第5夜
第5夜の投稿です。
長くなりそうなので途中で切りました。
決着は次回!
今回、ロキ様の投稿キャラの門倉戒とセリナ・マニゴルドが出演しております。
後、今回最後の方にちょろっとゲスト出演で珈琲中毒様の作品の主人公夫妻の名前が出ています。
珈琲中毒様、申し訳有りませんでした(土下座)
「……そうか。ベルーナがのぅ」
此処はエビルズタウンの市長室。
カーミラを取り敢えずギルドへと連行した龍星は一度うさぎ屋ビルへと戻り何時もの訓練を終えた後、そのまま市長の下へと足を運んだ。
「して、お主はどうするつもりじゃ?」
赤い髪を背中まで伸ばし白いスーツに身を包んだ女性が龍星に尋ねる。
「カーミラの話から察するにベルーナの生存は絶望的だ。けど、せめて遺体だけでも取り返す」
「それは犯人を探し出すと言う事かの?」
「あぁ。墓に入ってるのが下半身だけなんて悲しすぎるからな」
あの後カーミラに詳しく話を聞くと、どうやらベルーナが襲われた時カーミラも一緒にいたらしい。カーミラは何者かに襲われて意識を失う直前に黒い刀を持った男の姿を見たそうだ。そして、カーミラが目を覚ました時其処には断ち切られたベルーナの下半身のみがあったと言う。
「分かった。ならば儂から正式な依頼としてうさぎ屋に依頼するのじゃ。どうかベルーナを取り返してやってくれぃ」
女性はこの一件を正式な依頼として龍星達に依頼すると龍星に向かって頭を下げる。
「この依頼確かに受けた。安心してくれカグツチ市長。ベルーナは必ず取り返す」
女性……カグツチに龍星は力強く頷いて依頼を引き受けた。
「時に龍星よ。此度の犯人、カーミラとやらが言う通りハンターが犯人じゃろうか?」
「……いや、ハンターじゃ無いと思う。俺はハンター全員を知っている訳じゃないが罪も無いベルーナを殺すような奴がハンターの中に居るとは思えない。それに、ハンターには暗黙の掟があるしな」
不殺。それこそがハンターに課せられる暗黙の掟。
それを破った者は自らが追われる事になる。
勿論、例外もある。余りにも凶悪な犯罪を犯した妖魔や獣人に対してのみ許可される滅殺認定。滅殺認定が降りた犯罪者は生死を問わずとなっている。
「しかしのぅ、ベルーナはああ見えてかなりの力を持った妖魔じゃぞ?そのベルーナをあっさりと殺す事が出来る者なぞハンターくらいしか思い付かんのじゃが」
「忘れたかカグツチ?居るだろう。ハンター暗黙の掟に捕らわれず金の為や自らの快楽の為に罪も無い者達を殺す奴らの事を」
「っ!賞金稼ぎか!」
カグツチが顔をしかめながら言い放つ。
※賞金稼ぎ(バウンティハンター)・闇のギルドに所属する元ハンター達の事。金の為に所属する者や犯罪者、ターゲットを追っている最中に一般人を巻き込んでしまいやむを得ず殺害してしまった者が所属している。尚、ハンターとの仲は険悪である。
「確かに奴らなら可能性があるのぅ」
「あぁ。アイツラなら依頼があればベルーナを殺しかねん。そこでだ。俺はこれから『ジリリリリン!ジリリリリン!』っと悪いちょっと待ってくれ。『ピッ』俺だ。あぁわかった。桜花で待っててくれ。直ぐに向かう。『ピッ』」
カグツチとの会話の最中、龍星の懐から今や懐かしい黒電話のベル音が鳴り響くと龍星は懐に手を突っ込んで携帯を取り出しカグツチに断りを入れてから通話ボタンを押して電話に出る。
そして、短い会話を済ませると再びカグツチと話し始める。
「すまんな」
「気にせずとも良い。所で誰からじゃ?」
「古い友人だよ。今から母さんの店で会うんだよ。悪いが今日はこれで失礼させて貰うぞ?」
龍星はソファーから立ち上がるとカグツチにそう言った。
「有無、またの龍星。美桜によろしく言っといてくれい」
「ああ」
カグツチと軽い挨拶を交わした龍星はその後、桜花へと向かうのだった。
それからしばらくして龍星は桜花のドアを開け店内へと入って行った。
「いらっしゃいませ♪あら、龍星。奥でお客様がお待ちよ?」
「ああ、ありがとう母さん。後、珈琲を頼む」
「はいはい〜♪」
龍星は美桜に珈琲を注文すると、店の奥に向かって歩き出した。
「待たせたな。元気そうで何よりだ。戒」
「構わん。……一別以来だな龍星」
龍星は奥の席に座っていた男女の男の方に声をかけると戒と呼ばれた男は無表情で龍星に応える。
この無表情な男の名前は門倉戒。数年前まで龍星の友人でハンターだったが、今はとある事情(戒のプロフィール参照)でハンターを辞めて賞金稼ぎ(バウンティハンター)になった。その際、龍星とは決別していた。
「そちらの女性は初めましてだな。ハンターの左島龍星だ」
「セリナ・マニゴルド。戒の相棒だ」
セリナ・マニゴルドと名乗った女性は龍星にそう言うと黙り込み、珈琲を啜った。
「で?俺に何の用だ」
「龍星お待たせ〜♪」
戒が要件を切り出そうとすると、美桜が珈琲とケーキを持って龍星の元へとやってきた。
「ああ、ありがとう母さん。ってケーキは頼んでないぜ?」
「これはお母さんの奢りよ〜♪試作品のケーキだけど、龍星達の反応が良かったらお店に出すつもりだから感想よろしくね〜♪」
そう言って美桜は龍星の前に珈琲とケーキ、戒とセリナの前にケーキを置くとごゆっくり〜と言ってカウンターへと戻って行った。
「相変わらずだな美桜さんは」
「変わると思うか?あの母さんだぞ?」
「戒、このケーキは食べて良いのか?」
「折角の好意だ。食っておけ」
戒と龍星が美桜について話しているとセリナが戒にケーキを食べて良いのかと聞いてくる。
戒は折角の好意だからとそれに頷いた。
「話が逸れちまったな。本題と行こう。ベルーナ・カルナックを覚えているか?」
「勿論だ」
「彼女が殺された。犯人は黒い刀を持つ男だそうだ」
戒は龍星からベルーナが殺されたと聞き、内心驚いた。
「龍星。賞金稼ぎのルールを知っているか?」
龍星は戒の質問に対し頷く事で答えた。
「ならば、例え知っていても答える事が出来ないのは分かっているだろう?」
賞金稼ぎのルール。それは『依頼者とその依頼を受けた者の事は口外してはならない』と言う物。
これは、依頼者の安全と引き受けた者の生命を守る為の物だ。
「そこを曲げて教えて貰えないか?この通りだ」
龍星は戒に向かって頭を下げる。
「……話はこれまでだ。行くぞセリナ」
「あ、待ってくれ戒」
先に行く戒にセリナは慌てて立ち上がると龍星を見詰めてポケットから一枚の紙切れを出して、龍星の前に置く。
「……そういや、セリナ。確か綺麗なモノなら例え生きているモノでも殺して欲しがる変態野郎からの依頼があったよな?」
「ああ、永遠の美の為とか言って死体を剥製にして飾るサイコ野郎の事だな?そのメモならポケットに……。すまない戒。どうやらメモを何処かに落としたみたいだ」
「おいおい。アレには変態野郎の名前と電話番号を書いているから一流の情報屋に渡ったら一発で調べあげられちまうぞ?」
戒とセリナは急に立ち止まるとワザとらしく言い、再び歩き出した。
龍星は顔を上げ、セリナの置いて行った紙を広げる。
その紙にはとある人物の名前と電話番号が書かれていた。
「……ありがとう。戒、セリナ」
店内から出て行った戒とセリナに向かって再び頭を下げると、龍星は携帯を取り出して一色に連絡を取るのだった。
「明奈ちゃん、これがそうか?」
「はい。例の名前と電話番号から師匠が速攻で調べ上げた容疑者の住所です!」
うさぎ屋に戻った龍星が暫く待っていると明奈が息を切らせて飛び込んできた。
明奈は息を整えると一色から受け取った情報を龍星に渡す。
「我王院光刃。年は26で性格は俺様のドS。結構モテるみたいですけどボクはタイプじゃありませんね。趣味は綺麗なモノや美しいモノを集める事。これは美しかったり綺麗だったりすると宝石や絵画は勿論、人間や獣人や妖魔でもお構い無し。剥製にして飾るサイコ野郎です」
「……100%犯人コイツだろ?」
明奈の説明に呆れたような表情で溜め息混じりに呟く龍星。
「兎に角助かった。コイツは情報料だ。急がせた分、色を付けといたよ」
龍星は懐から情報料が入った封筒を取り出して明奈に渡す。
「毎度!」
明奈は封筒を受け取ると懐へとしまう。
「……明奈ちゃん?今、封筒を何処に締まったの?」
因みに、今日の明奈の服装はTシャツにジーンズと言うラフな格好である。
「龍星さん、女の子には不思議が一杯なんですよ?」
「……さよけ(汗)」
取り敢えず深く追及しない事にした龍星だった。
その後、帰る明奈を見送った龍星は芹香に知り合いの錬金術師であるオルテガ・フォン・ヤマモト、バムア夫妻の元にお使いに行って貰い自身はせりかさんを連れてギルド内にある拘置所へと向かうのだった。
次回決着です。
次回はせりかさん大活躍(予定)
お楽しみに♪