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「・・・つむぎ姉?」
私は懐かしい声に安心して身体の力が抜け、床にペタンと座り込んでしまった。
開いた扉の向こうには、大学以来久しぶりに会う幼馴染の姿が見えた。
「・・・朔くん?」
最後に会った時は私より少し大きいくらいだった身長は見上げる程に伸びて、長くてまとめていた明るい茶髪は黒く短くなっていた。
細かった身体は、筋肉がついたのか逞しくなっていて、まるで別人のようだ。
唯一、甘えたように少し垂れた目だけがあの頃と同じで、懐かしい。
「そうだよ。久しぶりだね、つむぎ姉」
鴻池朔之丞くんは元お隣さんで、私より3つ年下の幼馴染。
私の両親は子どもに興味がなくて、朔くんの両親は仕事が忙しくて、私たちはいつも放置されてた。
そんな私たちはいつも一緒にいて、両親よりも家族だった。
「本当に・・・大きくなったね」
嬉しくて自然と笑みが浮かんだ。
朔くんが高校に入ってから避けられるようになって、どうしたらいいか分からない内に私が就職で地元を離れることになった。
「はは、何その親戚のおばさん発言。まぁ、最後に喋ったのは、俺がまだ高1の時だったしな」
「あれから10年かぁ・・・可愛かった朔くんが、こんな素敵な大人の男性になってて、嬉しい」
本当に、気分は親戚のおばさん。だって、私はもう29歳だし。
「・・・少しは、異性としての魅力・・・出てきたかな?」
私の発言に、少し笑いながら朔くんが聞いてきた。
「もちろん!カッコいいよ」
「なんか、子ども相手に言ってるみたい・・・でも、ありがとう」
笑ったら余計に幼く見えて、こんな事大人の男性に言っちゃダメだろうけど、可愛かった。
「あの・・・ところで、ここどこなんだろう?」
私の発言に、朔くんは真剣な目をして少し黙り込んだ。
なんだろう、と思って首を傾げる。
こちらの反応を確認するように、朔くんはゆっくり話し出した。