恋文(細胞たちの夢)
不思議なことに淋しさは
きみの豊かな人生を 信じることで相応に
和らぐように思います
不思議なことに哀しさは
きみの瞳が僕じゃない 誰かに向いていても、なお
笑顔であれば癒せます
たったふたつの細胞が
自己増殖をやめて、永遠の いのちを閉じる、その代わり
出逢った頃を思います
分裂でなく、寄り添って
やがて、互いをお互いが 支えることの選択を
した遠い日を思います
己がからだの半分を 捨てて、誰かと結びつき
己がいのちを有限に かえた出逢いを思います
出逢わぬ永遠のいのちより 触れ合うことで満たされて
きっと、寄り添う、それだけで 幸せだったことでしょう
同じことだと信じます
僕らもあの日、寄り添って
短い日々を思いつつ 互いを求めたのだから
進化を経ても僕たちは
永遠のいのちの孤独より 出逢ういのちの有限を
選び続けているのです
逢うべき人に逢えるのが
遠い昔に僕たちが
永遠のいのちと引き換えに 得たしあわせに思えます
だからでしょうか 離れても 出逢いに悔いはありません
逢えないままに終わるより なお、しあわせに思います
不思議に、きみがしあわせに いまも、どこかで暮らすのを
しごく自然に受け入れて 僕は生きてもいるのです
きみが笑顔でいることが
笑顔が誰に向くかより ずっと大事なこととして
僕の願いにあるのです
いつか、夜空を澄み渡る
星にも負けぬ純粋な 想いをきみをに届けたい
できればいいと思います
冬から春へ向かうには まだ、寒い日が続きます
どうぞ、豊かに、健やかに きみの暮らしが続くよう
なにもできない僕からの 拙き詩を祈りへと
かえて、電子の夜空へと そっと、浮かべてみますから