表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
83/96

82、怠惰な日々を

「なぁ、スロウ」

「私の事はスロベイで構いませんよ」

「スロウ、俺はどのくらいここに居たら良いんだ?」

「あなたという方は意外と頑固ですね」

「どれくらいここに居たらいーんだ?」

「そうですね、1年位でしょうか?」

「げっ、そんなに居なきゃなんねーのか?」

「そうですが、そうですので、その間は退屈をしないように私達がお相手致しますので」

「当然チイユ達は無事なんだろうな?」

「はい、もちろんでございます、今頃要塞都市クリオネでヒビキ様達とお会いしている頃では無いでしょうか」

「もちろんなのに、そこから先が曖昧なのは何でだ?」

「私達シンエツ共和国は、要塞都市クリオネと和平交渉を行っておりますし、何より今はジン様が私達に協力してくれる事が最優先でございます、その辺は心得ているつもりですが? それでも心配という事であれば、情報収集に長けたスキルを保有している者がおりますので、探らせましょうか?」

「いいや、とりあえずエンディの事は信用している」

「あら、それは、それは、エンディ様が聞きましたら、さぞかし喜ばれる事でしょう」


紺色の切れ長の目が嬉しそうに柔らかく丸くなる。

それもそうだな、俺が敵にならないようにこんな待遇をしてくれているという事が本当であれば、わざわざ俺を怒らせる事や、ましてや俺を敵に回すような事はしないだろう。

そんな事は分かっているが、不安を全て拭う事は出来ない。


「10日後に……」

「スロウ? どーした?」

「10日後に、エンディ様は要塞都市クリオネへと赴き、現状の報告と、今後の施策についてヒビキ様と会談をされる予定なのですが、この事はジン様には絶対に伝えてはいけないという事でしたので」

「それで、どーして言う気になったんだ?」

「つい……」


“つい”て、こいつ本当に大丈夫なのか?

頬を赤らめ、自らを律する姿は普段の印象から想像も出来ない程に可愛らしいが、そんな事に気を取られている場合では無い。


「だったら、その会談に同行する!」

「……やはり、そうなりますよね」


――


「絶対にダメだ!!」

「だったらお前の誘いを断ると言ってもか?」

「そんな事位で断るんだったら、最初から断ってるだろ? 明日の会談の段階で君がいる事事態が最大の障害だという事を、賢い君だったら理解してくれるだろう」


確かにその通りだ。

俺をネタに、要塞都市クリオネを支配下に置くのであれば、その場に俺が居たら、交渉そのものが破綻しかねない。


「だったら、こっそり着いて行っても……」

「ダメだ! ダメったら、ダメったら、ダメだ! 絶対にダメだ! 分かったら、大人しく市街地を観光でもして来てくれ」

「分かったよ…… あぁ、スロウが全部喋るからダメなんだからな」

「スロベイ!」

「申し訳ございません……」

「それから、ヒビキとその兄妹はどーでも良いけど、チイユや俺の仲間に手を出したら、絶対に許さねーからな!!」

「ジン君、安心して貰って構わないよ、私は、この世界で最大の障害はどんな大国よりも君だと認識しているからね、その障害を事前に回避出来るのであれば、当然それを最優先で考えるよ」

「分かってくれてるんだったら良いけど」


若干不満は残るが、他人に、特に自分より優れた人間に認められる事なんか全然無かった俺は、この時、俺の選択によって何が起きるかなんて理解していなかった。


何もやらずに、誰かに何かを委ねるのであれば、起きたその結果にさえも責任を持つ事が出来ないと俺はこの後酷く後悔する事になにるが、何も知らないこの時の俺は、悠長にシンエツ共和国での暫くの休暇とも呼べる怠惰な日々を過ごす事になる。


まず、朝から目覚める事は無い、昼過ぎまで寝てる事が殆どで、たまに夕方まで自室から出る事も無く時間は無為に過ぎて行った。

部屋には、いつも違うメイドが来て、横になるときはいつも膝枕をしてくれた。

当然の様に、それ以上の事も望めば可能だという事だったが、そんな気にはなれず、膝枕をして貰うに止まった。


昼過ぎから、長い風呂に入る。

まずは身体をメイドに洗って貰い、そこからは風呂に浮かべた酒や料理を堪能する。

少し酔いが回って来た頃風呂から上がり、王都を散策する。

散策の際には、屈強な兵士と数名のメイドが同行してくれた。

街の人々は、俺達の姿に気付くと、まるで芸能人にでも出会ったようにもてはやしてくれるが、同行する兵士の圧力のお陰で騒ぎが大きくなりすぎる事は無い。


朝方眠くなったら寝る。

朝日が上がっている事なんて日常茶飯事だった。


金は使い放題、城にあるモノも使い放題。

そんな毎日にも飽きてきた頃に漸くエンディが、イベント達成に向けて力を貸して欲しいと言って来た。


「チイユ達には手出しして無いだろうな?」

「あぁ、約束するよ」

「だったら行こうか?」


俺がそう言った途端に足元の影が大きく口を開き俺を飲み込んだ。

そう言えば、この国に来て以来、かなりの時間をここで過ごしたが、カゲロウの姿を一度も見ていない。

見てないと思ったら、もしかしてずっと俺の影に潜んで監視していたのか?

だったらご苦労な事だが、俺は約束は守る。


エンディが守ると言うのであればだが、その結果がまもなく訪れる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ