90、白衣が語る真実について
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最初に案内されたのは、大きな鉄の扉だった。
その先は中央に縦長い穴が開いて周囲を鉄の柵で囲った巨大な空間だった。
穴の先はどこまで行っても地面が見えない。
下には沢山の階層があり、各階層には真っ白な4畳程の部屋が沢山あり、その一つ一つにベットがあり、一部屋につき一人ずつがベットに横たわり、沢山の機械に囲まれ、所々で白衣を着た人が何やらバインダーに挟んだ紙に書き込みを行っている。
横になった人々の身体には、特に頭部を中心に沢山の機械が取り付けられている。
「さっきまで君もあんな状態だったんだよ」
喉の奥に唾が引っ掛かり上手く飲み込めない。
違う扉から一旦外に出て、白衣の男に案内されるままに、色んな機械や部屋を案内されたが特に説明は無く、最終的に中庭のような所へと案内された。
「ここは、楽園と呼ばれる地下に造った中庭だ、その椅子にかけてくれ」
白衣の男の言葉を受け入れられ無かった。
空は高く青く、風は気落ち良く、本当に外に出た感覚と違いが分からない。
これがまだ地下だと言われても感覚が理解出来ないでいた。
「それでは、全て話すが、その前におめでとうだ」
「あ、ありがとうございます」
「そんなに畏まらなくても良いよ、ゲームの中の様に振る舞ってくれて構わない」
「ゲーム?」
「そう! 君が今まで居た世界、フルダイブ型MMORPG“WORLDEND”の世界の様に」
白衣の男の声が耳に届くのと同時に俺の頭の中に、膨大な量の記憶が流れ込んで来る。
自然と一筋の涙が流れ出したが、俺にはこの涙の理由が分からなかった。
「チイユは? 他のやつらはどーなったんだ?」
「まだ、皆ゲームの中だよ」
「何が目的なんだ?」
「このまま、質問に答えて行く形式の方が良いのかい? もちろん君が質問sるう事には全て答えるが、聞かれない事は良い忘れるかもしれないから、出来たら順を追って説明したいんだが」
白衣の男が身体の正面で指をクロスさせ俺の瞳と光を交わす。
「俺の…… 俺の、聞いた事だけに答えろ!」
「それでこそ、英雄ジンさんですね、分かりました何が聞きたいんです?」
「お前達の目的はなんだ?」
「二つに分けて説明しますね」
白衣の男の視線は俺の瞳を真っ直ぐに捉えて外さない。
「一つ目は、このフルダイブ機能の実験と検証です、二つ目に何の為かと言うと、君のように重症を負った患者や、末期ガン患者の治療と回復の為にこのシステムを開発したんだよ」
「どういう事だ、もっと詳しく話せ」
「人はね、皆時間という感覚に縛られているんだよ、その時間の経過で病が悪化したり回復したりするんだが、このフルダイブ機能は体内の時間の流れをコントロールして、治癒の時間を長くして、病の進行する時間を短くする事で、どんな病気でも完治してしまうんだよ」
俺は、チュウタの部屋で身体を刺された感覚を思い出す。
そう言えば、最後に見た男はこの白衣の男だったような気がする。
不意に刺された場所を確認するが、痛みどころか、傷跡も見当たらない。
「そう! 君は自分の身体で実感してるんだよ」
「なぜ、俺達にこんな事をしたのかは理解した、それで他のやつらはどうやったら目覚めるんだ?」
「君と同じで、自ら最終イベントを迎えてあの扉を抜ける事でしか目覚める事は出来ないんだ」
「傷が、病が完治した時点で叩き起こせば良いじゃねーか!」
俺が椅子から立ち上がると、男は絡めていた指をほどき、背もたれにゆっくりと体重をかけ足を組んで話を続けた。
「それは出来ない」
「どーしてだよ!」
「あの機械は時間を管理してるんだ、それを強制的に終わらせると、身体は数百年の時間を経過したように灰になって消えて行くんだ」
「そこを何とかしろよ!」
「だから、こうやって試験を重ねてるんだろ!」
男の声色が変わる。
今まで優しく語りかけていた男の表情が低く高圧的になる。
「悪かった……」
俺は、白衣の男の真剣な表情と、最後まで俺の瞳か外れる事が無かった視線に負けて、再び椅子に腰かける。




