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Ep2:怪奇!! 怪人十二面相

 俺の首に冷たいナイフを突きつけ、刃物を握っていないもう片方の手で、俺の視界を覆う女。

 彼女は、かつて俺のプレイしていた『波紋』というゲームでトップを競い合った宿敵『星海きらら』であった。

 登録者数50万人超の人気チャンネルを個人で運営する彼女は、配信ではいわゆる『清楚形』の配信者として人気を博しているわけなのだが、俺はこいつのドス黒い本性を知っている。


「殺されたくなかったら、大人しくついてきてねぇ〜」


 そのゲームにプレイヤーを殺すことのできる機能が実装されていれば、どんな平和なゲームでも“悪質”プレイヤーキルをはたらく生粋のサディスト。

 恐喝、人質、詐欺、裏切りに人殺し…… 古今東西どんな魔王もびっくりな非人道的行為をなんでもないような顔をして行う怪人。

 そんな彼女に俺がつけたあだ名は……


「出たな“怪人十二面相”」


「ひっどーい、なんでそんな名前で呼ぶかなぁ? 私は『星街きらら』だよっ⭐︎」


「そんな臭い演技で誤魔化せるような状況じゃないだろ、そろそろいつも通りに戻れよ」


「はいはいわかったわよ、久しぶりの再会なのに冷たいなあ」


「俺はできれば再会したくなかったからな。それと、そろそろ離してくれ」


「離してあげるけど、逃げたらわかってる?」


「重々承知してるよ」


 そう言うと、彼女はナイフをインベントリにしまい、束縛から俺を解放する。

 振り返り、彼女のアバターを視界にとらえると、そこには多少姿形は違えど、よく見知った彼女の姿があった。

 長い青髪をたなびかせ、アイドルのようなその衣装は、この世界の時代間とは食い違い、どこか異質な印象を覚える。

 その美しさとあどけなさを両立したような可愛らしい顔立ちは、Vtuber『星見きらら』のそれである。


「今は配信してるのか?」


「いや、今はしてないよ。何せこんな場面を視聴者に見られたら清楚形としてのイメージが崩れちゃうでしょ? 視聴者の前では常に純粋無垢でプレイヤーキルのプの字も知らない『星海きらら』を演じないといけないからね」


「相変わらずだな、お前」


「それはこっちのセリフだよ。幼女スキンの性別不詳鬼畜ゲープレイヤーなんてアーサー君ぐらいしか持ち合わせない属性よ?」


「このゲームじゃ『アーサー』じゃなくて『アサ』だ。あのゲーム結構黒歴史だからあんまり話題に出すなよ」


「ええ? いいじゃない、少しくらい昔話に花を咲かせたって。ねぇ『不死身の虚王アーサー』くん♪」


「あ゛あ゛ん? もう一度その名前で読んでみろ、俺の愛刀が黙ってねえぞ」


 まだ使ってないけど。


「おお、かわい…… じゃなくて、怖い怖い」


 目尻と、口元を歪め邪悪に笑うその姿はまさに悪魔。

 正気に戻るんだ俺、こいつのペースに乗らされていたら本当に手が出てしまう。

 ここは冷静になるんだ。

 冷静に、冷静にだ……


「すぅ…… はぁ…… んで、お前はなんで俺のとこに来たんだ? 確か水曜は毎週配信日じゃなかったか?」


「ああ、それなら急遽体調が悪いって言ってすっぽかしてきたよ。私は個人でやってるから、そこら辺は結構融通が効くの」


「んなこたぁ聞いてねえよ。俺が聞きたいのは、なんで今日に限って休みにして、ついでになんでこんな序盤の街にいたんだってこと」


 このゲームはノリと勢いで始めたから「エデンズをしてる」なんて誰にも言っていないはずだ。

 だからキララは、このゲームを俺がしていることなんて知らないはずだし、俺のことを待ち構えて捕まえるなんてことできないはずなんんだが……

 

「決まってるじゃない、私はアーサー…じゃなくてアサくん、君を迎えに来たの。君、今相当話題のプレイヤーだからね」


「は?」


 話題? 俺はゲームを始めたばかりだぞ。そんなことを俺が言う間も無く、きららは話を続ける。


「君、“聖域”から生還したんだって?」


「ああ、それがどうしたんだ?」


「ははは、マジで言ってるの? そんなさらっと言ったけど、君、それはこれまで前例のないことだよ?」


 待て、今なんて言った?

 前例がない? じゃあ、つまり……


「そうだよ、君の考えた通り!! 君は初期スポーン地点、もとい“聖域”から生きて離脱した“初の”プレイヤーだよ。そして、そんな前人未到を成し遂げた君が、見たこともないようなヘッドギアを装備して帰ってきた。今、君は三つの超巨大クランと、無数の個人プレイヤーたちに追われ、質問攻めにされ、追い剥ぎに合うのを待つ身。だから私が君を救いに来てあげたわけ」


 待て待て待て待て、じゃあ、ええと、つまるところ……


「俺の鬼畜ゲー休暇は?」


「残念、君にとっての『エデンズ』は今をもって『鬼畜ゲー』に変わりました。ちゃんちゃん♪」


「ちゃんちゃん♪ じゃねえよ!?」


「いや、おめでとう。君が鬼畜ゲーを愛したから、鬼畜ゲーもそれに応えてくれたみたいだねっ⭐︎」


 ああ、さらば俺の神ゲー。 そしてようこそ、新たなる鬼畜ゲー……

 チキショーー!! くっそ楽しくなってきたな、クソが!!

ブックマークや高評価等をいただけると本当に今後の更新の励みになりますので、少しでも面白いと思えていただけたなら、ブックマーク・高評価を何卒よろしくお願いします。

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