Ep2:キャラクリエイトに合理性を求めるなかれ
夏休みが始まって、わずか四日目。俺はある病と戦っていた。
その名も「燃え尽き症候群」
今まで半年以上の間格闘してきた鬼畜ゲーをクリアしたことで、俺は人生の意味を再定義するフェーズに入ったのだ。
鬼畜ゲーとの格闘の次は、燃え尽き症候群との格闘。
鬼畜ゲーはトライし続ければ勝てるが、燃え尽き症候群はそうはいかない。
燃え尽き症候群という敵に打ち勝つためには『スローターズフィスト』以上の新たな宿敵を見つけなければならないのだ。
「ああ、何するかな」
ベットの上をゴロゴロと転がり、ゲームのソフトが並べられた棚に目をやると、ふと、とあるゲームに目が止まる。
「エデンズ……」
そう言えばそうだった、セールで安くなっていたエデンズを店で買って、そのまま放置していたんだった。
「もらったお年玉3万円、全ブッパしてスロフィスとそのDLCのついででエデンズ買ったんだっけか」
……せっかく買ったゲームをやらない手はない。
でないとセールとは言え六千円以上したこのゲームを買った俺の財布が泣いてしまう!!
「思い立ったが吉日。やるか、エデンズ!!」
そう決めた俺は、リビングで朝食を済ませた後、光の速度で自室に戻り、HVRヘッドセットを被ってゲームを起動する。
起動すると、フルダイブ特有のキーンという独特な音と共に意識が現実の肉体から剥離し、仮想現実の世界へと引き込まれていった。
しばらくの暗転の後、俺は研究室?のような内装の暗い部屋で1人、椅子に座ってホログラムボードで映し出されるマネキンのような人形を見つめていた。
「これは……キャラクリか!」
『器の設計図を完成させてください』と手元にあるディスプレイに表示され、okにチェックをすると早速、キャラクリエイトが始まった。
「まずは種族の選択」
選択肢にあるのは、
・人族
・獣人族
・竜人族
・魚人族
・鳥人族
そしてそれらを選ぶと、さらに選択項目が出てきて、人族だと『文明人』『エルフ』『ドワーフ』『巨人』『小人族』。獣人族だと『猫憑き』『狼憑き』『狐憑き』『兎憑き』……etc……って感じか。
種族によって伸びやすいステータスが違ったり、覚えることのできるスキルが少し違ったりするらしい。
他にも獣人族は五感に常時補正がかかるとか、魚人族はパッシブで水中呼吸、鳥人族はパッシブで短距離の滑空スキルが備わっているとか……
「凝ってるな〜」
それらをいろいろ吟味し、決めた種族と才能、種族特性、ステータスの割り振り等々、諸々を決めた結果がこんな感じだ。
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『プレイヤーネームを設定してください』
LV.1
種族
カテゴリー:竜人族
分類:黒曜族
職業
カテゴリー:剣士
分類:大太刀使い
才能
・回避の心得
・不屈の精神(種族特性)
HP(体力) 40
MP(魔力)50
STR(筋力) 70
ATK(攻撃力) 60
DEF(防御力)30
INT(知力) 30
RES(抵抗力) 60
DEX(技量) 70
AGI(素早さ) 20
LUK(幸運) 70
体質
・滑空(種族特性)
・剛力(種族特性)
スキル
・スマッシュ
・スラッシュ
・ブーストダッシュ
装備
右手:×
左手:×
両手:鋼の大太刀
頭:
胴:黒曜族の民族衣装
脚:黒曜族の民族衣装
足:
アクセサリー:
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俺に与えられたSPは初期値で500。スキル『ビルドアップ』(効果:20秒間STRを10UP 消費MP5)と『ハーフリジェネ』(効果:10秒間に一回HPを5回復 効果時間1分 消費MP10)をポイントに変換し+100SPで合計600SP。
それをそれぞれ振り分けて完成というわけだ。
今後俺はこのゲームでは『大太刀』という武器種をメインで使っていく予定なのでステータスには結構こだわった。
まず、大きな武器を扱う上で重要なSTR(筋力)は言わずもがな、一定以上の値を確保するのは必須として、大太刀にはDEX(技量)も必要なので確保。
そして、スタートダッシュをつつがなく進行するために、レアドロップやランダムクエスト発生の鍵となるLUC(幸運)を確保。
俺の方針的にデバフを押し付けてくるような敵は厄介なのでRES(抵抗力)を上げ、残りの特化枠は攻撃力にして、他ステータスはある程度のSPを振り分けて、極振りはせずに一定水準を保った。
「まあプレイヤーネームも外見もまだだし、本番はここからだな」
とは言っても、どういう方針でキャラクリしていくかはもう決まっている。
判定は小さく、武器は大きく、人情に縋る!!
という方針でキャラクリをした結果出来上がったのは、でっかい大太刀を背負った活発そうな幼女、そして頭に生えた黒い一角、生えてる場所は左目の上あたりか。尚、決してメスガキっぽいとかそういうことは言ってはいけない。
種族は『竜人族』だが、ツノ以外の要素である尻尾と羽根は、どうやら任意のタイミングで出したり引っ込めたりできるらしい。
いや猫の爪かよ!?
まあ、そこら辺の謎設定は置いておいて、俺のアバターがこんな幼女の姿になってしまったのには理由があるので少々言い訳をしたい。
まず第一に、十分なSTRが確保できていれば体が小さくとも大太刀の取り扱いには何の不自由もない。よって、よりあたり判定が小さく、小回りのきく小さなアバターを選んだ。
第二に、見た目の幼い、ましてや幼女のアバターともなれば、常識を持った人間であれば攻撃しづらいというもので……言ってしまえば見た目で相手に倫理観ストッパーをかけて、対人戦で有利に立ち回ることが目的である。
一応このゲームにはPKのシステムが存在するらしく、街の裏道なんかではPVPが結構発生する。
俺はあんまり対人戦とかそう言った方面に興味がないので、これは、そんな面倒ごとをできるだけパスするための手段である。
俺の声は比較的中性的な感じなので、ある程度のバカなら、もしかしたら本当に女子なのではと勘違いしてくれるかもしれないというのもポイントが高い。
まあ、あれだ。戦術的ネカマ戦法ってわけだ。
俺のプレイスタイルは『倫理的な範囲で外道を貫く』といった感じなので、ストーリー上重要な場面以外では、基本、外見よりも性能を優先する。
その結果がこれであるわけなので、決して、俺が幼女に憧れを抱く変態であるという事実は万が一にも存在し得ないのだ。
言い訳はいい。最後はプレイヤーネームだが、まあ、いつものやつでいいだろう。
「プレイヤーネームは『アサ』」
俺の苗字の「浅」倉から取っているとんでもない安直ネーム。
準備は整った。
さあ、世界一とも言われるMMORPGとは如何程なものか!!
俺は高鳴る期待に胸を躍らせ、新たなる世界に飛び込んだ。
ちなみに浅倉君のプレイヤーネームである『アサ』は鬼畜ゲーの元祖とも言っても過言ではない『魔○村』の主人公『アーサー』からいただいたりしてたりしなかったり……




