03 冒険者ギルド
琥珀がまず最初に向かったのは、ラノベなどでお馴染みの冒険者ギルドだ。
門番に渡された手書きの地図には、教会だけでなく、街中の主要な施設やなんかも書き込まれていたので、その地図を頼りに目的地へと向かう。
地図に書かれた場所には黒い屋根に赤い煉瓦造りの三階建ての建物あり、その建物の入り口には、『冒険者ギルド:ラセルナ支部』と書かれた大きな看板がかかっている。
看板を読んで初めて知ったが、どうやらこの街の名前はラセルナと言うらしい。
ちょうど中に入ろうとしている3人組の冒険者の後に続いて、琥珀も中に入ってみる。
ギルドの中は想像と違って、意外と静かだった。シンプルですっきりとしたカウンターに、字が読めない人にも分かりやすい様にとの配慮なのか、イラストの入った案内表示がある。天井部分は入り口から3/1程が吹き抜けになっており、入り口から向かって右側が依頼などの受付、真ん中にある二階へと続く大きな階段を挟んで左側が素材の納品所や、消耗品などの販売スペースとなっているようだ。
琥珀は前の人の影から出て歩き出すと、一番手前にある登録者受付と書かれたカウンターの前に立つ。
カウンターの中には20代後半くらいの眼鏡の男性が座って書類整理をしており、琥珀が近づいて声をかけると、書類を捌く手を止めてゆっくりと顔を上げた。
「すみません」
「はい」
「冒険者登録をしたいのですが、未成年でも出来ますか?」
背後で冒険者達のざわついた声が聞こえた気がするが、琥珀は特に気にせず話を続ける。
「未成年の登録は、14才からになります」
「登録するにはお金が掛かりますか?」
「登録には大銅貨1枚の登録料が掛かります」
「ありがとうございました」
聞きたい事は聞けたので、さっさと退散しようとすると、受付の男性に呼び止められた。
「お待ち下さい」
「はい」
「未成年の方の登録には、原則として保護者の同意書が必要となります」
「そうですか……。もしも、保護者を既に亡くしている場合はどうすれば良いですか?」
「その場合は、孤児院の理事長先生から許可証を貰って来て下さい」
「? それは頼んだら誰でも作って頂けるような物なんですか?」
男性は驚いた様に少しだけ目を見開いた。
「もしかして、協会から保護を受けていないのですか?」
「はい」
「そうですか……。でしたら、登録者用の資格試験を受けて頂く必要があります」
「わかりました。もし登録する事になったらそうします。ありがとうございました」
聞きたい事は聞けたので、まだ何か言いたそうな男性をスルーして、今度は素材買い取り用のカウンターを目指す。
中に居たのは、30代ぐらいの厳つくて体格のいいスキンヘッドの男性だ。
「すみません」
「おぉ、買い取りか?」
「はい。登録していなくても大丈夫ですか?」
「未登録者は手数料として1割程税金が引かれるが、それでも良いならな」
「わかりました」
了承の返事をして、琥珀は街に向かう途中で拾った素材をカウンターの上に広げる。
「御願いします」
「ちょっと待ってろ」
そう言ってスキンヘッドの男はカウンターの下から木札を取り出して、琥珀に差し出して来た。
「鑑定が終わったらその札が振動するから、そしたらここに持って来い。引き換えで鑑定証と代金が受け取れるからな。それまではそこの売店か上の食堂で時間でも潰しておくと良い」
「わかりました、ありがとうございます」
受け取った木札をローブの内側にある胸ポケットにしまって、売店の方へ足を進める。
売店の中にある棚には、ファンタジー小説やゲームで見覚えのあるアイテムや、見た事の無い物まで色々と置かれていた。
奥の方には、武器や防具なんかも置いてあるみたいだ。
渡した量が多くはないからか、それほど待たずに木札が振動したので、琥珀は想像していたよりも強めに揺れる木札をポケットから取り出して買い取りカウンターへと向かう。
一応、あまり嵩張らなくてなるべく珍しそうな物を選んで持って来たが、鑑定ではいくらで売れるかまでは分からなかったので、あまり期待はしていない。
最悪、今日泊まる分の宿代だけでも稼げれば良い。
「おう、待たせたな。これが鑑定書だ」
そう言って渡された書類を確認すると、素材の名前とランクの横に買い取り金額が並んで書かれた一覧になっている。
「書いてる結果に不満が無いようなら、この金額で出すぞ」
「はい、大丈夫です。これでお願いします」
どれがどの金額かもそれが正しい金額なのかも分からないので、とりあえず頷いておく。
「ならこれが、買い取り金額の2万6480バルクだ」
「ありがとうございました」
カウンターに積まれた何種類かあるコインを、無造作にポケットにねじ込む。
(とりあえず、さっき通った広場で何か買ってみて、大体の金銭価値を確かめよう)
と思いながら、琥珀はギルドを足早に後にした。