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だから、黒瀧 凛の嘘はバレる。6

それからとうとう言い合いを始めてしまった二人をなだめ、とりあえず千聖を部屋からだす。


「もう、信じらんない! 優馬はなんであんな子選んだのっ?! しかも、絶対今まで接点なかったじゃん!!」


「いや、とりあえず今何言ってもダメだろ…? おまえ、だから今日は帰れ」


「あー! 凛ちゃんの方とるんだ? もう知らないからねっ! おじさんとおばさんにもいっちゃうんだからっ! バカっ!」


千聖はプリプリとしながら家から出ていく。たぶん、アイツの性格上、今弁解したところで、話が頭に入っていかない…だから1度帰して、明日また話をしようと思う。


「はぁ~…とりあえず、もう1人…あのぶっ飛び系女子に一言言わなきゃな…!」


(いくらなんでも、やりすぎだ。てかいつから彼女になった?今日コクった?嘘ばっか並べやがって…っ! これでうまくいかなくなったら、どうしてくれんだ! マジで!)


俺はドスドスと音をたてながら階段をあがり、部屋のドアを開けた…と、同時にとてつもなくデカいため息が耳に飛び込んでくる…


「はぁ~…!」


ため息の方に目をやると、俺の勉強机につっぷして、脱け殻みたいになっている凛が飛び込んできた。


「あー、やっちゃったわ…」


「マジで、何してくれてんだよ、いつからおまえは俺の彼女になったんですか?」


「話だと…今日かららしいわよ…」


「いや、誰もokしてないんだけど…」


「私も告白すらしてないわよ…」


「「はぁ~…」」


二人でため息をはく。


「で、なんであんなこと言ったんだよ?」


「だって…はじめは咄嗟の言い訳だったんだけど…さっき楢橋さんが黒崎くんと仲良くしてるの思い出して…」


「まさか、おまえ…嫉妬から俺を彼氏にしたてあげたのか…?」


「正直後悔をしている…」


「当たり前だバカっ! おまえマジでふざけんなよ?! 俺は千聖におまえが彼女だと思われちまったんだからな?! 恋愛協定はどうしたんだよ! 何いきなりルートつぶしてんだよ!」


「そこは申し訳ないと思ってるわよ…!」


「いやいやいやいやっ! 申し訳ないと思ってんなら今すぐ撤回してこいよっ!」


「そ、それは無理よっ!」


「なんでだよっ! じゃないと俺が明日めんどくせぇだろ…っ!」


「お、女のプライドってヤツよ!」


「いらねぇよ、そんなもん! まるめて燃えるゴミにだしちまえっ!」


「なっ…! そんな言い方って…!」


凛はそこで言葉をとめ、怒りを押さえると、少し考える様子を見せる。そして、大きく息を吸い、吐き出してから真面目な顔で


「ごめんなさい…」


と、言ってきた。


「な、なんだよ、急にしおらしくすんなよ…調子…狂うだろうが…」


確かに、こいつはハチャメチャにぶっ飛んだ事をしたかもしれない、嫉妬して八つ当たりしたかもしれない。でも…たぶん、俺もこいつまでとは言わないが、少なからずあの状況に嫉妬したのも事実で、だからこいつの気持ちもわからなくはなくて…


(ひょっとしたら、ここに来たのが黒崎なら、俺もアイツに八つ当たりしたり、嫌な事を言ってしまうのだろうか…?)


なんて事を考えてしまう。


「はぁ…ま、とりあえず、明日の事でも話そうぜ」


「…え?」


「いや、凛がしたことに別に怒ってる訳じゃないんだ…いや、ちょっとは怒ってるかもだけど、よくよく考えたらさ、今日、俺は逃げたんだよ」


「…?ごめん、話が見えないんだけど…」


「ああ、俺がおまえに襟首捕まれる前、俺はおまえの知っての通り、千聖の恋に協力してたんだ…その時さ、千聖が…俺には絶対見せないような、そんな表情しててさ、俺…勝手に黒崎に負けたんだって思い込んじまってたって言うか…それで、俺は千聖が好きなのに、戦いもしないで…千聖、あの時すげぇ緊張してあがってたのに、俺はそんな千聖置いて逃げたんだよ…おまえはさ、違うんだなって…好きな人をとられないように戦う勇気があるんだな…って、今、そう思った…って、話なんだけど…」


凛は、俺の目をまっすぐ見たまま黙っている。俺は、なんか恥ずかしくなり、二人の飲んだ後のコップをおぼんにのせ、下に運ぼうと、部屋のドアに手をかける…と、


「いいんじゃない?」


「え?」


「別に逃げても良いのよ、むしろ、私は好きな人のために自分の気持ちを隠してでも協力しようとする方が、すごいと思うわ…私には、到底できないと思うもの……それに、アンタは恋敵とかじゃなくて、"自分と戦える人"なんだって、その…思ったわよ…?」



凛は視線を横にながしながら顔を赤らめ、そんな事を言う。


励ましてくれているのだろうか?


でも、元はと言えばコイツが余計なことを言ったせいで、今があるわけで…ってそれは野暮か…。


まぁ、なんにしても…


「おまえ、人の事あんま褒めたことないだろ?」


「んなっ?! 人がせっかく…っ!」


わなわなと震える凛に


「へたくそ」


と、一言だけ仕返しをして部屋を出る。直後、ドアにクッションのぶつかる音。俺はそのまま下へと降りて、シンクにコップをおき、おぼんをなおす。


「さて…これからどうしたもんか…」


さすがに、凛との事をこのままにしているわけにもいかない。まずは、明日…千聖の誤解をとこうと思う。


「戦える人…か…」


どれが正解なのかなんて分からない。いつだって好きな人には幸せでいてほしいと、俺は思う。でも、こっちを向いてほしいとも…


ひょっとしたら、正解なんてないのかもしれない。


凛も、俺も…お互いがお互いに、たどり着いたその先にしか答えはないのだ。


「なら、行動するしかねぇか…」


俺は、階段をあがり、さっそく凛に相談しようと部屋のドアをあける…すると、スマホをもって震える凛が視界に飛び込んできた。


「優馬……」


「どうした?」


「が…学生寮に、ここにいるのがバレちゃったかもしれないわ……」


「……ん? どういう事?」






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