Ep12:レベリングpart5
厄介な砲弾攻撃がなくなった、といっても、その厄介な斬撃耐性は健在だ。
あの斬撃を悉く無効化する宝石の鱗をどうにかしなければ、この宝石蛇を倒すことはできない。
なんとかして、あの宝石の鱗を破る方法はないか?
というか、宝石のような鱗を持つ蛇なのか、宝石そのものが動いて蛇の形を成しているのかがわからない以上、迂闊な決めつけで作戦を立てては危険だ。
急いては事を仕損じる。ここは堅実に。冷静さを欠いては勝てる勝負もかけないと、俺はまず相手の行動パターンを把握してから作戦を立てる。
砲弾攻撃をやめた宝石蛇が、最初に繰り出してきたのは突進噛みつき攻撃。
砲弾攻撃のほどではないにしろ、その蛇はやはり動いがすばやい。
「うわっ!?」
予想の上を行く素早さに思わず怯むも、すぐに『紫陽花』発動して、それに反射術を重ねる。
今の攻撃で噛みつき攻撃の速度は大体把握できた。
あと警戒しなければならないのは『空気を爆発させる』魔法攻撃。
宝石蛇が次にどのような攻撃を繰り出してくるのかと、身構えていると、宝石蛇は突然尻尾を地面に叩きつけた。
「一体どういう…… って、どわぁ!?」
その瞬間、宝石蛇の尻尾の先が爆ぜ、地面から生えていた鋭い結晶が砕け、破片となって四方八方に飛び散る。
飛び散った弾丸の如き結晶片は『紫陽花』によって展開されていた障壁を紙屑のように砕き、俺のHPを削った。
はっきり言って、この攻撃はヤバイ!!
俺の防御手段は、『受け流し』『反射術』『紫陽花』の三つ。
だが、今の宝石爆裂攻撃にはそのどれもが通用しない。
『受け流し』は、こんな大量の結晶片を捌いていたら一撃、耐えられても二回目の攻撃で全損する。
『反射術』は、高速で飛来する結晶片一つ一つにタイミングを合わせ、寸分の狂いもなく弾ききらなければならないのだが、そんなこと人間の反射速度では不可能だと断言できる。
『紫陽花』は言わずもがな。一瞬で砕かれ、防御動作の補正も『反射術』と同様の理由で使い物にならない。
加えて俺は、いまだにこの宝石蛇に対する有効打たり得るような攻撃手段を持っていないので、今の攻撃を連続で使用されると、流石に負ける。
「こんなのどうしろっていうんだよ!?」
結晶爆破攻撃から息つく間もなく、再度仕掛けられた、噛みつき突進攻撃を反射術で捌きながら、俺は宝石蛇に文句を吐いた。
「クッソ!! 天からハンマー降ってこねえかな!!」
まあ、ここ洞窟なんですけど……
ああもう!! そんなくだらないこと考えてないで、この状況の打開策を考えろ!!
今俺にある物はなんだ!?
まずは、栄花刃術の一から五まで。
順番に性能を並べると、『朝顔』は居合に補正がかかり、『桃桜』はシンプルな斬撃技、『鈴蘭』は振り下ろし攻撃の補正、『紫陽花』は防御技で、『薄雪草』は刺突攻撃を放つ攻撃技。
『朝顔』と『桃桜』は論外として、『鈴蘭』を用いた『隕石斬り』は天井が低いここでは使えない。
刃術の中で、かろうじて使い物になりそうなのは防御の『紫陽花』と、斬撃技ではない『薄雪草』の二つ。
次に、その他のスキルはで使えるのは、ATKに大幅な補正がかかる『発勁』と、移動速度が一時的に速くなる『疾風走破』、それと一時的に防御力が跳ね上がる代わりにHPを削る『黒曜鉱鱗』。
そして、最後にレベル50で解放された“謎の新スキル”。
「もう、こればかりは神頼みだな」
このスキルがもし、使い物なならないものだった場合、最悪俺はここでゲームオーバーだ。
「頼むぜ『無敗の魔弓』!!」
エデンズには、主に5種類のスキルが存在する。
一つ目は『コモンスキル』
これは誰でもいつでも平等に習得する機会の与えられたスキルであり『発勁』や『疾風走術』などがこれにあたる。
二つ目は『種族スキル』
初期選択の“種族”によって得られるものが変わるスキルであり『黒曜鉱鱗』がこれにあたる。
三つ目に『シリーズスキル』
『刃術』や『棒術』などがこれにあたり、“原型”を習得すればレベルアップによって派生し、さまざまな効果を持つスキルを得ることができる。
四つ目に『魔法』
『魔導書』または『魔法杖』を入手し“熟練度”を高めることによって習得可能なスキルで、他の種類のスキルとは違い、高い自由度があるため、組み合わせや発動条件の記載によって様々な効果を得ることが出来る。
そして『無敗の魔弓』は五つ目の『オリジナルスキル』にあたる。
オリジナルスキルは、Lv50に達した全てのプレイヤーが一つだけ習得することのできる唯一無二のスキルであり、習得するスキルはプレイヤーによって千差万別。
どんなスキルをどのような条件で習得することができるのかは、いまだに明らかになっていないが、『それまでのプレイスタイルに足りなかった要素を補完する』ことを目的とするようなスキルが『オリジナルスキル』なのではないか? というのが情報収集クラン『アトラス』の見解だ。
アサというプレイヤーに最も足りないものは何か?
それは、戦いの決定打足り得る『火力』だ。
再使用時間が脅威の72時間と、MPの全消費という莫大な制約を背負ったその一矢に付与された効果は、プレイヤーのSTRとDEXを参照した『完全防御無視』の貫通攻撃。
その効果は、奇しくも防御力に完全特化した『宝玉の大蛇』に対する、会心の一撃となった。
スキルの発動と共に現れた、尋常ではないオーラを放つその弓に金色に輝く矢を番え、一直線に突進してくる宝石蛇に狙いを定めて、鉉を引く。
遠距離攻撃でしか狙えない、唯一の弱点部位。
「弱点丸見えだぜバカ蛇!!」
俺は宝石蛇の“口の中”に狙いを定め、弓を射る。
刹那、空気を貫く轟音が鳴り響き、金色の矢が宝玉の大蛇の身体を貫く。
金色にその身体と貫かれた宝玉の大蛇は、断末魔を上げる間も無く弾け飛び、その輝きはポリゴンの霧となって消え失せた。
『エリア攻略:“瘴気の魔窟”を攻略しました』
『エリアボス討伐:“宝玉の大蛇”を討伐しました』
『アチーブメント:“不死の名を冠する”を獲得しました』
『アチーブメント:“黒霧の主人”を獲得しました』
『レベルアップ:Lv52→Lv54』




