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一瞬の静寂が、やがて破られた。シアの手のひらがわずかに動き、その周囲の空気が不安定になった。彼女の目の前には、冷たい氷の魔法を操る者たちが立ち、アルノの側に立つ彼女に対して不気味な笑みを浮かべている。


「お前たちが、魔法の使い手だと聞いていたが、どうやらその程度か?」


冷徹な目をした男が前に出て、氷の刃をちらつかせながら言った。その手に握られていたのは、魔法の力で形成された長剣で、冷気をまとっている。


「シア、無理するな。今は俺が……」


アルノは剣を構えたまま、シアを守るために前に出ようとした。だが、シアは微かに首を横に振り、手を上げた。


「大丈夫、アルノ。私がやる。」


彼女の声は、普段の冷静さと決意に満ちていた。しかし、アルノはその言葉の裏に隠された彼女の葛藤を感じ取った。シアはその力を使うことに強い躊躇いがあり、何度も命を削るような思いをしてきたはずだ。それでも、今ここで彼女はその力を使わざるを得なかった。


「風よ、集まれ!」


シアがそう叫ぶと、風が彼女の周囲に集まり、激しい旋風となって大地を揺るがすほどの勢いを見せ始めた。瞬間的に、氷の魔法を使う者たちがその力に押され、足元を取られた。


「何だ、この力は……!」


相手の魔法使いたちが目を見開き、驚愕の表情を浮かべる。しかし、その驚きも束の間、氷の使い手が冷徹な笑みを浮かべながら、逆にその冷気を周囲に放った。


「だが、風の力だけでは、この程度だ。」


氷の剣から放たれた冷気が、シアの風を押し戻し、彼女を圧倒し始めた。冷気がシアの身体に触れると、すぐに彼女の肌が青白くなり、力を使う代償が目に見えて現れた。


「シア!」


アルノが叫ぶと、彼女は辛うじて振り返り、冷たい目で彼を見つめた。


「大丈夫、アルノ。これくらい……平気。」


だが、その言葉とは裏腹に、シアの身体は反動で疲れ切り、息を切らしていた。風の力を使うたびに、彼女の体力は削られていく。彼女の顔色はすでに青白く、限界が近いことは明白だった。


「シア、もう無理だ!引け!」


アルノが叫びながら、剣を抜いて相手に向かって突進した。しかし、シアは力強く手を挙げ、風を集め始めた。


「私は、まだ……」


その瞬間、シアの力が爆発的に膨れ上がり、周囲の空気を一瞬で席巻した。風の力が氷を割り、空間を震わせる。シアの体から放たれた強風は、氷の魔法使いたちを吹き飛ばし、その場を一気に制圧した。


だが、その代償として、シアの身体は完全に限界に達していた。目を閉じた彼女の体は、ふらつき、ついに倒れ込んだ。


「シア!」


アルノはすぐに駆け寄り、彼女を支えた。その腕の中で、シアは小さく息を吐き、かろうじて目を開けた。


「ごめん……アルノ……もう少しだけ、耐えてくれたら、全部終わるから。」

「シア、頼む、無理をしないで。お前が無事なら、それだけでいいんだ。」


アルノは必死に彼女を抱きしめ、力を込めて支えた。その目に浮かぶ涙を、シアは静かに見つめた。


「ありがとう、アルノ。あなたが……一緒にいてくれるから、私はこんなに強くなれた。」


その言葉に、アルノは何も答えられなかった。ただ、彼女を守るため、彼女を助けるために、すべてをかける覚悟が決まった。


その時、遠くから足音が近づいてくるのが聞こえた。アルノはすぐにシアを抱きかかえ、立ち上がった。


「シア、もう少しだけ、我慢して。」


彼はシアをしっかりと支えながら、近づいてくる足音に警戒し、身構えた。その足音はただの追っ手ではない。背後から、さらに大きな力が迫っていた。



アルノとシアがこれまでの冒険でどれほどの試練を乗り越えてきたか、それでもまだ終わりではなかった。彼らの前に立ちふさがるものは、単なる魔法の使い手や陰謀だけではない。過去に隠された恐ろしい秘密、そしてそれに関わる者たちが、彼らをさらに深い闇へと引き込もうとしている。


その闇の先に、アルノが求める真実が待っているのか。それとも、シアが抱える過去の影が、二人を引き裂くのか。アルノは、ただ一つの目的を胸に、再びその足を踏み出す。

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