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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
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83、第一階層へようこそ

真っ黒な世界。

影の中だと言うのにこんなにも現実味を帯びている事があるだろうか。

そもそもこの世界が何なのか、そんな事はもとからどーでも良かった。

元の世界に若干、僅かに、若干の心残りはあるが、さほど未練も無い。

だから、こんな世界がどーなろうと良かったが、こっちの世界に来て沢山の人達と出会って、それなりに大切に思うモノも出来た。


元の世界では、俺の力なんか、どーせ誰も期待も歓迎もしていなかったが、こっちの世界では、何て言うか、居場所がある。

そんな世界をどーでも良いとか、もう言う事が出来ない。


世界を旅した事で見聞が広がるとはこういう事なんだと、この歳になって初めて旅をして少しだけ理解出来た。まぁ、異世界なんだが。

だから何が言いたいかと言うと、こんな世界でも今の俺にとっては大切な世界なんだ。


影から出た俺は驚愕した。


そこは見覚えのある森だった。

確か“幻想の森”だったか。

しかし、俺の記憶にある森とは少し異なる。

幻想的な湖にクネクネと曲がった木々、そこまでは良い。

それらは、幻想の森と言うに相応しく、木々を覆う葉は煌めき、湖は透き通った綺麗な湖で、その周辺を光る虫が飛んでいた。


そんな面影は全く無い。


曲がりくねった木々は健在だが、その全てが黒い石の様に変質している。

湖の水は、墨汁かイカスミでも大量に流した様に黒く濁っている。

虫は巨大になっていて、次々に俺達に襲いかかってくる。

幻獣の類いと遜色無い強さだ。


カゲロウは俺を外に出すと急いで影へと潜った。


周囲には人の気配が無い。

とりあえず、真っ直ぐ奥へと進む事にした。

最後に戦ったのはいつだったろうかと思う程に、長い事エンディの所で世話になっていた気がする。

この変わり果てた森に不安を覚えながら、森の奥へと急いだ。


「やぁ、待っていたよ、それでは行こうか」

「行くってどこに!?」


森の奥には見慣れない塔が立っていた。

塔というにはあまりにも大きく、小さな町がそのまま上に伸びたような、凄まじい規模、大きさの塔だった。


「これは何なんだ!?」

「何って、ダンジョンだろう、見たら分かるだろうに、何を言ってるんだ?」


“神の鎧”を身に纏い、完全戦闘体制のエンディが俺に微笑みかける。

微笑むと言っても、金色の兜を被っているから顔は見えないんだが、声色だったり雰囲気で微笑んでいるのが伝わってきた。


「てか、二人で行くのか!?」

「二人? では、無いよ、既に下見に多数の仲間が向かっているし、君の影には、カゲロウが居るからね」

「なーんだ、そっか…… って!言えるか!! 説明しろ! 詳しくだ!」

「ジン君、君には必要無いよ、私はイベントに力を貸して欲しいと言った、そしてこの塔の制覇がイベントだ、だったら、君は大人しく私に力を貸せば良いんじゃないか?」

「確かに、そうだが、しかしよー」

「意見は無いな? では、行くぞ!」


塔の扉は錆びており、一度入ると誰かが塔を制覇しないと出られないという事らしい。

当然、その扉を通る時にそんな事は知らない。

知ったのは、暫く後の話だった。


第一階層は既にエンディの仲間が制圧していた。

仲間が先に入ってるとは聞いていたが、こんなにも入っているとは思わなかった。

聞けば、この塔で何年も生活出来るレベルの人達がこの塔に入っているらしい。その数、数千人。

家畜や、野菜の種なんかは勿論、料理人や、農夫に音楽家や、大工に鍛冶屋、商人など、本当に一つの村が出来上がりつつあった。

聞けば、スマホゲームでもこのイベントを達成する為には数年を費やしたという事だった。

しかも、あと少しで塔を制覇出来るという時にスマホゲームにはアクセス出来なくなり、気付けば、皆この異世界へと来ていたという事だった。

だから、今回は万全の準備を整えこの塔へと挑むという事だった。


「これはエンディ様!!」


一人の大工がエンディに気付くと、第一階層の人々がエンディを拝み始めた。皆、両ひざをつき、両腕を地面につけている。


「ここでは、そう言うのは良いから、皆作業に励んでくれ」


エンディが腕を一振りすると、皆人外の力を得たように働きだした。


「ジン君、最前線へと向かうが、準備は良いか?」

「良いも、悪いも、こんな所に何年も閉じ込められる分けにはいかねーんだよ! それじゃなくてもシンエツ共和国で無駄に時間を過ごしたんだからな!」

「分かった、分かった、分かったから、そんな急ぐな」

「急がねーから早く案内しろよ!」


第一階層の人々は、俺がエンディに指図をする様子に怯えた様子で、それでいてこちらに気付かないように一生懸命努力している。

その様子が可笑しくて、思わず笑ってしまった。


「余裕そうで良かったです、ではこちらへどーぞ、ジン君」


エンディは、女性でも案内するように手を差し出すが、俺はその手を払い除けて勝手に先を歩いた。


「そっちは違いますよ!」


だろうな、適当だからな。

俺は、何を返す分けでも無く、エンディの後ろをついて歩いた。

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