95、終幕~エンドロール~
「お前が創った最高の世界で、最高の物語で、最高のエンディングってやつを俺が叶えてやるよ」
「最早、君が何を言っているのかを僕はまるで理解出来ないよ」
「簡単だろ? 俺はお前を最高に楽しませてやるって言ってるんだ、そしてお前は俺の願いを叶えてくれれば良いだけだ」
「何を叶えたら良いんだい? 当然ルールは破れないよ」
「今度の世界では、最後のイベントを達成出来る人数を二人にして欲しい」
「それは、どういう事?」
「今度の世界は、俺とチイユがイベントを達成して、3つの選択を受ける」
「うん、出来るよ、今回は一人って設定だったけど、それ位は出来るよ、で? 何を選ぶんだい?」
イフが興味を引かれたのか、少しだけ顔をあげて俺に訪ねる。
「秘密だよ!」
「って、言いたい所だけど、俺達は“神”を選ぶ」
「それは…… ずるいな……」
「だろ!」
イフが俺の腕の中で少しだけ泣いている気がした。
当然、四桁の年齢の見た目は少年の中身はじいさんが、そんな事位で泣くとは思えないけど、なんだか、そんな気がした。
「じゃあ…… 頼んだぞ!」
「あぁ! もちろんだとも、とてつもなく壮大で、面白くて、最高の舞台を用意してあげるよ」
俺を付き飛ばしイフは続ける。
「でもね、死んでも知らないからね! そして今度こそルールが破れないように、徹底的にジンの事を監視しておくからね」
「俺もルールを破らずに、お前の創った世界を正々堂々攻略してみせるぜ!」
「もう一度言うけど、死んでも知らないからね! 死と言う絶対ルールは僕でもどうにも出来ないからね!」
「俺はお前が創った世界を一度は攻略したんだぞ? 絶対に二度目の世界も完全攻略してやるから、ここで独りで寂しく待ってろ!」
「フン! 泣いたって知らないからね!」
「俺が泣いた所を見たことあるのか?」
「あるね! いっぱいあるね!!」
「嘘を言うんじゃねーよ! あ、ズリーぞ!!」
俺が、イフを突き飛ばそうとしたら場所を変えられ、強制的に七三の髪型にされた。
その光景が分かるように、わざわざ目の前に鏡を用意された。
その鏡が俺を包み込む。
「ちょっと待ってて、すぐに次の世界を用意するよ」
それが俺が聞いた、ここでのイフの最後の言葉だった。
鏡の中は、次の瞬間真っ暗闇に包まれた。
――
毎度同じ事だが、真っ暗な世界である程度の時間が過ぎると、そこから先はどれだけ時間が過ぎたのか、まるで分からない。
さらに、眠気や空腹など全ての感覚が無くなった状態じゃ尚更だ。
そしてこれも毎度突然の事だ。
暗闇が終わる。
目の前に、俺を包んでいたものが全てモニターのようなモノに変わる。
どうやら、複数のモニターに囲まれているようだ。
その映像では、俺が全てのイベントを制覇して、全ての“神の宝具”を揃え、エドの国へと帰還する光景が映されていた。
俺の横にはチイユが一緒にいる。
その姿を見つけたチュウタが騒ぎ出すと、次から次に人々が感動の様子で出迎える。
空には綺麗な夕暮れに、輝く雲が“COMPLETE”と形作っている。
城から出てきたイエーミュがチイユの存在を訪ねて来るが、説明すると悲しそうな表情をしてはいたが、納得してくれていた。
“神の翼”で、この世界で出会った全ての人々をエドの城の前に呼び出す。
皆が俺のイベント完全制覇を喜んでくれている。
その晩は大いに盛り上がり、翌朝城の外壁を見ると大きな垂れ幕に“勇者の帰還”と書かれていた。
少し肌寒い朝靄の中チイユと、エドの城下町を歩いている。
エドは、チュウタの頑張りで、すっかり俺達が居た世界のように近代化が進んでいた。
色んな見た事のある飲食店に、コンビニ、自動販売機まである。
そんな光景を見てチイユが兄の事をからかい笑っている。
「クチっ」
チイユが可愛らしいくしゃみをすると、少し寒かったのか俺の身体に密着して冷えた身体を暖める。
チイユの温もりが、香りが俺に伝わる。
全てモニターで見た光景だ。
それにも関わらず、俺はそれら全てを実際に体感しているように感じていた。
再びチイユがくしゃみをすると、それと同時に世界は再び暗転した。




