異世界グルーへ
目が覚めるとそこは森のようであった。
水の流れる音が聞こえる。近くに川があるのかもしれない。
喉も乾いていたので音の方へ向かってみることにした。
水面に映る自分の顔を見て驚き、言葉を失う。
生前の俺はモジャモジャ頭に二重顎、肌も油まみれの34歳会社員。
しかし、水面に映った顔は綺麗な黒いストレートヘアー、シャープな顎、肌もツルツルでどうみても十代後半のイケメンだった。
そういえばここまで来るのもいつもより身体が軽かった気がする。
服は、麻のような質感の白いシャツにベージュのパンツ、黒い革靴が着せられている。
シャツをめくり、自分の腹を見てみると、無い。蓄えた俺の脂肪が。代わりに腹が6LDKになっていた。
「そちらの世界用の体を構築しました。」
どこからか女神の声が聞こえる。
「前のままの体が良かったんだが。」
俺には蓄えた脂肪に誇りを持っていた。
「毎日監視しなければいけないこちらの身にもなれよ。クソが。なんでラーメンクソデブを毎日みなきゃいけねえんだよ。」
相変わらず口汚いな。
「おっと。。。地が出てしまいました。その体は魔力で構築してあります。味覚や触覚といった五感は再現していますが、加齢やカロリー摂取等で見た目が変わることはありません。ついでに病気や毒状態になることもないでしょう。」
魔力で構築されたということは脂肪を再現されてもそこには俺がいままで摂取してきた魂はそこにはいないわけだ。それなら仕方ないと諦めもついた。どうやらは今まで摂取してきた魂は自分の魂と融合しているようだし。
それにメリットもある。これでいくらラーメンを食べても死なないわけだ。無限に、永遠にラーメンを食べ続けることができる。
「ヒャッハーッッッッ!!!」
川の水で喉を潤し一息ついていると、アレな声をあげながら3人組の男が草むらから飛び出してきた。
下っ端AとBにその兄貴分らしき男の組み合わせ。
そういうのは電気を発するネズミとかなら許せるのだが、世紀末ファッションな男たちだったので
イラっとした。
「食料よこ」
下っ端Aがそう言いかけ、パンッという乾いた音とともに男の膝から上が弾け飛んだ。
消滅という表現のほうが正しいかもしれない。
それは俺がちょっと小突いた結果によるものだった。
「嘴撃」
今の一撃は鳥系の技でも一番威力の低い技らしい。それは俺の中の鳥の魂が教えてくれた。
それでも神獣クラスになるとこの結果か。。。
ちょっとグロいなと思うので次は神獣クラスではない牛系の技にしておこうと思った。
「ヒッヒィー!!なっ何をした」
下っ端Bが腰を抜かしながら言う。
「面白い技を使うようだな。何かタネや仕掛けがあるのだろうが、ヨーネ牛を喰った俺に小細工は通用せんぞ?」
兄貴分らしき男が前に出る。
「くらえ!!!バッファロータックル!!!」
兄貴分らしき男のがショルダータックルの姿勢で突っ込んで来る。
俺は牛の魂の感じるままに右手を水平に払った。
次の瞬間、兄貴分らしき男の胸のところで綺麗にスパッと切り離されていた。
胴体が血しぶきを上げ倒れ、は口からゴボゴボと血が溢れている。
「ミノタウロスの斧」
今の技はそういった名前らしい。
ああ、、これだったらさっきの嘴撃のほうがマシか。そう思ったので下っ端Bの方は嘴撃で処理した。
豚系の技はイメージ的に鳥系よりもコントロールが効かない予感がしている。
なるべく使わないようにしたい。
兄貴分らしき男の死体を漁るとブロック状の総合栄養食らしきものを10個程持っていた。
1つ試しに食べてみると地球で食べたものと似た味だったので間違いないだろう。
残りは懐に仕舞った。
さて、次にやることは決まっている。
もちろんラーメンを食べることだ。
そもそもこの世界にもラーメンが存在するのか。
存在しないのであれば、ラーメンに必要な食材は存在するのか。
それを調べるには田舎の村などよりは都や大きな街がいいだろう。
俺は鳥系の力を使い空に浮かび上がった。
少し遠いが城と城下町のようなものが見えた。
俺はそこまで飛んでいくことにした。