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盗賊襲来。カリンは逃げ出した!(しかし、回り込まれてしまった!)

 乗る者の心情など意に介さず、馬車は優雅に移動する。

 たっぷり3時間ほどの時間をかけ、馬車はのどかな平原の中を移動していた。


「カリン様。はい、あーん!」

「む、子ども扱いするな!」

「え!? 飴ちゃん、要らないんですか?」

「なんでそんなに驚く!? ……まあ、もらうけど――」


 カミーユに受け取った飴玉を、私はころんころんと口の中で転がす。

 そんな私の様子を、にこにことカミーユが見守った。


(こいつ、いつも飴玉を持ち歩いてるのか?)


 カミーユが言うには、魔界都市では四天王の一人が行方不明になったという噂でもちきりらしい。

 ガルガンティアの流した噂だろう――随分と手の早いことだ。

 まあ隠居する私には、もう関係ないことだけどな。



 そうして飴玉をころころしながら景色を眺めていたら、眠くなってきた。

 うとりうとりと船を漕ぎ始めた頃――


「ヒャッハー、ありがね置いていけ!」

「我らがゴブリン山賊団に切れぬもの無し!」


 突如、馬車を止めるように盗賊が現れた。

 ざっと見、40人ほど居るだろうか。

 盗賊団のリーダーと思わしきオークは立派なドラゴンにまたがり、頬に傷を持ち、とてつもなく凶暴そうだった。



「カミーユ!? ど、ど、ど、どうしよう!?」

「大丈夫ですよ、カリン様。大人しくしていれば、命までは取られませんって」


「ヒャッハー! まずは積荷を全ていただこうか!」

「下手なことは考えるなよ! おまえらも、命は惜しいだろう!」


 か弱いスライムこと私は、ぷるぷると馬車の隅で震えていることしかできない。

 まあ、今の私は幼女形態だけど。



「ヒャッハー! それと四天王のカリンとやらに、報奨金が出ているんだ」

「もし姿を見かけた奴がいれば、すぐに我々まで知らせるんだな!」


 このままやり過ごせるかと思っていた矢先、盗賊団の頭がこんなことを言い出した。



(報奨金!? なんで!?)


 馬車に乗っていた人々の目が、私の方に向いた。


(おい馬鹿、やめろ。バレるじゃないか!)



 カミーユのせいか?

 どうやら馬車の乗組員には、普通に気が付かれていたらしい。



「おい、貴様が元・四天王のカリンだな?」

「あはは、何のことだ?」


「ええ、その通りです。カリン様の手にかかれば、あなたたちがごとき矮小な盗賊団は、あっという間に消し炭ですよ。消し炭!」

「ああ、私が少し本気を出せばあっという間に消し炭――って、バカっ! なんで煽るんだよ!?」


 はっ、いかん。

 つい魔王城に居るときの癖で、虚勢を張ってしまった。


「ヒャッハー! ……ぶち殺すっ!」

「生死は問わねえとガルガンティア様は言っていた――ぶち殺せっ!」


 ……案の定、ゴブリン山賊団の奴ら、ブチギレてるし。


 馬車は気がつけば、盗賊団に囲まれていた。

 その数は、ざっと数えて30以上。



(付き合ってられるか……!)


 私は、素知らぬ顔で離脱しようとして――

 ガチリと、カミーユに手を掴まれていた。



「おいいいい、私は逃げるぞ。カミーユ!?」

「落ち着いて下さい。この数が相手じゃ、逃げ切れませんって」

「じゃあ、どうしろとっ!」

「ご安心下さい。カリン様は、いつも窮地を切り抜けて来たではありませんか」


 私が、ハッタリだけで魔王城の中で地位を保てたのは、カミーユの助けが大きい。

 どうにか戦いを避けようと頑張ったところで、戦いを避けられない場面はある。そんな時、カミーユはあの手この手で、私の実力がバレないよう尽力してくれたのだ。


「信じて良いのか、カミーユ!?」

「ええ、プランBで行きましょう」


 プランBとは、貴様らのような小者、私がわざわざ相手をする必要はない。

 我が腹心の部下が貴様らを消し炭に変えてくれよう――大作戦である!(要は、ただの他力本願)



「貴様らごとき盗賊団、私が直々に相手するまでも――」

「者ども、かかれっ!」


 馬車から降りた私たちに、30人オーバーの盗賊団が一斉に襲いかかってきた。


「おいいいいい、カミーユ!? どうしよううう?」

「まずいですね。カリン様、少しだけ耐えて下さい」



 カミーユは手にした太刀で、恐ろしい勢いで敵をバサバサと斬り捨てはじめた。

 刃が振るわれ、血しぶきが上がる。


(カミーユは最強だからな)

(心配いらない。心配いらないが――)


 数が多すぎて、私の方にもゴブリンどもが流れ込んで来ているのである。

 これは大変な問題である。



「その首、もらったあああああ!」

「ヒィィィィィっ!?」


 ゴブリン山賊団のお頭が、凄まじい勢いでこちらに突進してきていた。

 

 まずもって、眼力がヤバい。視線だけで人を殺せそうだ。

 私は内心で涙目になりながらも、条件反射だけで不敵な笑みを浮かべ喋り続ける。



「山賊団ごときが、我が覇道を遮るか。消し炭になりたくなければ、さっさとその道を譲るが良い!」

「まだ言うかっ!」

「命が惜しいだろう? なに、今から投降すれば悪いようには――」

「死ねやあぁぁぁぁぁぁ!」


(いや、これ無理だって……!?)

(さすがに四天王のアホどもじゃないし、ハッタリだけじゃ誤魔化せないって!)


 こっちにカミーユが来るまでの辛抱。

 そう思っていたが、どうやら時間稼ぎも難しそうだ。

 

 突撃してくる数体のゴブリンたち。

 私は、回避に専念しようとして――


「ぶぺしっ」


 すっ転んだ!

 ポンコツ四天王の私は、運動神経もポンコツなのである。



「これが本当に、殺戮の天使――有名な四天王カリンなのか?」

「まるでこれじゃあ、本当に弱いみたいじゃ――」


 ゴブリン盗賊団の1人が、ついに真実に辿り着こうとしてしまった頃……、




 ――ごっくん


 私は、口に含んでいた飴玉を飲み込んでいた。


(ああ、勿体ないっ!)

(って、そうじゃなくて――)


 起き上がった私を取り囲んでいたのは、ゴブリン山賊団の凶悪な面々。

 その誰もが、ワンパンで私を殺れそうな腕力をしており、



(ヒィィィィィ……!?)


 ――私の意識は、そこで途切れている。




===

カリン・アストレア

戦闘力 32→3278


所持スキル

吸収(獣人)

 ※ 一部ステータスとスキルを引き継ぎます

 魔神の脚力(LV6)

 無双閃(LV9)

 斬撃の心得(LV7)

 打撃の心得(LV7)

 忠誠の証(LV99)

メタモルフォーゼ(LV1)

===

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