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Ep8:東京ゲームフェス(中)

 東京駅から地下鉄やバスを乗り継ぎ、30分ほどかけて東京ゲームフェスの会場に着いた俺たちは、会場前を埋め尽くすとんでもない人集りに揉まれながら、会場の入り口を目指していた。


「人がいっぱいいますね」


「てか、何がなんでもいすぎじゃね?」


「そりゃあの“エデンズ”がブース出すもんだから海外からの遠征組もたくさん来るからな」


「エデンズってそんなに人気なんだ」


「そりゃな、なにせ“世界一売れたVRゲーム”なんだからな。だが安心しろ、今回俺が用意したチケットは特別で、この人混みを超えて入り口に辿り着けさえすれば、特別待遇でそのまま中に入れてもらえるし、展示もそこまで並ばずに見ることができる」


「それはすごいですね!!」


 「ふふん」と得意げに鼻を鳴らす彼は、懐から取り出したスマホに特別優待の文字の書かれた画面を表示し、俺たち二人に見せつける。


「まあ、なんだ。飯を奢ってくれてもいいんだぞ?」


 ここまでしてくれたのだから、飯を奢るくらい俺として隼かではないのだが、一つ気になることがあるとすれば、シュウがどうやってそんなものを手に入れたのかだ。


「どんなコネ使ったんだよ」


「クソゲーマニアのコミュニティーは広い…… 風雲とっとこ城の続編が出るとなれば、それを同志と共に見にいきたくなるものもいる…… そういうわけだ」


「どういうわけだよ!?」


 てか、こいつ、今さらっと、とっとこ城がクソゲーだって認めたよな?


「まあ、そこら辺はよくわからんが、飯くらい奢ってあるよ」


「アザース」


「わ、私も出しますっ」


「いや小林さんはいいよ、俺は女子に飯を奢らせるなんてことはしない主義なんだぜっ」


「当然の事だろ〜自分の飯は自腹で払え〜他人に自腹を切らせるな〜」 


「奢るって言ったのはお前だろ!? アサはちゃんと払えよ?」



—————————



「って、ことで無事会場に入れたので、俺は一旦ここでお別れだ」


 そう言って、シュウは一人、人ごみの中に消えていった。

 どうやら彼は、クソゲーマニアたちに招待されてここにきたらしく、もとよりその集団に合流する予定だったらしい。

 なんでそのことを事前に言っておかなかったんだ、と言いたいところだが、俺たちが今所持している特別優待チケットはそのクソゲーマニアの団体が取っていた余りを融通してくれたものらしく、シュウの友人ということでタダ同然で譲り受けたものということなので、彼をそんな些細なことで咎めることはできないと、俺はシュウを笑顔で送り出した。

 まあ女子と二人きりになると言っても、小林さんとは結構な頻度で共に下校している中なので、正直、そういう緊張は一切ないから、別によしとしよう。


「じゃあまずは一番近いエデンズのブースから行こうか」


「ハ、ハイ、イキマショウ」


 なぜにカタコト?

 小林さん、なんだか今日は朝から調子がおかしいような気がするが、具合でも悪いのだろうか?


「小林さん、具合とか大丈夫そう?」


「ハイ、ナニモモンダイナイデス」


 うーむ、なぜか顔も赤いし、様子もおかしいが、本人も大丈夫だと言っているようだし、しばらく様子を見るか……

 もしかしたら人酔いしやすいタイプなのかもしれないし、その時は一旦会場を出て、人の少ない飲食店なんかに入るのも考えておこう。


「もし具合が悪くなったら、言ってくださいね?」


「ハ、はひい、リョウカイデス」


 ……彼女の様子は逐一確認するようにしよう。


————————————


 エデンズの展示場にたどり着いた俺と小林さんは、そのブースのあまりの巨大さに唖然としていた。


「いくらなんでもデカすぎるだろ」


 東京ゲームフェスの会場となっているのは、新東京国際展示場という下手すりゃ結構な広さの動物園が丸々ひとつ収まるんじゃないかというくらいの馬鹿デカイ(確か屋内に収まる体積だけで言えば世界一)建造物なのだが、エデンズのブースはその会場の半分ほどの面積を占めていた。


「ここまでくると、もはやテーマパークですね……」


 見ろよ……ブース内にブースがあるぜ…… マジでどうなってんだ。


「最近ニュースでエデンズの売り上げ本数が2億本に迫る勢いだ、なんて言ってたし、マジで化け物ビックコンテンツなんだな」


 誰が言ってたか、家族旅行をエデンズ内でしたってやつもいたし、本当に聖域の外ってどうなってるんだよ。

 

「まあ、正直エデンズってMMORPGの皮を被った並行現実シミュレーターですからね。最近ではとあるクランがカグラ町の南の海辺に観光街を作りましたし、どこかの大学の研究ではあと十数年すれば文明が現実世界レベルに追いつくとも言われていますし、現にもう既に鉄道が走っています。そこまで行くとRPGゲームとして崩壊しかねないので流石に途中でリセットがかかると思いますが……」


 マジかよ、エデンズめっちゃおもろいやん。

 それに比べて、俺は森の奥地で洞窟探検って……

 一番俺がRPGしてるじゃねーか。


「MMORPGとは一体……」


「でも、その自由度こそがエデンズが世界一売れたHVRゲームになった理由なんですけどね…… あっ、みてください!! あそこ!! 先行体験会やってますよ!! 早く行きましょう!!」


「お、おう」


 何だか小林さん、さっきまでとは打って変わって元気になったな。

 やっぱりゲーム好きはゲームの事となると元気になっちゃうよなぁ……

 いちゲーム好きとして小林さんの心情に深く共感し、何だか嬉しい気持ちに浸る俺。

 だが、そんなのお構いなしと言わんばかりに、目を輝かせた小林さんは、俺の手を引き先行体験会の会場へと小走り出かけてゆく。


 てか、なんか力強くない……? って、ちょ!? 痛い痛い!! 腕外れるからちょっと止まって!?

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