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何故か好きな人の友人と仲良くなってしまう私  作者: うみのうさぎ


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4/5

否定はしない

放課後の教室は、静かだった。

 窓から差し込む夕方の光が、机の影を長く伸ばしている。


 美穂は鞄を持ち上げながら、背中に視線を感じた。


(……はい来た)


 和也「高橋さん」


 振り返ると、やはり鈴木和也だった。

 距離は近くない。けれど、逃がさない位置。


(話す気満々の立ち位置やめて)


 美穂「なに?」


 和也「今日の昼のことなんだけど」


(昼は全部問題でした)


 和也は少し考えるように、視線を窓の外へ向ける。


 和也「噂の話」


(来た)


 美穂「……彼女が居るって話?」


 和也「うん」


 和也はあっさり認めた。

 そこに迷いはない。


(そこは即答するんだ)


 和也「誤解、広がってるよね」


 美穂「自覚あるんだ」


 和也「まあ」


 軽く肩をすくめる。

 深刻そうには見えない。


(それが一番腹立つ)


 美穂「じゃあ、なんで訂正しないの」


 和也は少しだけ口角を上げた。

 でも、その笑みはどこか薄い。


 和也「訂正するとさ」


(すると?)


 和也「余計な話、増えるんだよ」


(……それは分かる)


 噂は否定されると、形を変えて広がる。

 美穂自身、何度も見てきた。


 和也「それに」


 一拍、間。


 和也「このままの方が、楽な人もいる」


(……人?)


 美穂は眉をひそめる。


 美穂「誰が」


 和也「さあ」


(答える気ないな)


 和也は視線を逸らしたまま、続ける。


 和也「変に期待されたり、勘違いされたりするよりさ」


(……あ)


 美穂の中で、何かが静かに噛み合う。


(この人……)


 和也「最初から“無理”って思われてた方が、平和でしょ」


 その言い方は、あまりにも慣れていた。


(ああ、これ)


(告白、避けてる人の理屈だ)


 けれど。


 美穂「……それで困る人もいるけど」


 和也は、否定しなかった。


 和也「いるね」


(認めるんだ)


 和也「でも俺は」


 少しだけ、声が低くなる。


 和也「自分が困らない方を選ぶ」


(正直すぎる)


 美穂はため息をついた。


(この人、

 自分が告白されないために

 誰かが誤解されること、分かっててやってる)


 それでも。


 美穂「……理由、聞かない方がいい?」


 和也は、一瞬だけ美穂を見る。


 和也「聞かれても、言わないよ」


(ですよね)


 その答えが、すべてだった。


 和也「高橋さんは」


(私?)


 和也「変に期待しないと思った」


(それ、褒めてない)


 美穂「買いかぶりすぎ」


 和也「そうかも」


 和也は笑った。

 でもその笑顔は、昼よりずっと静かだった。


 和也「じゃ」


 踵を返しかけて、立ち止まる。


 和也「噂、信じなくていいから」


(訂正はしないくせに)


 美穂は、何も言わなかった。


 和也が教室を出ていく。


(……なるほどね)


 美穂は一人、机にもたれた。


(この噂は、

 鈴木和也の“防壁”だ)


(そして私は、

 その防壁に勝手に巻き込まれただけ)


 納得はした。

 理解もした。


(でも)


(だからって、

 許せるかどうかは別問題)


 美穂は、静かに息を吐いた。

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