Ep10:レベリングpart3
日帰り東京旅行では小林さんが突如失踪してしまうという事件はあったものの、あの後無事に連絡を取ることができたので、ひとまず安心して帰路に着くことができた。
どうも、本当に体調がすぐれなかったらしく、友人に迷惑をかけてはいけないと一人で帰ってしまったらしい。
それならそうと、頼ってくれたらよかったのにと言ったのだが、彼女はその話題をあまり続けたくないらしく、その話はそこで一旦無かったことになった。
不安は尽きないが、彼女がそれを望むのなら仕方のないことなので、それ以上追求するのは不躾というものだ。
そこから話題は変わり、エデンズの先行体験会のことについての話になったのだが「あれがすごかった」とか、「やっぱりエデンズは他のゲームとは違って……」 だとか、唐突に小林さんが「実はわたし二つ名持ちなんです!!」とか、言い出してなかなかに会話が盛り上がった。
どうやら“波紋”での俺の二つ名『不死身の虚王』みたいな厨二病ネームではないらしいので、そこは安心だ。
それからしばらく会話を続けていると、話の流れで、小林さんは俺に嬉しい提案をしてくれた。
『埋め合わせ、と言ってはなんですけど、三日後の水曜日に時間があるなら一緒にエデンズをプレイしませんか?』
キタコレ!!
願ってもみなかった申し出に、俺は速攻で『時間ならあるから、それまでにいろいろ準備を整える!!』と返信した。
やっぱりMMOの醍醐味と言えば、フレンドとの協力プレイ!!
今まで、星海とかいう害悪PKerのせいで鬼畜難易度のマップに閉じ込められて出れずにいたので、単純に高レベルの仲間が増えるのはとてもありがたい。
「チュートリアルもまだだから、合流したら色々教えてもらおう」
そうとなれば、今行っているレベリングは早いうちに終わらせたほうがいいだろう。
「よしっ、やるかエデンズ」
俺は、来たるXデーに備え、レベリングを早急に終わらせるために、エデンズにログインした。
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ログインした俺はテントの中で、瘴気の魔窟内のマップを確認する。
するとどうやら、ここから上方向に上がっていくと『魔笛渓谷」につながっていて、ここからさらに下って『星水晶の残響鉱床』を抜けてから上がると『到達地』、つまりは初期スポーン地点近くの平原あたりに出るようだ。
「正直ここでレベリングを終えて、アトラスの園にワープするのもありっちゃありだんだが、それだとそれでナナさん合流するまでに相当な時間が余る」
『魔笛渓谷』とかいうマップは、なんだか名前から嫌な予感がするし、ある程度準備し直してから挑む方が良いだろう。
「となれば、向かう先は『到達地』だな」
目的地を決めた俺は、軽食を摂ったのちにテントから出て、周期の魔窟最深部『星水晶の残響鉱床』へ出発した。
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道中、特に変わったことはなく、トントン拍子に最新部へ降りてくることができた。
それは、やはり、同種のモンスターに対する対処のテンプレートがあったのが大きい。
今ではそのテンプレートの実行速度も速くなり、この洞窟内の魔物を狩るのであれば、俺の右に出るものはいないだろう。
まあそもそも、このダンジョンを攻略しているのは俺一人だけだから当然のことなのだが……
「やっとついた、最新部」
『星水晶の残響鉱床』という名の通り、そこは星のようにキラキラ輝く水晶でびっしりと埋め尽くされた美しい空間だった。
そこらじゅうにザラメを振り撒いたようなその空間には、先ほどまで洞窟内に満ちていた瘴気は気配もなく、まるで先ほどまでの正気の魔窟とは全く別のマップのような雰囲気が漂っていた。
どこかで水滴が滴り水晶を打つ音なのか、将又なんらかしらのモンスターが蠢き水晶を砕く音なのかはわからないが、時折「コーン」と鉄琴を打つような音が鉱床内に響く。
「この宝石って高く売れるのかな?」
そこら中に生え散らかしているのでそんなに高価な宝石だとは思えないが、一応インベントリに拾ったいくつかの宝石を放り込む。
もしこれらの宝石が高価でなくても、そこそこな値段で売れれば億万長者も夢ではない。
「まあ、そんな都合のいいことあるわけないか」
宝石をいくつか拾い終えた俺は、キラキラと輝く宝石を踏みしめながら洞窟を奥へ奥へと進んでゆく。
「下駄履いててよかったぁ…… もし履いてなかったり皮の靴だったりしたら歩くだけでダメージ受けるぞ?」
瘴気が無くなろうと、聖域内はやはり凶悪。
足元からプレイヤーを狙ってくるなんて、やはりこのゲームの開発者は性格が悪いようだ。
そして、その性格の悪さがこの程度で済むはずがないということを、俺は知っている。
「うん、やっぱり“動いている”」
星水晶の残響鉱床に響く、謎の音。
その発生源が、上下右左と縦横無尽に動き回っている。
辺りを見回すと、そこら中にマンホールほどの小さいとも大きいとも言い難い大きさの穴が開いていて、どうやらその穴の先から音が聞こえてきているようだ。
そしてその音は時間の経過でどんどん大きくなり、その音の発生源がすぐそこまで迫ってきているのがわかる。
「ついにボス戦か!!」
次の瞬間、その穴から飛び出したのは宝石のような鱗を持った大蛇。
『エリアボス“宝玉の大蛇”と遭遇しました』




