第8話:盾の秘密に迫る出会い
ガードとイリスは霧を抜けてから、ゆっくりとではあるが確実に西への道を進んでいた。山を越え、草原を通り過ぎ、次の目的地は「シルヴェストの街」――商人たちが行き交う大きな街だった。そこには、ガードの盾について知る者がいるかもしれないという淡い期待があった。
「ここなら何か手がかりがあるかもしれないわね」
イリスが街の門を見上げながら言った。街は大きく賑やかで、あちこちに人々の活気が溢れていた。商店や市場が並び、旅人や商人が絶えず行き来している。ガードも少しだけ心が軽くなり、辺りを見渡した。
「まずは誰かに話を聞いてみようか。盾のことを知ってる人がいればいいんだけど…」
ガードは意気込みながら街を歩き始めたが、すぐに体が重く感じた。盾の使用によって体に蓄積された負担は、まだ完全には回復していない。イリスもそれに気づき、心配そうに彼を見つめた。
「無理しないで、まずは休んだ方がいいわ」
「でも、早く情報を集めないと…」
「あなたが倒れたら、何も進まないわ」
イリスはきっぱりとした口調で言い、ガードを宿屋へと連れて行った。二人は一旦休息を取ることにした。
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夜が明け、体調が少し良くなったガードは再び街に繰り出した。街中の噂や商人たちの話を聞きながら、盾に関する情報を探していたが、有力な手がかりはなかなか見つからない。イリスもまた、商店や広場を回って話を聞いていた。
そんな中、二人は古びた書店の前にたどり着いた。その店は目立たない場所にありながら、どこか不思議な雰囲気を醸し出していた。
「ここ、ちょっと怪しいけど…なんか引かれるわね」
イリスは店の看板を見上げて、好奇心に満ちた表情で言った。ガードも同じように感じたのか、二人は自然と店に足を踏み入れた。
店内は薄暗く、古い本や巻物が棚にぎっしりと詰まっていた。店の奥には、年老いた店主らしき人物が座っていた。彼は二人の姿を見て、静かに微笑んだ。
「何かお探しかね?」
低く穏やかな声で語りかける店主に、ガードは少し戸惑いながらも口を開いた。
「伝説の盾について何か知ってるかもしれないと思って…特に、この盾について…」
ガードは背負っていた盾を見せた。店主は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに深く頷いた。
「ほう…その盾か。久しくその姿を目にしたことはなかったが、確かに伝説の品だ。だが、君はその力の本当の意味を知っているのかね?」
「本当の意味…?」
ガードは眉をひそめた。盾は攻撃者の生命を刈り取る恐ろしい力を持っているが、それ以外に何か隠された力があるのだろうか。
店主はしばらくの沈黙の後、古い書物を棚から取り出し、ゆっくりと開いた。そのページには、盾に関する古代の文字が記されていた。
「この盾は、ただの防具でもなく、単なる凶器でもない。この盾に蓄積された命は、使い方次第で他者に与えることもできる。そして、それは単に命を守るだけでなく、時には大きな奇跡をもたらすこともある」
「奇跡…?」
イリスが興味深げに耳を傾けた。店主はさらに話を続けた。
「だが、その奇跡を使うには、相応の代償が必要だ。君がその盾を完全に制御するためには、まず自分の内にある力を見つけなければならない」
ガードはその言葉に戸惑いを隠せなかった。自分の内にある力とは一体何なのか。それがなければ盾の力を完全に制御できないというのか。
「それを見つけるにはどうすれば…?」
ガードの問いに、店主は再び微笑みながら言った。
「西の地にある『生命の泉』に行くことだ。その泉には、失われた命を蘇らせる力が眠っていると言われている。そして、その泉こそ、君が盾の力を理解するための鍵となるだろう」
「生命の泉…?」
ガードとイリスは顔を見合わせた。西への旅の道筋が、新たに示されたのだ。
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店を後にした二人は、再び西へと向かう決意を固めた。『生命の泉』が盾の秘密を解く鍵となるのであれば、そこに行くしかない。そして、ガードはそこで自分の内にある力を見つけなければならない。
「次は『生命の泉』ね。どんな場所なのかしら…」
イリスは遠くを見つめながら言った。その表情には期待と不安が入り混じっていた。
「何が待っているにしても、僕は進むしかない。この盾を完全に扱えるようにならないと…」
ガードは強い決意を胸に、次の目的地へと歩を進めた。
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次回、第9話では、『生命の泉』への旅路で待ち受ける新たな試練と、ガードの成長が描かれます。泉に隠された秘密とは何か、そしてガードは自分の内なる力を見つけることができるのでしょうか。