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蒼穹に浮かぶ赤い月は、静かに世界を見守っている。何千年も続く魔法の歴史が、今、静かに終わりを迎えようとしていた。
かつて、この地を支配したのは魔法の力を持つ貴族たちだった。空を飛ぶ者、炎を操る者、風を駆ける者。彼らの力で帝国は築かれ、世界を支配していた。しかし、時が経つにつれ、魔法の力は失われ、代わりに商業や軍事の力が台頭してきた。
だが、その力を完全に放棄する者などいない。魔法を持つ者たちは、静かにその力を隠し、秘めたる遺産を守り続けた。
そして、アルノ・ヴェルティスは、何も知らずにその世界に生きていた。彼の家はかつて名門貴族であり、魔法を使う血筋を引いていた。しかし、その血筋は絶えて久しく、家族もまた、魔法の力を持たない者たちに過ぎなかった。
家族を失ったその日から、アルノの心には復讐の炎が灯り続けていた。彼の家族が謎の死を遂げ、家名が奪われたその事件。その背後に隠された秘密を解き明かし、名誉を取り戻すことを誓った。
だが、アルノにはひとつ大きな欠点があった。彼には魔法の才能がなかった。
そのため、魔法を使う者たちに劣等感を抱き、次第に心の中で憎悪を育てるようになった。だが、彼にとって最も厄介なのは、その無力さではなかった。彼が最も恐れていたのは、魔法の力を持つ者が再びこの世界を支配し始めることだった。
その日、アルノは一人で旅立った。誰にも告げず、ただひたすらに前を向いて歩き続けた。
アルノが歩みを進める中で、ふと目の前に一人の少女が現れた。その姿は、まるで風に吹かれたかのように軽やかで、彼女の髪の一筋が風に揺れる様子がまるで幻想的だった。
その少女、シア・ラーディアは、アルノがこれまでに見たことのないような強い風の力を宿していた。だが、その力には重い代償が伴っており、使いすぎると彼女自身が倒れてしまう。
「私にできることは何もない。力を使えば、私はただの道具に過ぎない。」
シアはいつもそう言って、アルノに冷たい言葉を投げかけた。だが、彼女の目の奥に隠された深い悲しみをアルノは感じ取っていた。
シアがアルノに出会ったのは偶然だった。彼女は、アルノが家族を失う前に訪れたある遺跡の近くで、その魔法の力を試していた。しかし、彼女がその力を使うと、反動で倒れ込んでしまったのだ。
アルノはその場で彼女を助けることになり、二人は共に旅をすることになった。
シアは、アルノの家族が亡くなる事件に何らかの関わりがあることを知っていた。だが、アルノにはそのことを話せなかった。何故なら、シア自身がその事件に深く関わっていたからだ。
アルノとシアは、共に道を歩みながら、少しずつお互いの信頼を築いていく。しかし、魔法の力を持つ者たちが再び動き始め、アルノとシアはその運命に巻き込まれていく。
魔法の力を求める者たち、過去の秘密を守り続ける者たち、そして、アルノが求める復讐の手がかりを追い求める者たち――彼らの運命は、次第に交錯し、全てが一つの大きな謎へと繋がっていく。
そして、シアの持つ風の魔法の力が、今、アルノの未来にどんな影響を与えるのかは、誰も知らない。




