12.HAPPYENDの果て③(レオンハルト)
15禁シーンあり。ご注意。
「ああああああああああ!!!!」
何回目かの苦痛の後、与えられた女の中に精を出す。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
精魂尽きて床に倒れこむ。女も同様だった。
その様子を鉄格子の向こう側から、父と母が無表情で見ていた。
格子が開いて、兵が2人がかりで女を連れ出すのを、床の上からぼんやりと眺めていた。
「…これで何人目だ」
「8人目でございます」
父の問いに、控えていた兵士が答えると、母がため息をつきながら言った。
「陛下…やはり処刑までに身籠らせるのは、難しいのではありませんか?いくら薬を使ったとしても、3日では短すぎます。もう少し期限を延ばせなかったのですか?せめて懐妊がはっきりする2か月くらいは…」
「仕方がない。あまりに長くすると『わが子可愛さに刑を渋っている』と思われて、王家の評判がますます悪くなるからな。3日が限度だ。だからその分、数で補っているだろう」
母の問いに、父も義務的に答える。
その間も兵士達が、僕に精を出すためだけの薬を注射する。
するとまた僕の意思に関係なく、僕の一部が膨れ上がってきて我慢できなくなる。先ほどとは別の女が牢に入れられた。
牢に放り込まれてから、ずっとこの繰り返しだった。
父上と母上曰く『僕も父も兄弟がおらず、後継ぎがいない。父上と母上が今から子を作るのも望みが薄く、過去に降嫁した貴族家から養子をとるしかなくなるが、そんな家は複数あり次期国王の座を巡って、争いになるのは目に見えているので、僕から種を取って後継ぎを作ることにした』と。
抵抗したが兵士達に押さえられ、無理やり薬を注射された。
その薬は媚薬や精力剤と違い、ただ精を出すためだけに特化した薬で、その気は全くないのに体の一部だけが痛いほど膨れ上がって、精を出すというものだった。
用意された女達も、没落した下級貴族から高級娼婦までピンキリだった。いずれも金と権力で買った女達だった。
それからずっと薬を注射されては、用意された女の中に、道具のように突っ込んでは吐き出すという、作業の繰り返しだった。
アンヌとは最初は一緒の牢で、お互いに「お前のせいだ」と罵りあっていたが、すぐにアンヌだけ連れ出された。その後どうなったかは知らないが、公爵家もローズマリーが死んでアンヌ1人しか子がいない以上、ろくな目に遭っていないだろう。
「起きろ、面会だ」
看守にかけられた声に、疲れ果て床に大の字になったまま、ぼんやりとそちらを見やる。
体力の限界が来たので、『作業』は中断している。父上達は執務に行かれた。戻ってきたら再開するのだろう。
誰かが看守に金を渡して、人払いしてるのが見えた。顔を上げると、エリックがこちらを見下ろしていた。
「エリック…?」
「お久しぶりです、レオンハルト殿。随分と変わり果てたお姿になられましたね」
そう言って一礼する。
以前と変わらない態度に、僕は希望を抱いた。
慌てて飛び起きて、鉄格子に縋りつく。
「エリック、もしかして僕を助けに来てくれたのか!?ありがとう、君だけが僕の味方だ!父上も母上も酷いんだ。僕を種馬扱いして、子作りの作業ばかりやらせる。ハンスもマークも死んでしまって、頼れる相手がいないんだ。さぁ、早くここから出してくれ!」
するとエリックは、目を細めて一歩下がった。
僕はそんな彼の態度が理解できなくて、首を傾げた。
「エリック…?」
「…どうして俺が、貴方を助けると思うんです?ローズマリー様を殺した貴方を」
「あっ、いや、それは…アンヌに騙されて…」
自分は悪くないと思いつつも、後ろめたくて目をそらす。
そんな僕を見て、エリックは冷笑した。
「ご自分の意思ですよね?だってアンヌマリー様は『ローズマリー様に虐められた』とは言いましたが、『ローズマリー様を殺してくれ』とは、言ってません。当然ですよね、彼女の目的は姉から貴方を奪って優越感に浸る事であって、姉を殺してしまっては意味がない。ローズマリー様を信じず、アンヌマリー様の言葉を鵜吞みにしたのも、隠れて不貞を働いたのも、『婚約破棄』ではなく『殺害』を選んだのも、すべて貴方自身の意思だ!」
「うわあああああああああああ!」
僕は頭を抱えた。
(その通りだ)
優秀で周りから期待されてる、ローズマリーが疎ましかった。だからアンヌマリーの誘惑に乗った。仕事も過剰に押し付けた。アンヌマリーから虐めの話を聞いた時、ローズマリーを片付けるチャンスだと思って、殺す事を持ち掛けた。
「俺がここに来たのは聞きたい事があったからです。何故貴方は殺す事を選んだんですか?ローズマリー様が嫌なら、婚約破棄すればいいだけでしょう?」
エリックの言葉に、今度は僕が冷笑を浮かべる。
「破棄なんて生ぬるい。破棄されたって生きている限り顔を合わせるし、口も出してくるだろう。僕だって優秀だ、それなのに母上も皆もローズマリー、ローズマリーと煩い。ローズマリーがいなくなれば、僕の優秀さを皆にわからせる事ができる。だから消してやったんだ!それなのに、こんなところで種馬扱いされた挙句、死んでいくなんて…!」
言っている内に過去の屈辱が甦って、気が付けば声を荒げていた。
エリックはそんな僕を冷ややかに見ると、ポツリと言った。
「自業自得でしょう。貴方達はずっと、ローズマリー様を道具扱いしてきたんですから」
「………え?」
「言葉通りです。貴方は自分の仕事を押し付けられる便利な相手として、王妃は息子を補佐する為の道具として、公爵夫妻は王家と繋がりを得る為の道具として、アンヌマリーは自分の優越感を満たす為の道具として。だから貴方が道具として扱われるのは、自業自得で当然の事でしょう?」
エリックの言葉に、僕は何も言い返せなかった。
ただ茫然として、座り込むしかなかった。
そんな僕を一瞥すると、エリックは何も言わずに立ち去ろうとする。
「ま、待ってくれ!助けてくれ!嫌だ、こんな道具扱いされたまま、死んでいくなんて!」
必死に手を伸ばしたが、届かなかった。
「ローズマリー様も貴方に殺される時、同じ気持ちだったでしょうね」
代わりにエリックの無情な一言が届いた。
それでも僕は、縋りつかずにはいられなかった。
「頼む、助けてくれ!何でもする!謝るから!」
けれどそれ以上、エリックの声は返ってこなかった。
代わりに悪魔の宣告が返ってきた。
「ほう…随分と回復したようだな。これなら一晩中、いや処刑直前まで搾り取れるかな」
「もうお前には、それくらいの価値しかないのだから、最後まで励みなさい」
父上と母上が戻ってきた…それは僕にとって拷問であり、処刑より辛い罰でもあった。
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
一晩中、いや僕の喉が潰れるまで、僕の悲鳴が牢屋に響き渡った。
処刑の日、ようやく牢から出された。
(日差しがまぶしい…)
まるで何年も牢の中にいたようだ…民衆の声がどこか遠くに聞こえる。
最初にアンヌマリーが、処刑台に立たされた。
久しぶりに見る彼女は、髪を切られ、やつれた様子でどこかぼんやりしている。首に縄をかけられて、うつろな笑いを浮かべた。
(あぁ、僕と同じなんだな)
死の恐怖よりも、やっと解放されるという気持ちでいっぱいなのだろう。
ぼんやりしている間に、あっさりとアンヌマリーの処刑が終わり、僕の番になった。
首に縄をかけられ、静かに目を閉じる。
(あぁ…やっと解放される)
何故か最後にローズマリーの姿が浮かんだが、ぼんやりとしていて、どんな表情をしているのかわからなかった。




