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閑話:クラン『アトラス』による聖域情報の抜粋

 エデンズというゲームにおいて『聖域』とはワールドマップ中央に位置する広大なマップである。

 だが、そのマップの周囲はどんな方法を用いても決して破れない不可侵の結界で守られており、その大部分が未知の『未到達領域』となっている。

 聖域はプレイヤーが必ず最初に訪れる初期スポーン地点に設定されており、理論上誰でも探索可能なエリアではあるのだが、それはあくまでも理論上の話。

 凶悪なモンスター、過酷な地形、そしてそれに伴う攻略情報の少なさと圧倒的レベリング不足。

 それゆえにエデンズを始めたほとんどの初心者プレイヤーたちは開始から数分と経たずに初めてのリスポーンを経験することになる。

 だが、エデンズのプレイヤー数は莫大。

 そのため、中にはそんな過酷な聖域内で長時間生き残り、尚且つ内部になんらかしらのランドマークを発見した者もいる。

 現在、クラン『アトラス』が公開している聖域内のランドマークは7種類。


『妖怪山』

 現在エデンズ内では未確認の“妖怪”と呼ばれる種族が生息しているとされる山々。妖怪はそのほとんどが攻撃的だが、中には一部有効的なNPCも含まれている。妖怪山は聖域最東端に位置しており、位置関係的には特殊イベント(アトラスWiki イベントNo.1220参照)で開放される特殊マップ『カグラ町』の南西の聖域結界の先に位置していると推測されている。


『中央アルテス山脈』

 『赤鱗族の里』南部から『黒曜族の里』北部にかけて聖域を貫き連なる山脈の中央部分。「白い髪の竜人族を見た」という目撃情報から、王都大図書館の書物で存在が示唆されていた未発見の竜人族『雹爪族』が生息していると考えられている。


『天貫の塔』

 内部に侵入した2名の証言から、この構造体は内部に複雑な階層構造をもち、内部に未確認のモンスターが多数生息していることが判明している。現時点ではこの構造物は巨大なダンジョンであるという説が有力であるが、大図書館の文献の記載から新マップに繋がる試練の間とする説もある。


『魔笛渓谷』

 常に笛のような甲高い音が鳴り続けていると言われている濃霧に満ちた渓谷。複数の未確認のモンスターの出現が報告されている。


『巨木の樹林』

 異常なほどに巨大な木が乱立するマップで、恐竜のような外見をした未知のモンスターの出現が報告されている。


『暗澹樹海』

 初期スポーン地点付近に存在しているマップ。複雑で過酷な地形の上に草木の生い茂る樹海が広がっており、聖域街でも確認できるものの、Lv80を超えるような強力なモンスターの出現が確認されている。上空には常に大型の鳥のような姿をしたモンスターが飛びまわり、常に地上を監視しているので、探索する場合は木々の開けた場所に最大の注意を払う必要がある。

 その極めて高い難易度や、未だ内部に目ぼしいランドマークなどが確認されていないことから、聖域内部の探索を試みる場合、探索は非推奨となっている。

 

『瘴気の魔窟』

 薄暗い靄に包まれた巨大な洞窟。内部には未確認の魔物が多数生息していることが確認されているが、詳細な内部情報は不明。



————————————



「これに昨日ごろ報告の上がった『無限回廊』の情報を加えて攻略wikiにアップしようと思うんですけど確認お願いしまーす」


「ああ、了解した」


 王都大図書館の地下室の一室。そこには日夜エデンズというゲームの情報を一心不乱にかき集める廃人たちの砦が据え置かれていた。


「ああ、あと、例のバイザーのプレイヤーの件なんですけど、あの後どうやら『星海きらら』というプレイヤーに遭遇したのち完全に消息を絶ったようです」


「星海きららというと、例の“アマテラス”のプレイヤーか」


「あの時の『天照(アマテラス)の蒼槍』の横取りは結構こたえましたよね……」


「彼女に遭遇したのなら流石にリスポーンしたんじゃないのか?」


「それが観測計の解析によると、キルされてからの蘇生猶予時間がなかったので、どこかに“転移”したものと思われます」


「転移か……」


 そう聞いたクランリーダー『ヨロズハラ』は、少しの間ぶつぶつと何かを呟きながら考え込む。


「聖域から持ち帰った謎のアイテム…… 他プレイヤーからの接触ののち失踪…… 英雄武器シリーズ…… アマテラスのストーリー…… 知恵の神アトラス…… 古代文明の遺産…… テレポート技術…… 帰還…… “カガミ”の様相……」


 その瞬間、何かを閃いたのか顔を上げて『ある決定的な仮説』を証明するための様々な証拠を溢れ出すままに口にした。


「あのアイテムは聖域内で手に入れたもの、つまり聖域内であのアイテムを入手することができる特殊なイベントが発生する。知恵の神アトラスの所在地はおそらくあの聖域内のどこか。知恵の神アトラスと信仰が深かったと思われる古代の科学者『カガミ』が身につけていたとされる黒い鋼鉄仮面。その鋼鉄仮面を遺品として受け取ったアトラス。仮面の効果は道標。道標とはこのゲームにおいて目的の場所に到達するための手段のことを指す。つまり!!」


 常人にはたどり着けるはずもない、一本の糸よりも名を細い可能性を手繰り寄せ遂に彼女は彼のなしたことがどんな意味を持つのかに気づいた…… 否、気づいてしまった。

 ヨロズハラは息を荒くし、興奮した様子で結論を叫ぶ。


「彼は聖域内で『知恵の神アトラス』に遭遇した可能性がある!!」


 決して単純ではない複雑怪奇なプロセスを経て、今、彼女はこの世界の真実への道を阻む壁を一つ越えたのだ。

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