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第9話:生命の泉への試練

西へ向かう旅路は、予想以上に険しいものだった。ガードとイリスは何度も川や谷を越え、険しい山道を歩んでいた。道中の気候は次第に厳しくなり、昼は焼けつくような太陽が照りつけ、夜は凍える寒さが襲ってきた。それでも二人は足を止めることなく、目指す『生命の泉』へ向けて歩み続けていた。


「ここまで来たけど、本当に泉があるのかな…」


ガードは息を切らしながら、目の前に広がる険しい岩山を見上げた。彼の身体はまだ完全に回復しておらず、盾の影響で体に負った疲労が残っていた。


「大丈夫よ、ガード。私が付いてるから安心して」


イリスは明るく励ますように言い、彼の手を握った。その温かな手のぬくもりが、ガードに少しだけ勇気を与えてくれた。


「ありがとう、イリス。君がいなかったら、僕はここまで来れなかったかもしれない」


ガードは感謝の言葉を口にしながら、もう一度盾をしっかりと握り締めた。盾にはまだ、刈り取った生命の力が残っている。その力をどう扱うべきか、彼は未だに答えを見つけられていなかった。



---


数時間後、二人は険しい山を越え、ようやく平原に出た。目の前には広大な緑の草原が広がっており、遠くには青く輝く湖が見えた。


「もしかして、あれが『生命の泉』…?」


ガードはその湖に目を奪われた。湖の水面は輝き、まるで命そのものが宿っているかのような神秘的な光を放っていた。


「間違いないわ。あそこが泉ね」


イリスも興奮気味に湖を見つめた。二人は足早にその湖へと向かっていったが、その時――


「お前たちがここに辿り着くとはな…」


突然、低く響く声が二人の背後から聞こえた。振り返ると、霧の中で現れた謎の敵と似た姿の男が立っていた。黒いローブをまとい、目元が鋭く光っている。


「また…お前か!」


ガードは身構え、盾を構えた。男は冷ややかな微笑を浮かべ、ゆっくりと近づいてきた。


「生命の泉を手にするつもりか?だが、その代償は大きいぞ。泉の力を得た者は、その命を削られることになる」


男の言葉にガードは動揺した。泉の力を得ることが危険だというのか。しかし、彼はそれでも進むしかなかった。


「それでも僕は…進まなければならない!この盾を制御するために!」


ガードは盾を掲げ、男に向かって立ち向かった。だが、男は冷静にガードを見つめ、手を掲げると、空気が震えるように周囲の風景が変わり始めた。


突如、ガードとイリスの周囲に不気味な霧が立ち込めた。霧の中から、再び敵の姿が次々と現れた。黒いローブを纏った男たちは、ガードたちを取り囲むようにして現れ、その数は以前よりも増していた。


「ここで倒れるわけにはいかない…」


ガードは盾を握りしめ、再び戦う覚悟を決めた。しかし、盾の力を使いすぎれば、またあの高熱に襲われるかもしれない。彼の体はもう限界に近づいている。それでも、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。


「イリス、僕が前に出る。君は後ろで援護してくれ!」


ガードは決意を固め、敵に向かって突進した。盾を掲げ、刈り取る力を抑えながらも、敵の攻撃を防いでいく。しかし、敵の数は多く、一瞬の隙も許されない状況だった。


「ガード!気をつけて!」


イリスの叫び声が響く。彼女は背後から錬金術の力でサポートしていたが、敵の攻撃が次第に激しくなり、ガードの動きも鈍ってきた。


「くっ…!」


ガードは何とか敵の攻撃を防ぎながら、盾を使って反撃していったが、やはり体の負担が限界に達しつつあった。盾に蓄積された生命力が彼の体に負担をかけ、高熱が再び彼を襲い始めた。


「もう…だめなのか…」


意識が遠のきかけたその時、湖の方から強い光が差し込んできた。ガードとイリスはその光に目を奪われ、次の瞬間、敵の姿が霧と共に消え去っていた。


「何…?今の光は…?」


イリスは驚いて辺りを見渡した。ガードもまた、何が起こったのか理解できずにいた。しかし、その光は湖の方から放たれたものだと気づくと、二人は無言のまま湖へと歩みを進めた。



---


湖のほとりにたどり着いたガードたちは、そこに一人の老人が立っているのを見つけた。老人は静かに湖の水面を見つめ、やがてゆっくりとこちらに振り向いた。


「お前たちがここまで来たのか…よくぞたどり着いたものだ。」


老人の声は静かでありながら、どこか重厚さを感じさせる。彼はまるでガードとイリスが来ることを予期していたかのように、柔らかな笑みを浮かべた。


「あなたは…?」


ガードは警戒しつつも、力を失いかけた体で老人に問いかけた。老人はゆっくりと歩み寄り、湖の水を手ですくいながら語り始めた。


「私はこの『生命の泉』を守る者。ここで語られてきた伝説にある盾の秘密を知る者だ。」


その言葉に、ガードは驚きの表情を浮かべた。この老人が盾の秘密を知っているというのか。


「教えてください、この盾の本当の力を…僕はまだ、うまく扱えていない。どうすれば、この力を制御できるのか…」


ガードは真剣な眼差しで老人を見つめた。イリスも緊張した面持ちで老人の答えを待った。


老人はしばらく沈黙した後、ガードの盾を指しながらこう言った。


「その盾は生命を刈り取るだけではなく、与えることもできる。だが、命を扱う力はあまりに大きい。命を奪うたびに、君の心も体も蝕まれていく。君がその盾を使いこなすには、まず自分自身の命の力を理解しなければならない。」


「自分の命の力…?」


ガードはその言葉の意味がすぐには理解できなかった。盾の力を使うたびに、自分の命が削られているということなのだろうか。


「そうだ。お前の心が弱ければ、その盾はお前を飲み込む。そして、命を奪うことの恐怖に耐えられなくなり、やがては破滅するだろう。」


老人の言葉にガードは息を飲んだ。盾を扱うには、自分の心の強さが必要だということか。彼は自分が本当にその強さを持っているのか、不安になった。


「じゃあ、どうすれば…」


ガードが聞き返すと、老人は再び湖の水を見つめながら言った。


「答えは、この泉にある。この泉の水は生命そのものを象徴している。お前がこの水を飲み、命の本質を理解すれば、盾の力を完全に制御できるようになるだろう。」


「この水を…?」


ガードは湖の水を見つめた。それはまるで命のエネルギーが溢れ出ているかのように、静かに輝いていた。


「だが、飲むには覚悟がいるぞ。お前自身の命を犠牲にする覚悟がなければ、泉の力を受け入れることはできない。」


その言葉にガードは戸惑った。自分の命を犠牲にしてまで、盾の力を制御する価値があるのか。彼の心の中には様々な葛藤が渦巻いた。


「僕には…できるだろうか…」


ガードの声はかすかに震えていた。イリスはそんな彼の横に立ち、優しく手を握った。


「ガード、あなたならできるわ。ずっと一緒に旅してきて、あなたがどれだけ強い人か、私は知ってる。だから、信じて。」


イリスの言葉にガードは少しだけ心を落ち着けた。そして、彼は決意を固め、湖の水に手を伸ばした。


「僕はこの盾の力を受け入れる…そして、守りたい人たちを守るために、この力を使うんだ!」


ガードは覚悟を決めて湖の水を口に含んだ。すると、その瞬間、彼の体に温かい力が流れ込み、同時に鋭い痛みが体を貫いた。


「うっ…!」


ガードは苦しみながらも、その痛みに耐えた。彼の体はまるで燃え上がるように熱を持ち、盾が反応するかのように淡く光り始めた。


老人は静かに頷きながら言った。


「これでお前は、真の盾の持ち主となる。その力をどう使うかは、お前次第だ。」


ガードは息を整えながら、盾を見つめた。まだ完全にその力を理解したわけではないが、自分の内に宿る命の力を感じ取ることができた。


「ありがとう…これで僕は、進むべき道が見えた気がする。」


ガードはそう言い、再び西へと向かう決意を固めた。



---


次回、第10話では、ガードの新たな力の覚醒と、泉の力をめぐる新たな試練が待ち受ける。ガードはこの力をどのように使うのか、そして再び現れる敵との対峙が描かれます。





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