転寝
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秋風に吹き付けられた雫が窓ガラスをガタガタと揺らしている…。
天井の板が犇めき、カラスが唸り声を上げ飛び去っていった。
畳7つ程の小屋の中に一人。小さなテーブルの脇にある、これまた小さな椅子に腰を掛け、うたた寝をうっている男が居た。
彼は画家である。
なに、そんな大層なものじゃないさ。街を歩いても1つとして買ってくれる客などいないどころか、布敷に広げても誰も盗みやしない。
おまけに商売の邪魔だと門前払いされる始末さ。
おかげでこんな廃れた家とも呼べない小屋の下に住み、部屋にはオイルの匂いが充満している。家があるだけありがたいってもんで、そこいらの人間には住めたもんじゃない。
だが、彼もまたこの状況に甘んじている訳ではない。
出来ることなら、この悶々とした状態から抜け出し、もっと淡々と生きていきたいと思っている。
―なぜ皆が普通に暮らしている中自分はこうなってしまったのだろう―
―私が悪かったのだろうか―
そんなことをつらつらと考えているうちに彼は疲れて寝てしまった。