『ぽんくん 頑張る!』 (その1)
【(四)○○○姉さんに花束を♡】
『ぽんくん 頑張る!』
(その1)
1、
今日のアパートはやたら賑やかだった。
それは、八百八狸の隠れ里から、ちびっこ子だぬき10人(10匹?)と、たぬきっ娘ちゃん2人が、お泊まり会でやって来ているからだ。
『アパート側にたぬちゃん 。隠れ里側に貉のムジさん。という「どこでもドア(仮称)」を使いこなせる幻術使いが居るので、いつでも双方向からの行き来が出来る状況なんだからやりましょう!』
という話しになったのでした。
先日の鎌鼬たちがやらかした騒動で、私たちが解決するまでの間に里のチビちゃんズは悲しい想いをしたからね。
皆んな頑張ったね!という事なのです。
チビちゃんたちは生まれも育ちも隠れ里なので、里の外に出たのは今回が初めての事なんでもう興奮して大騒ぎ。
そして、この状況に大歓喜で大興奮しているのが、たぬちゃん の弟・ぽんくん だ。
何しろ、自分たち姉弟以外のたぬき種族の『あやかし』に会うのは初めて。しかも、ぽんくんと同世代のちびっ子がほとんど。
10人の中には男の子も女の子も居るし、自分の姉より年下のお姉ちゃんに会うのも当然ながら初めてだ。
(一応、ミケタマちゃん・花子ちゃん・わらしちゃんの3人は ぽんくん からしたらお姉ちゃんではあるけど、種族が違うからね)
そして、ここにもう一人!
この状況に心から喜びを噛みして居る人がアパート1階の大部屋にある厨房スペースに立っていた!
言うまでもなく、ソレは料理に人生の全てを捧げている『あやかし』の「小豆洗いのあずさん」!!
そう!彼女は誰かのため料理を作って、美味しく食べてもらう事を『何よりの至上の喜び』としている超料理人なのであります。
そして、その食べる人数は、多ければ多いほど『腕の見せどころ・振るいどころ』なのであるのです!
しかも今の彼女の手元には、アパートの住人だけで消費するのなら余裕で 2、3ヶ月分はあると思われるほどの大量の野菜や果物を始めとした農産物が在るのだ。
コレらは全て八百八狸の隠れ里で収穫された物で「里を壊滅の危機から救って頂いたお礼と、今回のお泊り会で子どもたちが消費する分です」と言って里長さんや里の人たちが持ってきた代物だったりするのだが、コレはさすがに貰い過ぎだと言ったのに半ば強引に置いていったのでした。
で、受け取ってしまったのだけど、果たして傷む前に食べ切れるのだろうか?と思っていたら、何と「大丈夫よ。私の管理下になった食品はどんな物であっても、絶対に傷まないの。それが私のもう一つのチカラなのよ」と、あずさん。
彼女は言うには、たとえば生肉や刺身みたいな傷み易い食品でも、自分の管理下になった瞬間の状態で半永久的に鮮度を保つのだそうだ。
「私の目の黒いうちは食品ロスを絶対に許さないわよ!」…だそうです。
と言う事で、食事関係は あずさん が全て仕切ってくれる段取りになったので、私たちでチビちゃんたちの面倒をみる事になったのだけど…さて、どうしましょうかね。
何しろ人数が多い。うちのアパートのちびっ子たちを入れると、17人になるのかな?
とりあえず寝る場所は、2階の畳敷きの大部屋に布団を敷けるだけ敷けば何とかなるよね。
じゃあ、それまでは何をして過ごせば良いのかなぁ。
人間の世界には慣れていないチビちゃんたちだから、アパートの外に出かけるのはダメよね。
でも、せっかく初めての里の外へのお出かけなのに狭いアパートの中だけで終わるのも可哀想だ。
と思っていたら、たぬちゃん が面白いアイデアを提案してくれた。
「私が異空間を構築して、その中で幻術を使って何か遊べないかな?アパートの空間内だから、わらしちゃん と わらしくん も参加できるよ!」
さすが凄腕の幻術使い!なるほど、その発想は無かったわ!
それならアパートから出なくても隠れ里の暮らしでは味わえない楽しい体験をさせてあげられるわよね。
という事で、それじゃあ具体的に何をやりましょうか?と、私とたぬちゃん、大家くんの3人で作戦会議。
その間、隠れ里のチビちゃんたちとはすっかり仲良しになったユウキと ななつ の2人。そして、今日初めて会うミケタマちゃん・花子ちゃん・わらしちゃん・わらしくん、そして忘れちゃいけない ぽんくん と一緒に2階の大部屋で遊んで待っていてもらう事となった。
それを2人に頼むと、ユウキと ななつ は「お任せあれ♪」と二つ返事でチビちゃんズに集合をかけて総勢17人を2階の大部屋に連れて行った。
… この大人数で二人は何をするんだろう?とコッソリ覗いて見ると『隠れ里チビちゃんズ』と『アパートチビちゃんズ』とで自己紹介大会を開催していたのでした。
一人ずつ、それぞれの名前と得意な事なんかを話し合っていて、たとえばミケタマちゃんは三毛猫に変化してみせたり(あ、それを見るのは久しぶりだわ!)、花子ちゃんは幽体化してアッチコッチへの瞬間移動(はぁ、花子ちゃんってそんな事が出来るのね!)を披露したり、隠れ里のチビちゃんたちも色々と得意な化け術を披露しあってたり、何しろ和気あいあいと皆んな楽しそうにしておりました!
なるほど、確かに初めて会う同士で仲良くするならば、まずはお互いに自己紹介は基本よねぇ。
コレはおそらく去年までリアル女子高生だったユウキの発案でしょうね(だって、ななつ は姉が心配するほど友人が居なかったんだものね)
う〜ん、ユウキさすがだわ!
……と、2階での状況を1階に居る たぬちゃん と大家くんに報告すると「それは盲点でしたね。僕たちも良さげなアイデアを出さなきゃですよ」と本気度をあげる大家くん。
たぬちゃん は、自身の妖力量を考慮しつつ実現出来そうな幻術の規模とかを脳内でイメージするのに集中している感じね。
私はチビちゃんたちと一緒に行動して見守るインストラクター役かな。たぬちゃん の造る幻術空間だから危険は無いと思うけど、何しろまだ幼いチビちゃんたちだものね。万が一の時のために必要でしょう。
ところで「この数日ぬら爺の姿を見てないなぁ」と思って最近は2人で居る事が多い大家くんに聞いてみると、どうやら彼は天狗の隠れ里ヘお出かけしているらしい。
先日の『八百八狸の隠れ里での鎌鼬事件』について烏天狗さんたちや大天狗様と話し合っているそうだ。
確かに、あの鎌鼬のリーダーが持っていた魔薬の出処とか、そもそも鎌鼬の連中がどうやって隠れ里に入って来れたんだとか、色々と判明していない謎が残っているものね。
ほんと、ぬら爺には頭が上がらない思いです。
私たちでは到底手が出せない、そういった様々な重要案件の対応処理などを、何時も率先して担当してくれているんですよね。
さすが『あやかし界の顔役で重鎮』と言ってしまえばそれまでだけど、彼のバックアップがあるからこのアパートの住人は皆んな平穏無事に過ごしていられるのよねえ。
…なんて事を、私が肝心のアイデア出しを放り出して考えていると、
「『謎解き宝探しゲーム』なんかどうです?謎解きの内容は僕が考えますが、果たして宝探しが幻術で実現出来るものなんでしょうか?」
「そうですね。『宝探し』と言っても幻術世界の中で手にしたに物体を現実世界ヘ持ち出す事は出来ないので、最後に手にする『宝』は、物では無くてクリアした達成感とかでしょうか」
「なるほど!それならば、クリアして現実世界ヘ戻ってから『宝』が入手出来る感じの内容にすれば良いのかな?」
……あら、大家くんと たぬちゃん のアイデアだけで良い感じにまとまりそうね。さすが我がアパートの頭脳明晰班の2人だわねぇ。
(なんたって、パソコンとかネットとかのプログラムとかシステムとか、私にはなにが何やらサッパリ判らないモノのプロと、お嬢様学校の優等生ですものね!)
いやぁ、やっぱりそうなのよ。
私はこういう頭の中でアレコレ考える作業より、実際に身体を使って作業する仕事の方が適している……と、改めて痛感いたしましたわよ。




