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《魔王城》カリンの忠臣、ブチ切れる

「カリン様を追放したって、正気か!?」


 場所は変わって魔王城。

  ガルガンティア曰く、頼れる副官ことアルフレッドは、カリン追放の知らせを聞いて、頬を引きつらせていた。



 アルフレッドは、魔王城でも指折りの兵士であり、本人もそれを自覚していた。

 もちろん、本気を出したカリン様が、世界一強く、世界一可愛いことは、疑いようのない絶対の真実である。だがアルフレッドは、それよりもカリンの持つカリスマこそが、これからの未来を作っていくと信じていた。


 その矢先の追放劇である。

 彼が、ブチギレるのも無理はなかった。



「アルフレッド様、下克上なんてしないですよね?」

「落ち着け、リズ。そんな涙目にならなくても、俺たちは魔王様の忠実なしもべだから」


 "たち"には、無論、彼が敬愛するカリン様も含まれる。カリン様ファーストのアルフレッドにとって、カリン様が敬愛するリズベットも忠誠を誓うべき相手なのだ。


 魔王ことリズベットは、あの日からアルフレッドの部屋に入り浸って居た。カリンの追放を止められなかったと、日々、アルフレッドのもとに通ってしくしくと泣いているのだ。


 ……うっとおしいこと、この上ない。



「私に、もっと、力があれば……」

「ああ、そうだな。おまえに力があれば、ガルガンティアのような小者をのさばらせることも無かっただろう」

「うわ~ん! やっぱり私なんて、魔王失格なんです……!」


 大粒の涙を流すリズベット。

 まだまだ未熟で、頼りない印象は拭えない。それでも先代の後を継いだこの少女は、彼女なりに魔族国の行く末を案じているのだ。



「あ~、泣くな。面倒くさい……」

「ずびっ、だって――」


 親の後を継いで、四天王になったカリン。

 先代魔王の後を継いで、魔王となったリズベット。

 ……彼女たちはある意味で、似た者同士なのだろう。事実、カリンはリズベットに親近感を覚えていたようだし。


「おまえのするべきことはなんだ。ピーピー泣くことか?」

「……分かっています。そうです、こんな事をしている場合ではありませんね」


 リズベットは、ある決意を固めていた。


 宰相ガルガンティアから、その地位を剥奪するべく、彼の不正の証拠を集めているのだ。

 彼を支持する流派も、魔王城には多い。これまで手を出すことは出来なかったが、このまま放っておけば国が大変なことになると、ついに決心したのだ。



「なに、あの方がみすみす追放を受け入れるとは思えん。何か深い考えがあるのだろう」

「そうですよね、カリン様ですもんね!」


 深々とうなずくアルフレッドの言葉に、ぱっと顔を明るくするリズベット。




 ――おおよそカリンが聞いていたら、悲鳴をあげて逃げ出す会話だった。

 なんせカリンには、深い考えなど欠片もない。

 これで四天王を隠居できる、やった~!

 ……ぐらいの思考しか、していないのだから。



「邪魔するぞ」


 そんなことを話していると、ガルガンティア宰相が入ってきた。


「……ガルガンティア宰相っ!」

「おや、リズベット姫。いらっしゃったので?」


 今日も全身黒いスーツに身を包み、慇懃無礼な態度を崩さない。しかし、内心ではリズベットやカリンを見下しているのが、丸わかりだった。



「俺に、何の用だ?」

「ああ。第四小隊の奴らが、カリンはどこに行ったとうるさくてな――」


 ガルガンティアが持ち込んできたのは、そんな話だった。


「無能はクビ。そう当たり前のことを宣言しただけなのだが……、おまえからも説得してくれないか? アルフレッド副隊長?」


 ガルガンティアは、人のことを駒程度にしか思っていない。

 アルフレッドが敬愛するカリンとは、真逆の考え方をしている人間であり――



「ああ、分かった。俺が話をしよう」


 アルフレッドは動き出す。

 頭の中で、密かに計画を立てながら。



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闇落ち聖女は戦渦で舞う ~裏切られた処刑聖女は、魔王と手を組み王国を滅ぼすことにしました。今さら土下座で命乞いしても、もう遅い。徹底的に容赦なく蹂躙します~

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