85、最上階の果てに
外は昼夜関係なく常に一定の明るさを保っている。
これもダンジョンの七不思議を言う所だろうか? 実際に七つあるのかは知らねーが、寝て起きて外の明るさが変化無しというのは大変気持ちの悪いモノだ。
外の兵士が話をしているのが聞こえて来た。
彼等曰く、ダンジョンは命がけだが、この一定の明るさのせいで、気が狂うのを増長しているらしい。
何階まであるのか分からないダンジョンで、あとどれだけ壮絶な戦いをしなければいけないか想像出来ない人々にとって、体力的にも、精神的にも限界なんだろう。
しかし、俺達にはそんな事関係無い。
ここまで10階層制覇してはいるが、全く苦労した感覚は無い。
例えて言うなら、夜目が覚めて、トイレに行きたくなる位の煩わしさだ。
それよりも気になる事がある。
なぜ、チイユが持っているはずの神の剣をエンディが所持しているかという事だ。
一晩泊まった無人の民家に備え付けられていた、掛流しの温泉に寝起きにゆったりと浸かる事にした。
風呂から上がると、テーブルの上にパンとスープが用意されていた。
これは、カゲロウの仕業か? と、疑問を抱きながらも、調度腹が減ったので、空腹を満たした。
ゆっくりと着替えをして、満を持してエンディを訪ね、彼が泊まっているであろう建物を訪ねたが、既に出たあとだった。
さらに上層階を先行して調査をしている部隊から緊急の連絡が来た為だと言うことだったが、俺はこれで確信した。
何か俺に聞かれたらマズイ事があるか、話したく無い事があるという事だ。
そうでなければ、俺を叩き起こしてでも同行させるハズだし、何よりもあんな時間稼ぎの朝食を用意するのには無理がある。
しかし、こちらは睡眠と、休息と、朝食をとって準備は万端だ。
エンディは、昨日から神の鎧を来たままで、魔力消費も著しいハズだ。
“金塊の暴食”
俺は、百階だろうと何だろうと、このダンジョンの事など関係無く、エンディと決着を付ける為だけに帰り道の無い、使いきるしか方法が無いスキルを発動させた。
さらに、万が一に備えて保険も用意している。
俺は全開で魔力を迸らせ、一気に塔を駆け上がった。
道案内は、エンディの宿泊していた建物に居た奴に頼んだ。
なぜ、エンディが正しく上層階へと続く階段を把握していたのか、この男の案内で理解した。
簡単な事だった。
上がった所から一番遠い所に階段がある。
つまり、正方形に近い建物で、上に出口があれば、下に入り口があるという事だった。
俺は、案内役の男を守りながら、襲い来る獣達を瞬殺しながら一気に上りきった。
そこは35階層だった。
意外と低い所に最上階が設けられていた。
既に金色の扉が出現し、その中にエンディが入った後だった。
知らせというのは、最上階が分かったといった所だろうか。
さらにそこに至るまでの獣の情報があるのであれば、俺を置いても一気に駆け上がる自信があったんだろう。
なぜなら、俺も同様にここまで何の苦もなく上りきったからだ。
金色の扉の前でエンディが出てくるのをひたすらに待った。
待つ意外に方法は無い。
一度に扉の中に入れるモノは一人だけ。
さらに一度入ったら出るまでは扉は消えず、外からはいかなる方法を持ってしても中に干渉する事は出来ない。
これが、ルールであり、ゲームであればそれで納得出来るが、現実に目の前で起こっている事に関してそのまま、それがルールだがらですよと納得出来るほど俺は出来た人間じゃ無い。
スキル、魔法を駆使して扉の破壊を試みる。
待つ事は苦にならないが、何もしないという分けにもいかない。
しかし、やはりと言うべきか、扉には掠り傷一つつかない。
「出てこい! エンディ!!」
俺の声が虚しくダンジョンに響く。
これより上に行く階段は無い。
道案内役の男は、俺の溢れ出る魔力に恐怖で腰が抜け、這って俺から少しでも遠ざかろうと必死だった。
俺も時限式のスキルを発動しているからには、悠長に待っている分けにはいかない。
そんな俺の状況が分かっているのか、いつまで待っても扉は開く事は無かった。
魔力は消耗し、次第に身体を纏う光が弱まって来た。




