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第一話〜白井 美沙〜



次の日、俺はいつも通り学校へ行った。


学校へつくといつものように賑わっていた。

朝練する体育系の部の声、通行途中の生徒の声。

いろんな声が俺の耳に入る。



俺はそんな声をうざったく思いながら教室へ向かった。


教室へ行く途中、いろんな奴が俺の顔をちらちらと見ながらひそひそ話していた。



おおかた、昨日の事がもう知り渡っているのだろう。

他にそんな事をされる覚えはない。


フラレた事はどうでもいいが、その事でうるさくなるのはムカつく。


俺は少し不機嫌になりながらも教室向かうと、教室の前に付き合っていた女がいた。



名前は美香。

美香も気付いたのかこっちを睨むようにじーと見てきた。


俺は美香には目もくれず、無視して平然と通りすぎ教室へ入った。


教室に入ると俺はみんなの注目をあびた。

全員知ってるのか、とイラ立ちながら自分の席についたら、俺が平然と通りすぎたせいか、美香が廊下で何か騒いでいた。



周りの女になだめられながら美香は、わざとか知らないが俺の名前を連発していた。



まぁ、俺はうるさいとしか思っていなかったが。


女達がなだめて美香の声もあまり聞こえなくなった頃チャイムがなった。


騒がしかった廊下や俺の方をちらちら見ながらひそひそ話をする奴らも静かになり、俺はようやく落ち着いた。


先生が教室に入って来て授業がはじまったと同時に、何やら右から服を引っ張られた。



「お前、柏木と別れたんだって?」


などと俺が今一番ムカつく話題をぶつけてきたのは、隣の席の和田 一樹だ。



一樹は幼稚園から一緒で家も近いしよく遊んだ。


今では親友で、俺が一応信頼できる奴だ。


俺は、いかにも不機嫌そうな顔をして一樹を睨んだ。


一樹はそんな俺におかまいなしにしつこく聞いてきた。


「別れたよ。フラレた」


なんて、俺はしつこい一樹にだるそうに答えた。


フラレた時は全然どうでもよかったが、いざ自分で口にすると物凄く腹が立った。


顔にも俺の不機嫌さが浮き出ていた。


一樹も何か感じとったのかそれ以上何も聞かなかった。


そして授業は淡々とすんで休み時間も何もする気がなかったので、教室で寝た。


そんな感じで昼食の時間がやってきた。


俺のたった一つだけの楽しみだ。何も興味を示さない俺だが、飯だけは大好きだった。


この時間だけはイライラとは反対にウキウキ気分になる。


いつも昼食は美香と食べていたが、別れたので美香と付き合う前に一樹と食べていたので、一樹と食べる事にした。


一樹も軽くオーケー。


で、いつも食べる屋上へ向かった。


廊下はみんなも昼食の時は少し陽気になるのか、いつも騒がしい。


昼食の時の俺は騒がしいのは気にしない。


屋上へつきドアを開けると、先客がたくさんいた。


まぁいっても屋上は広いからどうとでもなる。


俺は隅の方で食べる事にした。


向かうと誰かが俺を呼んだ。


「天海 聖!!!」


誰だ?と俺は声の主を見て思った。


見たこともない女だ。

何で俺の名前を知ってる。

わかる事は制服を着てるからこの学校の生徒だと言うことだけ。



「私、白井 美沙。よろしくね!!」



自分の名前を呼ばれて唖然としていた俺に、その女は近寄ってきて子どものような無邪気な笑顔で言った。


俺は動揺した。

今、会ったばっかりの全く知らない女にどうよろしくしろというのだ。


動揺する俺に何か気付いたように美沙は俺の顔を見た。


「あれぇ、もしかして私の事しらない?」


俺はゆっくり頷く。


「そっかぁ…。」


美沙は落ち込んだと思えばいきなり喋り始めた。

「でも、私は天海君の事知ってるよ♪彼女と別れた事も、付き合い始めた日も、今まで付き合った人とか、運動嫌い勉強嫌い、うるさいのも嫌いだし怒りっぽい♪後…ごはんが大好き♪」


美沙は俺の知ってる事を次々と言って、全部当てて、最後にまた無邪気な笑顔を見せた。



俺は、まだ動揺していた。

というか早く飯を食べたかった。

そんな俺をほって一樹はもう飯を食べていた。


「じゃ、私行くね♪」



困る俺に気付いたのか用事か知らないが、美沙は屋上から出ていった。


なんだったんだ。

何で屋上にいた。

俺に会うためにか?いや…それは確実だな。



なんて、いつもならそんな事どうでもいいはずなのに何故か気になった。



俺はよくわからないが、まぁ弁当を食べようと思い一樹のとこへ行こうしたら、美沙がいた場所に何か落ちていた。


「生徒手帳……」



俺は拾い上げて口にこぼした。

そして何気無く開いた。


二年B組 白井 美沙


「二年だったのか…」


俺は三年である。

今年で18だ。


二年なら俺より一つ下か、と思いながら生徒手帳を閉じ、ポケットにしまい届けてやる事にした。



これなかったら何かと大変だから、これは親切心だ。

などと、何故か知らないが心の中で言い訳をしながら。



そして、やっと食べれると思い一樹のとこへ行った。



「何話してたんだ?」


一樹は物を頬張りながら俺を見た。


俺は一樹の横腹を軽く蹴った。

先に食べていた仕返だ。

一樹は口に含んだ物が出るのを必死に抑えた。


「ただの世間話だよ。」



「う…はぁはぁ…。お前ひでぇ」


一樹はよほど苦しかったのか、俺の言葉を聞かずに涙目になっていた。


俺はほっとき弁当食べた。






あー…うめぇ〜




そして弁当を食べ終り、午後の授業も何も起こる事なく終った。


俺は何もする事もないしやっと帰れると思い、さっさと学校を出た。


一樹は俺と家が近いが、登下校は付き合ってない時はいつも一人だった。


そして今日も一人で帰る。



俺も思えば今年で18。来年、卒業だ。


進学する気もないし、したい事もないので、俺はとにかく就職しようと考えていた。



そんな事を考えながら、道を歩いてると声が聞こえてきた。


声が聞こえた場所は、少し大きい池のほとりにある東屋だった。


話しているのは老人達だった。


ここは静かで落ち着くから、老人にはもってこいの溜り場だった。


俺は何気なく東屋を見た。


何か聞き覚えのある声が聞こえたからだ。


歩きながら角度を変えて見ると、老人にまざって一人の同じ学校の制服を着た女が楽しそうに話していた。



どこかで聞いた声だと思ったら、声の主は俺のポケットに入ってる生徒手帳の持ち主。

白井 美沙だった。



俺は立ち止まった。


おかしな女だ。

こんな所で老人達と楽しそうに話してるなんて…。


見た目も明るく活発そうなイメージだったのに、なんて考えながら俺は苦笑した。


そして、ポケットから生徒手帳を取り出し、考えた。


明日渡そうと思ったけど今渡そうか…。


だが、あの輪に入りたくない…。

明日渡すのも面倒だし。



俺は間を取って投げる事にした。


生徒手帳の何も書かれてないページに

「感謝しろ」と一言書いて、投げた。



「イタッ!」


見事命中!!

俺は小さくガッツポーズして、見付からずに家へ帰った。


その時の俺は、名前は書かなかったにしろ、何故あんなメッセージを残したのか考えもしなかった。








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