その頃神界では
ななな何なのよ、あれは。。。
神界で一部始終を見ていた女神クシは震えていた。
「ラーメンサイコパス」
そんな言葉が浮かんでくる。
考えてみれば、グルーに降り立った直後からそんな片鱗を見せていた。
あの山賊を瞬殺した時だ。
普通、平和な日本で生まれ育った人間であれば人をあんな風に殺してしまえば罪の意識に押しつぶされてしまうであろう。
しかし、彼は平然としていた。殺したことがさも当たり前かのように。
そしてフィズへの対応。
あれは酷かった。角が生えているとはいえ人の姿をしているのに43回も殺して生き返らせるとか狂っているとしか言いようがない。
ヴァーゴへの対応もそうだ。あんな拷問に近い痛めつけ方は狂っている人間にしかできない所業であった。
これは推測でしかないが彼は元々そういう気質だったのだ。
普通はラーメンをこれ以上食べたら死ぬと言われたら怖くて食べられなくなるものだ。
しかし、彼は死ぬまで食べ続けた。狂っていたのだ。既に。
恐らく、人の命どころか自分の命さえもラーメンの前でははるかに軽いと感じているのだろう。
ラーメンが食べられているからその本性を抑えることができていたのだ。
もし彼が死以外の事情で死ラーメンを食べられなくなっていたら、きっと地球で凶悪な犯罪者となっていただろう。
もしかしたら、彼を止めるために地球の神はラーメンで彼が死ぬように操作したのかもしれない。
最早、ヴァーゴ以上に最悪な魔王をグルーに送り込んでしまったことになる。
「管理部は何をやっているのよ」
独り言で文句を言う。
管理部とは死んだ魂が勇者の素養があるかチェックし、素養があるものは異世界転生担当の神の元に送り付ける神界の部署である。
当然その魂が危ないものでないかもチェックするのが仕事である。
まあ、最終的には異世界転生担当の神も最終チェックをすることになっているので、クシ自身の責任も免れないのだが。
そしてクシにはもう一つ恐れている事があった。
それは麺死郎がこの神界に攻め込んでくるのではないかということであった。
ラーメンの為に必要とあれば彼はこの神界に攻め込んでくるという予感があった。
いや、今の時点ではもはや確信に近いものがあった。
それぐらい彼は狂っている。
グルーからこの神界にやってくる手立ては現時点では存在しない。
しかし彼ならやってのけるだろうとクシは思っていた。
「必要とあれば刺客を送り込むしかないわね...」
クシはそう呟き、必要な勇者のリストをピックアップすることにした。