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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
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89、白い部屋と現実の部屋

――


そこは、何度か見た夢の光景だった。

床も壁も天井も真っ白な部屋、青い髪の少女が俺の隣に座っている。

今ならその少女がチイユだと分かる。


チイユが俺に何かを話しかけてきているが、声が、音が聞こえない。

こちらの表情など関係無しに、チイユは何かを話し続けている。

俺からは何も話して無いハズなのに、まるで会話を楽しんでいるように笑っている。


「バイタル、安定しています」

「まもなく目覚めます」

「最初の到達者です」

「思ったよりも早かったな」


声がしっかりと、どこかから聞こえたと思ったら、白い部屋が突然に暗転したように真っ暗になる。


「チイユ……?」

「反応がありました!」


俺の声を聞くなり、さっきまで頭の中で響いていたような声がハッキリと耳に入ってきた。


俺の瞳に閉じている感覚がある。

恐る恐るゆっくりと瞳を開ける。

再び眩しい光が瞳に飛び込んでくる。

ボンヤリと複数の人影がある。


何かに横たわっているのか、皆が俺の事を見下ろしている。


「おめでとう! 君は初めての生還者だよ」


目が光に慣れて来た所で、一人の男が俺にそう言って手を差し出した。

俺は若干の迷いを残しながらもその手を掴む。


「どういう事だ?」

「そんな事より、身体に痛みは無いかい? 違和感を覚える所は無いかい?」


俺は、男の言葉を受けて、指の一本から全身に至るまで確認するが、どこにも違和感は無い。


「……あぁ、大丈夫そうだ」

「そうか、良かった! 動けそうかい?」

「多分、大丈夫だと、思う」

「よし! じゃあ、行こうか!」


男の手に引かれる形で真っ白なベットから起き上がると、身体中についているおかしな機械を取り外し立ち上がった。

その光景を見た他の複数の人々が完成を上げている。

まるで、子供が初めて立ったときのような反応だ。


「こっちだ、私について来てくれ」


俺は、白衣の男について部屋を出た。

部屋の外は、真っ白な廊下が続く。

ボヤけたままの頭で白衣の男に訪ねる。


「チイユは? 青い髪の少女はどこに居るんだ?」

「そうか、まだ記憶は混乱してるんだね」

「……どういう事だ?」

「まぁ、落ち着いてゆっくりと一つずつ説明するとして、取りあえずはゆっくりと休むと良いよ」


俺は一つの部屋に案内された。

そこは、今までの無機質な真っ白な空間とは異なり、どこか高級ホテルの一室のように洗練された家具や、豪華でシンプルな壁紙が張られた暖かみのある部屋だった。

豪華な雰囲気を醸し出す家具の中でも一際存在感を放つテーブルの上に食事の用意がされていた。


「この部屋で少し寛いでいてくれ、準備が整ったら声をかけるから」

「そんな事より、聞きたい事が……」

「安心しなさい、ここには君を傷つけるモノは何も無いから」


白衣の男が俺の急く気持ちを見透かしたように、落ち着かせる。

細かい装飾が施された落ち着いた雰囲気の椅子に腰かけると、俺の落ち着いた様子を見届け白衣の男は部屋を後にした。

その姿を見送ると、猛烈な空腹に耐えかねて、目の前の食事をゆっくりと口に運び噛み締める。

厚く切られた肉の旨味が口いっぱいに広がる。

本当は米が食べたかったが、用意されたパンを口に運ぶと小麦の香りが口いっぱいに広がり喉の奥を伝って胃に入って行くのを感じる。


食で満たされたのを見計らった様に、メイド服を着た女性が食後のデザートを部屋へ運んでくれた。


「ごゆっくりどうぞ」

「ありがとう」


メイド服を着た女性を見送り、デザートまで一通り堪能してフカフカのベットに横になる。しかし、目を閉じる事はしなかった。

目を閉じる事が不安だった。


しばらく天井を眺めていると、白衣の男が戻ってきた。


「少しは落ち着いたかい? 準備が整ったのであれば、行こうか」

「どこに?」

「混乱する君に全てを説明しようかと思ってね」


俺は、一度大きく背伸びをすると、男の後ろについて部屋を出た。

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