そして二人は、その恋愛に失敗する。5
「ふふふ、優馬の秘密道具置き場は~…っと」
ヤバイヤバイヤバイっ!俺は部屋に入り冷静を装いながら、千聖に言う。
「別にエロ本とかねぇから、だいたいな、今のご時世エロはもっぱらオンラインなんだよ。とりあえず温かいモノでも飲もうぜ?外、寒かっ……」
ここまで言いかけて、先に部屋に来た千聖の視線の先に目をやる。
「ねぇ、なんでおぼんに二人分の飲み物…?誰か来てたの?」
「えっ?! いやっ…そ、それは…」
(oh my god?! マジかよ、やらかしたっ! くそっ! ど、どうする…?!)
「ほ、ほら、あれだ、家って下に飲み物取りに行かなきゃだろ? だから、何回も行ったり来たりってめんどうじゃん?」
「ふーん…」
千聖はそう言うと、ベッドに腰かける。
「よいしょ」
と、掛け布団から妙な声が…
「ふぁっ?!」
「え?」
おおおおお!? 待て待て待て待てっ! 凛さん何声だしてんのっ?! そこは、意地でも出しちゃダメなとこだからっ!
「今、布団から…」
「気のせいじゃね?!」
俺は咄嗟にデカい声をだす。
「うわっ、ビックリした…そんな大きな声出さなくてもいいじゃん……」
と言いながら、千聖は完全に布団を怪しみながら俺をジト目で見ている。
「怪しいなぁ~…」
「いや、全然怪しくないっ! むしろ怪しくなさすぎて表彰されるレベルだと思う!」
「なにそれ、意味わかんないんだけど……」
と言いながら、千聖は布団に手を伸ばした…。
「おまっ! やめっ!」
「エッチな本はここかーっ!」
――ガバッ!
訪れる静寂…そして、
「こ、こんばんわ~…」
視界に飛び込む凛の姿。目が点の千聖。
「……誰?」
最悪だ―――。
▽▲▽
それから、俺は何故か自室の床に正座させられる。
「えっと…千聖さん…?」
「あ、凛ちゃんはそこに座っといていいからね?」
千聖は、凛を俺の勉強机の方に座らせ、自分はベッドに腰かける。それから、「詳しく聞かせて」と言われるが、言えるはずがない……俺がおまえの事を好きで、しかもおまえに協力するとか言った翌日にはもう、自分の欲求に負け、あろうことか千聖の恋敵と結託してお互いの恋愛成就を目指した結果、とりあえずお近づきの印に、家からおまえの事を調べる協力の手助けをしているなんて…言えないッッ!!
「とりあえず、名前はわかったけど…優馬、なんでこの子を部屋に連れ込んでるのかな? しかも、おじさんとおばさんがいない時間帯で、私もまだ帰ってないの分かってやってるよね?」
「落ち着け千聖、これには訳が…」
「訳…?ふーん…じゃあ、言ってみなよ?私は一応、幼馴染みとして、優馬のおじさんとおばさんにも面倒見るように頼まれてるんだからね? だから、適当なこと言っちゃダメなんだから」
「えっと…その、凛とは…その」
「その…?」
俺が答えにつまっていると、凛がとんでもないことを言い出す。
「つ…付き合ってるの! 今日からっ!」
「……え?」
千聖の目が、さっきとは別のベクトルで点になっている…っておおおおおいっ?! 今、こいつなんて言った?
「は?…凛、おまえ何…」
「(アンタは黙っててっ…!)」
凛は目でそんな風に訴えてくる。
(いや、いやいやいや…黙れるわけねぇだろっ! いらん方向に物語が転がりだしてるからっ! むしろ転がりすぎて、俺の恋愛"起承転結"の起から"承転"飛ばして結まで来ちゃうからっ!! しかもバッドエンドだよっ!)
と、千聖が聞いてくる。
「そ…そうなの…?」
「いや、んなわけ…」
すると、このぶっ飛び系女子は…
「こ…事をしようとしていたらっ! 親が帰ってきたんじゃないかって言ってて!と、途中で…っ!だ、だからベッドにいて…!」
おい、おいおい、こいつマジでぶっ飛びすぎじゃねぇのか?!俺は凛を見る…と、顔を真っ赤にして目をクルクルとまわし、明らかに混乱している様子だ。
(ダメだーっ! こいつ頭回ってねぇ! だから今付き合ってるとかほざいたのか?! つか、なんで自分がベッドにいるのかの言い訳に必死になりすぎて、周りが見えてねぇ!?)
「事…?こ、事って…ま、まさか……ゆ、優馬?」
「いや、違うっ! 違う違う! 違うから、おまえが想像しているような、そんな"事"ではないからっ!」
「じゃ…じゃあ、どういう"事"、なのかな…?」
千聖の笑顔がひきつっている……っ! てか笑顔に影落ちてるんですけどっ?! 怒り心頭なんですけど…っ!そんな事を考えていると、凛が
「だっ、だからっ! 大丈夫(?)っていうか!私もこう言うの初めてれっ!?(?)」
いやもうこいつ絶対自分が何言ってるかわかってねぇよ、誰かこいつ止めてくれ…!
「初めて?! 凛ちゃん! そう言うのはちゃんと考えてからじゃないとっ! 今日付き合い始めたばかりなんでしょ?! は、早すぎるよっ!」
(早すぎんのは今現在の状況の転回だよっ!? 目まぐるしすぎるわっ! 新幹線もビックリするわ!! いや、ビックリしてんのはここにいる全員…っていってる場合じゃねぇ!なんだこれ、めんどくせぇぇえええっ!)
「と、とりあえず落ち着こうぜ、話がややこしくなりすぎだろ」
俺は、顔を真っ赤にして、あーでもないこうでもないと話している二人に言う。それから、結局二人分の飲み物を千聖と凛に渡して落ち着いてもらう。
「ふぅ…で、ようするに…その、凛ちゃんと優馬は付き合い始めた…ってことだよね?」
「いや、そうじゃな…」
否定しようとする俺の言葉を遮り、凛は言う。
「そうよ、き、今日…私が告白したの」
「は?…ハァアアっ?! 凛、おま…!」
俺の意見など聞かぬ存ぜぬでおかまいなしに、凛は続ける。
「だから、もうたかが幼馴染みの貴女は、そんなに優馬の事は気にかけなくていいからっ! こいつは、わ・た・し・の!彼氏だからっ!」
「え……」
千聖は面食らったような表情をする。だが、
「ふ、ふ~ん…でも、優馬はわ・た・し・の! 幼馴染みなので、私は今後も普通に接するから!」
「いや、千聖も何意地になってん…」
千聖も、俺の声を無視して続ける。
「それに、私はおじさんとおばさんにも優馬の事頼まれてるしっ!!」
「だから何よっ! 私は彼女なんだからっ!」
「か、関係ないよっ! いきなり優馬との関係性かえろみたいに言うのは、いくら彼女でも、図々しいんじゃないかな?!」
「な、なによ!」
「ふん!」
やべぇ…色々とめんどくさくなっちまった…