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2.どうしてこうなった(レオンハルト+マーク)

途中で視点変わります。

いくら片付けても、仕事が追い付かない。

また新たに机に積まれた書類の山に、うんざりする。

「どうなってるんだ、どうしてこんなに仕事がやってくるんだ!今までこんな事はなかった!」

頭を抱えると、一緒に仕事を片付けていたマークが冷静に言った。

「仕方ありませんね。アンヌマリー様が王太子妃教育で手いっぱいで、王太子妃の分まで仕事が回ってきてますから」

理解はしていても、本人も不満なようだ。台詞は冷静だが、明らかに声に苛立ちが篭もっている。一方で同じく仕事を手伝っていたハンスは、不満を隠しもしなかった。机をバンバンと叩きながら文句を言う。

「それにしたって、多すぎだろう。姉より優秀なんじゃなかったのか!?今まではこんな事なかったのに!」

その言葉に、動きが止まる。

部屋の中に気まずい空気が流れた。言ったハンスも「しまった!」という顔をしている。

私達の脳裏に、少し前に死んだ元婚約者の顔が浮かんでいた。

これまで仕事が滞りなく進んでいたのは、彼女がきちんとこなしていたからだ。

彼女が死んで祝杯を挙げた以降は、3人とも申し合わせたように彼女の話題を避けていた。どこで誰が聞いているかわからないからというのもあるが、正しい事をしたとはいえやはり人を殺す事に、一抹の後ろめたさと不安があったからだ。

重い空気を払拭するかのように、マークが口を開く。

「…今更愚痴を言っても始まらないでしょう。もうアンヌマリー嬢が婚約者なのは決定なのですから。彼女の王太子妃教育が、1日も早く終わる事を祈りましょう」

「…そうだな」

マークの言葉を合図に、仕事を再開する。しかしその動きは、先ほどより緩慢だった。

(そうだ、もう引き返せない)

思い描いていたのと違う結果だったとしても、もう前に進むしかないのだ。




のろのろと動き出したレオンハルトと、ハンスを見て僕は内心ため息を吐いた。

(そう、もう前に進むしかないのだ)

「姉より優秀で、王太子妃教育など簡単にこなせる」というアンヌマリー嬢の言葉が嘘だったとしても、今更婚約破棄などできない。

確認もせずあっさりと鵜吞みにした自分達にも非はあるし、その報いは本人が一番受けている。彼女が教育を終わらせて、立派な王太子妃になれば済む話だ。充分取り返しがつく嘘だ。

(でももし、取り返しのつかない嘘をついていたら?)

もし「姉に虐められている」というのも、嘘だったら?

もし自分達が嘘を鵜呑みにして、何の罪もない令嬢を殺したんだとしたら?

浮かびかけた恐ろしい疑問を振り払おうと、いっそう仕事に集中した。

必死で絞り出した時間で書き上げた内容が一瞬で消えた…(T_T)

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― 新着の感想 ―
保存はこまめに。ご愁傷様です。 でも面白いので、苦労した甲斐はあったかと…。(慰めになってないです……?)
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