚、ギルドと陰陽庁は持ちつ持たれつの関係であり依頼の情報も互いに提供しあっている。
「あ、そ、それは・・・・・・」
「クソッ!これについては後できっちり説明して貰うからな?足長、行くぞ!」
「了解!」
龍星は足長に叫ぶと両腕を獣化させ、スウェンガナルDを構えると男性と戦う牙狼鬼に向かって駆け出し足長はトンプソンを構え龍星の援護に入るのであった。
次回に続く。
作中に出てきた男性と菊華は第11夜に出てきた雪華の弟妹です。
次回は牙狼鬼との決戦です。