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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
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87、世界の終わりを

俺が戸惑いの中、怒りに任せて魔力を迸らせると、災厄と希望の神は悲しそうな表情を浮かべ、二本のとてつもなく長い剣を造りだし、この空間を縦横無尽に斬り裂き、すべての物理攻撃、魔法攻撃を無効かしていた空間が崩壊して行く。


その剣戟は獣はもちろん、下の階層にいた人々を無惨に斬り裂いて行く。


「ジン様よ、お前が悪いんじゃからのう、地獄の苦しみを今一度味わうが良い」

「ちょっと、待てよ! 何を言ってるんだ!! おい、俺が召喚したんだろ? だったら俺の言う事を聞けよ!!」

「…… 無理じゃ」


その瞳からは、細く、しかし確かな一筋の涙が溢れ落ちていた。


そこから先の光景を俺はただ眺める事しか出来なかった。

最上階で起きた悲劇は、下の階層へと伝染して行く。

この塔に居た人々に、獣達に等しく、均等に死が訪れる。

安らかなる一瞬の死では無く、もがき苦しみ苦痛の後に訪れる死だ。

ただ一人、俺という例外を除いて。


泣き叫ぶ声が塔を満たした頃、塔は完全に崩壊し、砂煙と共に俺は気付くと塔の外へと出ていた。


「ジン様よ、これで、終わりと思ったか?」

「何だよ、何をするって言うんだよ」


塔が完全に崩壊するまで、俺は一切手出しをすること無く、その事象を見守っていた。

そう、俺が恐れる事が成されない事をただただ願っていた。

どこかで、この金髪の少女と分かりあえた気になっていた。

しかし、それは気のせいだった。


この世界の事なんて何も知らないし、俺がどうしてこんな世界に来たのかなんて分かるハズが無い。

ましてや、神などと名乗る少女の事など知るハズも無かった。


俺の中の奥底から込み上げる途方もない不安を圧し殺すように、災厄と希望の神が持つ、バカみたいに長く伸びた剣を掴み、抗った。


「この剣が何を成したのか、ジン様よ、お前は見ていなかったのか?」


その言葉を理解した時には既に俺の腕は消滅していた。

紛れになり、地面に転がり落ちる。

信じられない量の血液が両腕が有った場所から吹き出し、地面を汚した。


痛みはある。

しかしそれ以上の不安が俺を包む。


さらに剣は長く伸び、剣の尖端は見えなくなった。


災厄と希望の神が二度三度腕を振ってみせる。

何が起きたのかは分からない。

しかし、身体が、魔方陣と繋がった心が理解した。


あの剣の先で何かが斬られたと。


それがとても大切なモノだと直感が不必要に俺に知らせる。


「ジン様よ…… また、お前に会えたら、会える事があったら、その時は“ごめんね”と言いたいのう」


災厄と希望の神の言葉に胸が震える。

涙があふれでる。

血液があふれでる。

命が削られる。


「これは、妾からの最後の施しじゃ」


俺の腹部から魔方陣が空中に展開されたと思ったら、綺麗に砕け散った。


何が起こったのかが理解出来ない。


続けざまに、右手の甲の魔方陣が空中に勝手に展開されて行く。

その魔方陣は俺を包み込むと、綺麗に元通りに俺の腕を復元し、暖かく輝くと“さようなら”と俺の心に言葉を響かせ暖かく燃えると、砕け消えて行った。


身体を包む金色の光が弱まる。


俺の中から全ての大切なモノが消えて行くのが分かる。

その流れに抗う事が出来ない。


「ジンさん! こっちっす! 早く! こっちに来るっす!」


どうしてお前がここにいるんだ?

どうしてお前はいつもそうやって、俺の側にいてくれるんだ?

もう、こんな奴見放せば良いのに……。


「全ての伏線を破壊してでも守りたいモノがあるなら! ジンさん! この手を掴むっす!!」


「……チイユ」


崩れ行く空間。


まるで、今まで普通に見ていたテレビが歪み、砕けて行くように、全ての景色が崩壊して行く。


こんな終わりを誰が予想できた?

俺が何をした?

頼む、誰でも良い、誰か教えてくれよ……


「っす! 全てが手遅れになるっす! お願いだからジンさん、オイラの手を握るっす!!」


チイユの声が歪んで行く。

歪んだ空間に、まるで剣筋を通したように亀裂が入り崩壊して行く。

地面のその先には空が広がっている。


昔、聞いた事がある。


この世界は平らなのか、丸いのか。

天が動いているおんか、地が動いているのか。

その答えは、誰でも知っていた。


そう知っていた。


誰かにそうやって教えられたから。

誰かが試しに世界を一周してみたと聞いたから。

それが世界の常識だったから。


皆、世界は丸く、繋がっていると知っていた。


だが、本当にその事を確かめたモノはどれだけいたのだろうか?

毎日、ただ、ダラダラと同じ生活を繰り返していただけの俺には当然確かめる術は無く、その事を知っているだけで満足していたし、そうでは無いと熱心に語るモノがいれば、拒絶しただろう。


しかし、今、俺は、確かに体感している。

地面が崩壊し、その先には空が見えている。

即ち、この世界は丸などでは無かったという事だ。


平らで、端まで行けば引き返すしか無い世界だという事だ。

そうでなければ、地面の先に空があるわけが無い。


「ジンさん…… 助けて…… っす……」


チイユの一言が、今までの全ての出来事を上書きした。

俺は何を考えていた?

世界が丸いか、平らか?

空が動くか? 地が動くか?

そんな事はどーでも良い。

そんな愚かな俺が、ただ一つ確実に、確かに理解している事がある。


それは、いつも自分の事よりも俺の事を考えて、何よりも大切な何かを守ろうと必死で命を燃やす姿が美しい、青い髪の少女の事が誰よりも愛しく、何よりも守りたいという事だ。


俺は、力強くチイユの小さな手を握りしめた。


チイユが好きだ。

そんな気持ちを、その時初めて心から素直に受け入れる事が出来た。


「“神の翼”っす!」


崩壊する世界で俺達は、眩い輝きに包まれた。

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