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未知の海原  作者: 宵秋帶爲
此処は?
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第3話

いよいよ、物語が始まる!という感じです。


 1941年12月26日、大日本帝国北海道択捉島単冠湾。

 丁度、日を(また)いだ頃だろうか。伊藤少尉が優しい声で、私を起こしに来た。

 私はしばらく訳が分からず、寝床でうずくまっていたが、伊藤少尉の言葉で直ぐ起きた。


「緊急出航ですよ。」


 全く、訳が分からない。私は、着替えながらそう思った。

 艦橋に到着した。もう、ほとんどの士官は到着している。


しゅっこぉぉお(出航)よぉぉおおおい(用意)!!」


 艦長が、図太い声で狭い艦橋を(うな)らせた。

 艦長の号令の直後、すぐ後ろから喇叭(らっぱ)が聞こえてきた。出航の合図だ。


「両舷後進半速!」


 艦長が号令すると、操舵士(そうだし)が復唱してそれを実行する。


「両舷後進半速!」


 後ろの方で、何か重い音が唸りをあげている。赤城の艦本式タービンである、技本式タービンだ。懸命に、水を()き分けようと力を強めていく。

 すると、私の目に内火艇が(うつ)った。双眼鏡を手に取り、再度確認する。…やはり、内火艇だ。


180ひとひゃくはちじゅうど度に内火艇!」

「180度に内火艇!注意!」


操舵士が(たく)みに、赤城を操る。




 赤城率いる、第一航空艦隊は単冠湾を離れた。


「艦隊!輪形陣を組め!」


 艦長の号令により発光信号が放たれる。すると、艦橋の窓から見える艦たちは前へ行ったり、待機して後方に行ったりと忙しそうに動いていた。

 時間が経つと、赤城や加賀等の六隻の航空母艦を護衛艦が囲むようにして陣形が出来上がった。




 大海原(おおうなばら)は、静寂を貫いている。

 ……!唐突に、私は副長室に短剣を忘れたことを思い出した。腰に手を当てても、感覚はない。


「艦長。忘れ物をしたので取りに行ってもよろしいでしょうか。」

「直ぐに戻ってこい。胸騒ぎがする。」

「分かりました。」


 確かに。辺りは、暗雲(あんうん)が立ち込め、今にも雷雨が来そうだ。

 私は、一礼して艦橋を後にした。

 艦内は、談笑する下士官がいたり、いつも通り赤城を動かすことに尽力している者もいたりと、これから戦争が始まるなど微塵(みじん)も思わせない。

 副長室に来ると、素早く寝台の上に置き去りにされた短剣に手を伸ばした。

 短剣を握りしめた瞬間、副長室に伸びていた伝声管(でんせいかん)が震えた。


「副長!もし、これを聞いているなら、直ぐに艦橋に戻るんだ!!」


 艦長の声だ。だが、ここまで血の気の多い艦長など、見たことも聞いたこともない。一体、何があったのか?

 艦内の狭い通路を進んでいると、航空隊のパイロット達が頻繁に小隊単位で格納庫に走っていくのをよく見かけた。攻撃か?…こんなに早く真珠湾に着くわけがない。

 私は、妙な悪寒があることに気付いた。胸騒ぎがするのだ。いや、悪寒とも胸騒ぎとも違う。これは、()()()()()()()()……

 私ではなく赤城を、いや第一航空艦隊を包み込む何かがある。

読んでくださりありがとうこざいます!

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