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Ep1:非常に非情な仮想と現実

 フルダイブ型バーチャルリアリティー、略してHVR全盛期とも言えるこの時代、HVRMMOと言われるジャンルのゲームは、数多の神ゲーとクソゲーが量産されることによって半ば飽和状態あった。

 それぞれのゲームが限りあるゲーマーを取り合い、各自のゲームが張り合うように数多のジャンルで同じようなゲームを作り、市場は飽和。HVRMMO全体で見てみるとユーザーは多いものの、圧倒的なゲーム本数故、HVRMMOというジャンルのコンテンツ自体がユーザー数と見合わぬ世界の数によりプレイヤー不足を起こし、あまつさえ崩壊の危機に瀕していた。

 そんなVRMMO市場に彗星の如く現れたゲームが一本。

 その名も『エデンズ』

 

 そのゲームは他のゲームの追従を許さぬほどに、圧倒的な技術力を以って、完成されたと言っていいほどリアルな世界を構築していた。

 人と見紛うほどに自然に会話し、生活し、時に戦う人工知能たち。

 現実をほぼ完璧に再現しきっているのではないかと疑うほどに完成されきった物理演算。

 仮想現実の五感をダイレクトに感じることができる、感覚同調システム。

 そして何より、どこまでも作りこまれたストーリーと、違和感を感じる余地のない世界設定。


 その圧倒的完成度により、発売からわずか十日で1000万本の売り上げを叩き出し、発売から半年ほど経過した今、そのプレイヤー総数は2000万人にも上るという。

 もちろん、数多の賞を受賞したし、ギネス記録も5本の指じゃ到底おさまらないほど取ったらしい。



 そんなとてつも無いビックコンテンツの登場で世間が盛り上がりを見せる中、俺は黙々と全く違うゲームに没頭していた。

 そのゲームの名は『スローターズフィスト』

 俗にいう“鬼畜ゲー”というやつだ。

 

「右ローリング!! 脇を締めて左にジャンプ!! バックステップ!! 右で殴って体勢を削る!!」


 HVRで最も忌避され、そして最もゲーム中毒の変態(マゾ)を呼ぶ鬼畜ゲー。

 即死攻撃は当たり前。フレーム回避なんぞ頻繁に要求される必須テクニック。そして何より……


「ッ!! 緊急回h……ってええエエエエエエ!!!!!」


 この手のゲームは往々にして、攻撃を喰らうと本当に痛い!!

 もちろん痛覚をオフにする機能はある、だが使わない。

 何故かといえば、痛覚によるドーパミンの放出というリアルの肉体強化を用いなければ、この鬼畜ゲームをクリアできないからである。

 

「あああ!!!! HP残り6!! やべえええええええ!!!」


 だが、状態からして相手のHPも残りわずかなはず。


「ここまできて負けられるかあああ!!! 右いいいい!!! 左いいいい!! 後ろおおおおおおお!!!」


 一時間にもわたる激闘の末、半狂乱とも言える絶叫をあげながら、敵の攻撃を交わし、背中に担いだ極大の大剣を引き抜いてわずか2フレームの隙をついて、的に最後の一撃を叩き込む。


「ここだああああああ!!!!!!!!!!」


 振り下ろされる真紅の大剣、この武器は難関とされる“表エンド”を十回周回し、なおかつ二回以上最初から最後まで“ノーダメージ”でクリアしたプレイヤーにのみ与えられる作中で最も“ピーキー”な紅蓮の極大剣、名を『ブラッドスローター』蔑称『一撃剣』

 武器効果は至って単純で『瞬速最強の一撃を叩き込めるが、所持していると“回復効果適応外”になる』という効果。

 それ即ち、どのような手段を用いても回復が不可能という事。

 『盃』を使っても『焚き火』を使っても、『ベッド』で寝ようが『時間』が経とうが、何をしても回復しない。

 そして何よりも恐ろしいのが、もし『ゲームオーバー』になった場合、セーブ地点で『回復』して蘇生できないため、そのまま真の『ゲームオーバー』を迎え、Cエンド“英雄の死”へ突入。そのまま『最初から』やり直すことになる。

 一撃剣という蔑称は『敵を一撃で葬れる』という意味の一撃ではなく『一撃食らったらゲームオーバー』という鬼畜っぷりからつけられたものである。

 そんなデメリットまみれの大剣を振り回して、ラスボスを討伐すると、そのままボスラッシュに突入。そのボスラッシュで出てくるラスボス含めたボスたちを全て討伐すると出てくる“裏ボス”を討伐すると、晴れて裏エンドに到達することができるのだ。

 そして未だ、このゲームの裏エンドを迎えることができたプレイヤーはわずか100人にも満たない。


「あああああああああああ!!!!!!!!!」

 

 裏ボスに叩きこまれた一撃(ラストアタック)、その瞬間ボスから溢れ出す黄金の光。

 刹那の間を置いて、裏ボス『エンド』は膝から崩れ落ち「玉座は其方の手に」とか細く呟き、そのまま灰になって消えた。


『complete』


 勝利を告げる鐘が鳴り、眼前に聳える巨木の枝に黄金の葉が茂る。

 世界は今、新たな王の誕生を祝している。


「シャオラああああああああああああああ!!!!!!!!! 二度とこんな鬼畜ゲーやるかボケええええええええ!!!!!!」


 俺は玉座に飛び乗ってエンディングを鑑賞したのち、即座にゲームを終了してベッドにHVR機器を投げつける。

 とうとう、クリアした。

 前人未到!! 完全制覇だあああ!!

 まあ前人未到ではないのだが、こういうのは気分が大切なんだよ、気分が。


「こうしちゃいられない、今すぐクリアしたと掲示板で報告せねば」


 俺はすぐさまスマホを取り出し、SNSでスローターズフィストのハッシュタグ付けて裏ボス討伐の報告をば。


『嘘乙』

『嘘乙』

『嘘乙』

『まーた全クリ報告キッズが沸いてるよ』

『嘘乙』

『画像コピペ乙』

『イキリキッズ痛いわ〜』


「……」


 報告投稿後2分で付いた返信は以上の通り……やはりインターネットというのは闇が深いなあ、と、改めて実感した。


「……ふう」


全クリした衝撃と、それを全否定された絶望と怒り、脳内麻薬の不足により強い眠気に襲われた俺は、夏休みも始まったばかりだというのに、22時というあまりに健康的な時間に眠り(ふて寝)につくのだった。


インターネットって怖いよねー(小並感)

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