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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
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76、救われる権利

「…… “黄金天使(ゴールドエイジ)”」

「神! 何を、ををを、何をされ、魔力が全て全て持って行かれま、す!」

「ルーディー、10秒耐えろ」

「っ!? 神からの天命とあれば、命にかえても!!」


俺に触れスキルを発動しているルーディーの身体が屈折し、細かく震える。

俺が手に掴んだ金貨が金色に輝き、宙に浮き上がり、足元に落ちた金貨がそれをきっかけに、流動しだす。

さらに俺は追加で、大道具入に入った大金貨を次々に取り出す。

宙に浮かんだ金色の塊は、複数の輪に分裂すると、その数だけ大小様々な金色の人の形を模して行く。


数十体に分裂した金色の天使達が、俺のたった一つの指示に従い散開する。

街全体に拡がった幻獣、猛獣、巨獣、魔獣の数は数百に及んでいた。

それらを金色の天使達がそれぞれに与えられた金色の武器で瞬殺して行く。


俺は、その様子を見守ると、さらに大金貨を数十枚束ね大道具入から取り出す。


「か、かみ、神よ……」


ルーディーが俺に手を添えたまま崩れ落ちる。

アオバ、ローヤからは既にその手を離していた。

地面に横たわり、吐血しながらも、俺に触れる手を離す様子は無い。

本当に死ぬまでその手を離さないつもりらしい。


「ルーディー良くやった、少し休め」

「か、み、よ……」


ルーディーは気を失う瞬間まで、俺から手を離さず、スキルを解く様子も無く、最後には瞳を開けたまま気を失った。

最後まで、同じ事をオウムやインコの様に繰り返し発する事しかしなかったこの男からは、拷問による支配とは違う、何か強烈な意思を感じた。


驚いたのは、ルーディーが気を失っても、まだスキルの余韻が残っている事だった。

ゆっくりと、コマ送りの様に世界が動きだす。

しかし、その動きは本当にゆっくりで、まだスキルを発動するだけの余力がある。


俺は、ルーディーの手をそっと離すと、開けたままの瞳を閉ざし、ゆっくりと、しかし確実に異変に気付き、俺の方へ視線を送る4体の眷属を睨み返す。


「スキル発動! “黄金の流星(スターダスト)”」


俺の手から放たれた複数の流星は、以前までのそれとは事なり、一つ一つを小鳥の形を模して飛び立ち、上空へと上昇すると、4体の巨大な眷属、“サイクロプス” “デーバイ” “ゴーゴン” “ベヒモス”を目掛けて急速に落下する。


一瞬の出来事だった。

今までコマ送りだった世界が、“黄金の流星(スターダスト)”が眷属を貫く直前に早送りのように時間を取り戻し始め、眷属が俺のスキルに対して足掻こうと動きを始めた瞬間に金色の小鳥達が一斉に4体の眷属を貫いた。


眷属達にはそれぞれに特性と、特殊な能力があるという事だったが、全ての眷属がその特性を発揮する事無く崩壊して行った。

“黄金天使”達も、それとほぼ同時に獣達を狩り尽くし背中から生える羽を羽ばたかせ、俺の指示を待つように待機している。

当然、俺からはそうしている間にも大量の魔力が消費されて行く。

しかし、ここでスキルを解く分けにはいかない。


「ジンさん…… 助けに来て、くれたんすね……」


砂ぼこりの向こう側に、瓦礫をどかし、一歩ずつこちらに近づいて来る人影が見えた。

青く長い髪を風に流し、降りしきる雨に頬を濡らしている。

その身体は、以前よりも小さく見える。


「チイユ……」


俺に近づく少女に対して、普段であれば、アオバが警戒し、俺との間に必ず割って入るのだが、少女が何者なのか一瞬で察したらしく、絶対にこちらに視線を飛ばさない様に周囲を警戒している。


「ジンさんだったら、絶対に帰ってくるって、オイラ達を助けてくれるって信じてたっす」

「あぁ、当然だろ! でも、少しだけ待たせたな」

「そんな事ないっすよ、一瞬だったっす」


びしょ濡れになりながら、少女が俺に微笑みかけると、まるでそれがスキルの発動条件のように、降りしきる雨が途端に止んで雲の切れ間から光が差し込み始めた。

差し込む日の光に視線を奪われていると、“災厄と(ソードオブ)災難(ディザスター)”の反動で未だに痛みが残る両手を、柔らかく冷たい感触が包み込む。

雨で冷えたその手は、とてもこれだけの状況から皆を救い出した偉大な人物の手だとは連想出来なかった。

沢山の犠牲はあったが、これだけの被害で済んだのも、あの状況から皆を守り、逆転劇を繰り広げられたのは、紛れも無く、この小さくて冷たい手のひらのお陰だ。


「ローヤも良く頑張ってくれたっす! 見直したっすよ! まぁ、ジンさんには負けるっすけどね」

「ちがっ! 僕は……」


チイユの称賛を受け入れるには、余りの多くの犠牲を招き入れた事を言い出そうと口を開くローヤに対して、全て分かってるからと言いたげなチイユの笑顔がその言葉をそっと消し去る。

ローヤの瞳から大粒の涙が溢れ落ちる。

膝から崩れ落ち、地面にすがるように嗚咽を交えて号泣する。

その様子を、俺の両手を握りながらチイユが優しく見守っている。


「ぐあっ!」

「離せ! 離せぇえええ!」


そんな俺達の前に、一際大きな天使が二人の男達を連れて、舞い降りる。

両腕を後ろに回され、金色の鎖で巻かれ拘束されている。


「命が欲しければ、俺に聞かれた事だけに答えろ!」


俺はチイユの手を暖めるように、一度ギュッと握りしめ、そっとその手を離すと、主犯であろう二人に殺意を向ける。


「そんなに怒らなくても大丈夫っす、この方はルシアン王国の現国王“ルシアン・スカーレット”王っす」

「それで、王様が、何の目的でこんな事をしたんだ? 俺もよくは分からねーけど、王とは民の命を重んじるもん何じゃねーのかよ!」


冷静に会話を交わそうと思ったが、感情が荒ぶる。


「チイユ、何が大丈夫なんだ?」

「この王様は、ローヤと違って悪い奴じゃないって事っす」

「でも、今のローヤは良い奴っすけどね」


チイユの言葉には、妙に説得力があり、その声は安心感に満ちている。

その事を誰よりも感じているのはローヤのようで、一頻り泣き終えると、立ち上がり、ズボンに着いた泥を軽くはらうとルシアン王の横に並び、共に罰を受けるとでも言いたそうに再び両膝を付いた。


「今、“スカーレット”と申したのですか?」


戦闘の中で、手放した所など見た事も無かった薙刀を、泥だらけの地面に落としアオバがチイユに問いかける。


「君は? まぁ良いっす、そうっすよ、この方はこの国の王“ルシアン・スカーレット”っすけど、どうかしたっすか?」

「どうかって…… ジン様、この御方はリリム様の、もしかして、お父上では?」

「リリムの!?」

「リリム!? お前達は、リリムを、娘を知っているのか!? どこに、今、どこに居る!!」


鎖で縛られ、観念した様子だったルシアン王が激しく身体を揺らし俺に問いかける。


「それがどうかしたか? 俺が言った事が理解出来ないか?」

「ジンさん! 何してるっすか!?」

「チイユの言葉に、リリムの名前に少しだけ気が緩んだが、チイユはこの惨状が分からない分けじゃねーだろ? 何が大丈夫なんだ?」

「それは、説明するっす」

「あぁ、だがそれは後で良い」

「もう一度だけ言うぞ、俺の言う事だけに答えろ!」


街に散っていた、“黄金天使”達を俺の周囲に集めると、何が起きても対応出来るように金貨を握りしめルシアン王に問いかける。


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