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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
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75、無力の変換

この瞬間の事をどれだけ待ちわびただろう。

災厄と(ソードオブ)災難(ディザスター)”二本の剣が、透明な防壁にぶつかる。

俺は、ラップにハサミを通す様なイメージで斬りつけたハズだった。

しかし、俺が自ら描いた軌跡は、想像とは異なり漆黒の稲妻を周囲に撒き散らし激しく壁にぶつかると、吹き飛ばされそうになるのを拒むように防壁に吸着して、見えない防壁に、確かに誰にでも見える亀裂を入れて、凄まじい痛みと、衝撃を俺の身体にもたらせながらも、それ故に防壁が壊れて行く事を誰よりも実感出来た。


透明な防壁は、漆黒の稲妻を吸収するよに、亀裂が広がって行く。

ガラスに亀裂が入るような、弦がゆっくりと切れるような、石がネジ切れるような、例えようも無い不快感を与える音と、漆黒の稲妻が迸る音が交わり、その音は亀裂が広がれば広がる程に大きくなって行く。


亀裂がどこまでも広がり空を覆った所で、凄まじい振動と共に、眩い光を放ち透明な防壁が弾けとんだ。


その光景に、その瞬間に立ち会えた事に、ルーディーが歓喜の雄叫びをあげる。カゲロウは途中から腰が砕けまともに立ち上がる事さえ出来ない。

アオバは、空から舞ってくる防壁の欠片を手に取っては、雪のように消えて行く様を見つめながら方針状態になっている。


ただ一人、この瞬間を待ちわびたローヤだけは、防壁で仕切られていた空間に飛び込む。


「ジン! 行くよ! ここからが本番だからね」


ローヤに遅れる分けにも行かず、アノ時、アノ瞬間から時間が止まっているとすれば、チイユは複数の敵に囲まれ、沢山の人々を必死でスキルで守り、そんな中で俺を“神の翼(ゴッドウィング)”で飛ばした直後という事になる。

あまりにも無防備で、あまりにも危うい状況だ。

それを理解しているからこそ、ローヤは防壁の破壊と同時にその領域に飛び込んだ。


俺も急ぎローヤを追いかけようとするが、全身に激痛が走り、剣を握っていた両腕から魔力が逆流するように、痛みに沿って血が吹き出した。


「ジン様!」

「神よぉぉぉお!!」


俺の手から、二本の剣が地面に落ちて行く。

剣は、地面に着く前に塵となって消えて行く。

漆黒の稲妻が消えた剣の周囲に迸る。

その稲妻が消え去るのを待って、ルーディーが俺の身体を支えてた。


「神よ!?」

「お前は、さっきからそれしか言えねーのかよ……」

「違っ! 俺は……!」

「分かってるよ、心配するな、俺だったら大丈夫だ」

「とてもその様には……」


自身の魔力を抑え付け、逆流し続ける漆黒の魔力を、左目に集中して抑え付けると、ゆっくりと詠唱を行い、サティを召喚すると、見た目の傷だけはしっかりと癒した。

しかし、それはあくまでも見た目だけの話で、身体を焦がすような漆黒の魔力のダメージを消す事は出来なかった。

ふらつきながらも、ローヤを追いかけようとする俺をルーディーは尚も支え続ける。


「今こそ、俺の、否、神の魔力を使う時!!」

「スキル発動! “疾風航路(カミカゼ)”」


ルーディーがスキルを発動すると共に、周囲の景色がゆっくりと時間を止めたように制止する。


防壁の中は、アノ時のまま、大量の雨が降り続けている。

ルーディーがスキルを発動すると、線で繋がっていた雨が点になって行き、次第にその動きを止めた。


雨の点が覆い尽くす空間で、ルーディーは俺を担ぎ上げると、そのままアオバの所へ行き、アオバに触れ同じ時間軸の中へと引き込む。

流れるように走ると、一瞬でローヤに追い付く。

追い付いたローヤも、同じ時間軸へと招くか訪ねるルーディーの視線に対して頷くと、アオバの時とは違い強引に耳を引っ張り同じ時間軸へと招き入れた。


「これは、何なんだい?」


制止した時間軸に強引に招き入れられたローヤは、耳を引っ張られる痛みなど無いように俺に訪ねるが、俺が答えるよりも早く、ルーディーが自らのスキルと特性と、それを可能にした魔力について詳しく説明してみせた。


「これだったら、うん、絶対大丈夫だよ! 本当にありがとう!」


ローヤの口から、初めて感謝の言葉を聞いた気がした。

イヤ、実際には聞いた事があるのかも知れないが、本心からの感謝の言葉は間違いなくこの時初めて聞いた。


その光景は直ぐに見えて来た。

街の人々は、四肢をもがれ、文字通り八つ裂きにされ、瓦礫と、血飛沫が舞い上がる阿鼻叫喚の地獄絵図へと帰ってきた。

俺はその中で必死にチイユの姿を探す。


俺は、この時の事を必死に思い出す。

僅かの時の中で、沢山の命が失われ、沢山の建物が瓦礫となり、少しでも多くの命を守ろうとチイユが必死でスキルを発動していた。

俺はと言うと……

ただ、何も出来ずにその場に立ち尽くし、それだけだったらまだマシだ、チイユの防御壁に守られ、誰の命も救う事など出来ず、無力感に苛まれていた。


やっと帰って来た。

「帰って来たんだ……」

「そうだよ、僕達は帰って来たんだ!」

「ローヤ?」


俺は、記憶をさらに遡る。

元はと言えば、こいつの策略、謀略でこんな事になったんじゃ無かったのか?


「そうだよ、これは僕が招いた結果だよ」


俺は、一瞬にして沸点を越える殺意でローヤを殺してしまいそうになった。

実際に何度も頭の中で、こいつを殺していた。

しかし、それを実際に行動に起こさなかったのは、こいつが素直に自分が招いた結果について認めたからだ。


「どーいう事だ? 今度こそ話してくれるのか?」

「僕だって、この日からずっと考えて来たんだ、自分が何をしてしまったのかを……」


耳を引っ張られるという、滑稽な格好にも関わらず、その表情は至って真面目だ。


「全ては……」

「もう、話さなくていーよ」


ローヤが何を思い、何を考え、こういう結果に至ったのか、確かに気にはなる。

それよりも、俺にはやらなければならない事があるし、今更こいつを責めた所でこの惨状が無かった事にはならない。


「スキル発動……」


俺は、大道具入から多量の金貨を取りだした。

手に握り込めない金貨が地面に散らばる。


ゆっくりと息を吸い込みスキルを発動する。

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