ラーメンを食べすぎて死んだ俺
医者は言った。
これ以上ラーメンを食べれば死ぬと。
俺は答えた。
ラーメンを食べない人生など死んでいるものと同じだと。
そんな問答を行ったのは数日前だったような気がする。
そして今、俺は知らない部屋に居る。
部屋をぐるりと見渡してみたが何もない。
扉や窓などの出入り口になりそうなものすらない。
壁も床も天井もただただ白い。感覚が狂う。
天井までは5m程の高さ、10畳程の広さの部屋
どうして、どうやってこの部屋に居るのか、思い出せない。
「貴方は死にました。」
背後から声が聞こえた。先程見渡した時には自分一人だったはずだ。
驚いて振り返る。
すぐ後ろに女性が立っていた。
夏の夜明け前のような、黒いようでいて碧いような長い髪
琥珀色で透き通っているが、感情を読むことのできない瞳
一目見て美しいと感じる容姿ではあったが、とてつもない恐ろしさを感じた。
「私は女神クシ。ここは死後の世界。。。」
彼女、女神が言うには俺は医者の忠告後もラーメンを食べ続けた為、本当に死んだらしい。
俺の最期は意識を失って最近ハマっていた鶏白湯ラーメンに顔から突っ込んだことによる窒息死だそうだ。
ラーメンに溺れて死んだのなら、これ程本望なことはない。
「それで、私はどうなるんでしょうか」
相手は神様ということで、できるだけ丁寧な言葉遣いで質問した。
「私たち女神は死を恐れず試練に立ち向かう勇敢な魂を勇者として地球とは異なる世界に派遣しています。貴方も勇者として選ばれたのです。」
ああ、死を恐れずラーメン食べ続けて死んだから選ばれたのか。
納得する俺。
女神は続ける。
「貴方には邪神竜ヴァーゴが支配する世界、グルーに行き人々を救ってもらいたいのです。」
ん、ガッツリバトルな世界か。
ということは何かチート級のスキルやステータスがもらえるのだろうか。
女神に質問すると
「いいえ、特にそういったものを与えることはできません。ただ、貴方の行く世界では今まで取り込んだ魂、つまりは食べた命の分がそのまま強さとなる世界です。」
スキルもステータスもくれないとは使えない女神だ。
「貴方の魂は向こうの世界では鳥系、豚系の力としては神獣クラス、牛系もミノタウロスクラスの力が発揮できるでしょう。又、小麦を含めた穀物、野菜類の魂も相当な量を持っているのでそれらも味方してくれるでしょう。」
ほうほう。それならなんとかなりそうだ。
昔は家系、最近は鶏白湯にハマってたしな。一時牛骨スープのラーメンも良く食べていたからそんな感じだろう。
「それでは早速よろしく、、、お願いします。」
俺の体がふわりと浮き上がった。
ただ、それは魔法とか不思議な力によるものではなかった。
女神の左拳が俺の右わき腹に突き刺さっていた。
お手本のような肝臓打ち(リバーブロー)
「なんで私の担当がこんなラーメンクソデブなんだよ。クソが。転移の方法はいろいろあるけどこれでいいよな。行ってこいや。あとお前、考えていること筒抜けだからな。神なめんな。」
クソ多くない?
というか感情の読めない瞳じゃなくてあれは感情を殺していた瞳だったか。。。
俺の異世界冒険はこんな最悪なスタートだった。