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九重 優馬は、告ってないのにふられる。1

――ずっと一緒だった。


ずっと一緒だったんだ。


出会ったのは幼稚園、ファーストキス(幼少期)もそいつで、小学生にあがっても、別に意識してギクシャクすることもなく、仲良く生活していた。


俺が、そいつを"女の子"だと完全に意識したのは、中学に入学した頃で、俺がその子に「一緒に帰ろう」と言った日、その子が「他の男の子に呼ばれてるから…」と言って、俺の誘いを断った日。


夕焼けに照らされる校舎の中で、そいつが、「好きだ」と言われているところをたまたま目撃してしまった。…その日以来、俺は千聖(ちさと)を"誰かにとられるんじゃないか?"と意識し始め…気づいたら"好き"になってしまっていた――――


―――それから数年後…


俺は、そんな幼馴染に今……



「ねぇ、お願い! 優馬(ゆうま)は黒崎くんと仲良いでしょ!」


「はぁ? なんで俺がおまえと黒崎の仲取り持つような事しなきゃなんねぇんだよ」


「幼馴染じゃん! お願いします! この通り!」



恋愛相談と言う形で、初恋の終わりを宣告されております。



『#死にたい』






◎そう言うことで、俺と彼女はその恋愛に失敗する。◎







―――結局、取り持つことになってしまった…。


(俺はどんだけへたれなんだ…千聖に頼まれると、最終的にいつも折れてる気がする…自分で自分が嫌になるのだが…これが惚れた方が負けと言うヤツなのかもしれない…)


「はぁ」


「なに?どうしたの?溜め息なんかついて、へへへ、嫌な事でもあるのなら、この千聖様になんでも言ってみなよ! 黒崎君との事のお礼に、何でも優馬の為にやったげるっ!」


「(嬉しそうな顔しやがって…)」


「ん?なに?」


「別に、なんでもねぇよ」


「そかそか、ならばよし!」


そんな話をしながら、家へと辿り着く。この俺の気もしらないで無邪気に「またね!」と手をふる幼馴染、名前を 楢橋(ならはし) 千聖(ちさと) と言う。身長は156cm、色白で薄い茶色のセミロングの髪、明るく誰にでも優しい事から学校の男子の中じゃ"天使"何て言われている。


笑顔で手を降り終えると、くるっとスカートを翻し、隣の家へと消えていく彼女の姿は、夕焼けに照らされて、あの時を彷彿とさせる。


「まぁ、天使とまでは言わないけど…」


その姿は、とても綺麗に思えた―――。


千聖が家に入るのを見届け、俺も自分の家に入る。ドアを開け

「ただいま」を言う。が、どうせ両親ともに仕事でいないと思うので、自分で続けざまに「おかえりー」とか言っちゃう。


とりあえずキッチンへ行き、冷蔵庫からお茶を取り出す。コップを取り出してお茶をそそぐとそれを一気に飲み干して、「くはーっ!」と言いながら、ターン!とシンクの上に勢いよくコップを置いた。それから今日千聖に頼まれた事を思い出して、若干鬱になる。


「ぁぁぁぁあああ!まじで俺は何やってんだ?!」


そのままリビングのソファーにダイブして悶える。


「好きな子が好きな人とくっつくように応援?! 正気か俺!? マジで何やってんだよおおお! ぐああああ! あー…まじどうしよ…」


ソファーの上で自分の無力さを嘆く。


「でも、あんだけ頼むってことは…やっぱ好きなんだろうなぁ…黒崎の事…あー…黒崎の馬鹿。前歯もげろ……むなしい…」


そんなことを考えていると、俺はいつの間にかうとうととしてしまい―――



―――「おい、起きろ」


「ん……? 飯?」


「いや、なんでだ。起きろ優馬、そんな所で寝てると風邪引くぞ」


「んぁ?…ああ、うん…部屋行く」


親父に起こされて、自室へと向かう。部屋でもうひと眠りしようすると、窓をコンコンとたたかれる。


「ったく、人の気もしらねぇで……」


俺はカーテンをシャッと開けて、窓を開く。


「なんだよ千聖」


「へへへ、こんばんわ~」


風呂上がりだろうか?めっちゃ良い匂いが風に運ばれてくる。


「はいはいこんばんわ、で、なんだよ」


「作戦会議をしようと思いまして」


「……なんの?」


「なんのって! 明日だよ! 黒崎くんとのことっ!」


「ああ、うん、それな」


(あああああやっぱマジなのかよ! くそっ! でも引き受けちまったしなぁ…)


「とりあえず、千聖と黒崎が顔見知りから友達になれるようにが一番だよな?」


「うんうん、そうだね! そこからじっくり攻めていかなくちゃだもんね!」


「あー…そうな」


(やっぱ好きなんだなぁ…何て言うか、本人からその手の話を直接聞くのってやっぱしんどいな…ちと、早めに切り上げるか…)


「てか、あれだ。俺ぼちぼち飯だし、とりあえず明日黒崎も誘って学校の帰りにでもどっか行こうぜ」


「ご飯まだだったんだ?…そっか、うん! わかった!」


自分で自分がいたたまれず、俺はそそくさと窓に手をかける。と、


「優馬!」


「あ?なんだよ」


「ありがと! おやすみ!」


その笑顔はすげぇ可愛くて…何て言うか、うまく言えないけど、たぶん…嬉しくて、なんか虚しかった。




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