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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
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73、支配と征服

「だったら、今度こそチイユ達を助けに行こう!」

「本当に、君はそれだけが望みなのかい?」


ローヤはいつもと変わらない口調で、しかし、視線は自然と怯え、声のトーンは幾分か高いように感じる。

意識せずとも、意識の外から自身を強迫観念で縛っているだろう事が理解出来る。

なぜなら、俺もそうだからだ。


災厄と希望の神(パンドラ)と会話を交わす時に似ている。

絶対に屈したくは無いが、力を借りずには事が成立しない事がある。

それに、そんな事よりも選択したく無い事が、この世界には沢山溢れている。

だから俺は、災厄と希望の神(パンドラ)と会話をする時に、今のローヤの様な状態になっているんだと思う。

ローヤもきっと、ずっと、そうだったんだろうという事が今更だが少しだけ理解出来た。


少しだけローヤに対して、共感が持てたが、不意にこいつが飛竜と出会った時に生きる事を諦めていた時の事を思い出した。


『ジン様よ、こいつはお前とは違うと言う事じゃ、妾はお前じゃから惹かれたんじゃ』

な、突然どうして話しかけて来たんだ? 今まで声をかけても反応しなかったのに。

『ジン様よ、お前はやはり阿呆よのう』

どういう事だ?

『妾も色々と忙しいという事じゃ、分かったら、妾との話よりも、目の前の奴等との会話を大切にする事じゃ』

そんな、事よりも、お前に聞きたい事が……


俺が、再び災厄と希望の神(パンドラ)に問いかけようとした時、自然と理解出来た。

そこに居るのは間違いない、しかし、会話する事が叶わない事を。

どういう原理なのかは今すぐには分からないが、こいつが俺との会話を行う為には、何か条件があるんだろう。だったら、だったで、その条件を教えてくれれば良いだけの事だろうが、それをやらないのも、何か意図か、理由かがあるんだろう。

だったら、それを教えてくれるのを待つとして……


「ローヤ、お前達も同行するのか?」

「当然だよ、僕が居なければ、チイユに辿り着けないだろ?」

「いいや、お前が居なくても何とかなるが、どうしても一緒に来たいというんだったら、連れて行っても良いぞ!?」


魔力を迸らせる俺に対して、涙を浮かべローヤが膝をつき答える。


「必ず、お役に立たせて頂きます、どうかこんなゴミ虫であっても、連れて行っては頂けないでしょうか?」

「ジン様? どうされますか?」

「どうなさいましょうか?」


アオバとルーディーが、絶対に連れて行かない方が良いと言いたそうな表情で俺に視線を飛ばして来る。


「お前達はどうしたい?」

「「置いて行きましょう!!」」


二人が声を揃えてそう良い放つと、ローヤは俺の足を、顔から出る色んな液体で汚しながら必死に同行したいとすがり付いた。

命乞いをする時も、こんなにはやって無かったと思う。


「ローヤお前の目的は何だ?」

「チイユを助けたいんだ!」

「それだけじゃねーだろ?」

「違うね、それだけだね、君には全部、僕の本心を全てぶちまけたと思ったんだどね、そんなに言われると少し悲しいよ……」


俺は自分の魔力に、忘却の女神(レテ)から漏れ出る魔力を混ぜて迸らせた。

ローヤは溢れる炎の渦に怯えながらも、必死に俺に懇願した。


「あぁ、そうともさ、君の炎が怖いよ、怖くて、怖くて堪らないよ、でもね、僕はもっと怖いことを知ってるんだ」

「それが、何だと言うんだ?」

「ジン、それは君も知ってるハズだよ?」

「やめろ! アオバ、ルーディー落ち着け!」

「しかし!」

「この男は少しばかりジン様を愚弄し過ぎました」

「神よ! そのとーーりでございます!!」


呼び捨てにしたから怒っているのか、俺に対して説教紛いな事をやっているから怒ったのかは分からないが、ローヤが俺をジンと呼んだ瞬間に、アオバの中の何かが怒り、瞬時にローヤの首を跳ねようとするのを瞬時に抑え込んだ。

ルーディーが短剣を構えスキルを発動しようとする所に無言の圧力をかける。


「おぉぉおお! 神よ、なぜこの様な輩の命をぉぉぉおを!」

「だから、落ち着けと言ってる! ローヤは間違いなく悪だ、しかし、これを悪だと言うのであれば、間違い無く俺も悪だという事になる」

「そぉぉぉおれは断じて違います! 神は神! 唯一無二の存在であらせますぞ!」

「分かった、分かったから! ローヤ、お前もある程度空気を読んで、こいつを刺激するな!」

「君に従えば良いんだろ? 僕だって理解はしてるんだけど……」

「その身体に! 今度は私が教えてやろうか!?」


もう良い、分かった、ここでどれだけ話をしてても時間の無駄だ。

もし、万が一、俺の命令を無視して、こいつらがローヤと影の男を殺そうとするような事があれば、サティを召喚してすぐに回復させてやろう。

そっちの方が圧倒的に楽な事を理解した。


「行くぞ!!」

「あ、ジン様! お待ち下さいませ!!」

「かーみよ! 俺も、主と共に参りますぞ!!」

「カゲロウ、僕達も行こうか……」


アオバとルーディーの後ろに着いて二人が足取り重く追いかけてくる。

影の男は、カゲロウと言うのか。

そう言えばずっと名前を聞いて無かったな。


「カゲロウ! お前の力も貸してくれるか?」


俺の問いに対して、カゲロウは無言で首を縦に振った。

その目は、決意に満ちていて、俺の事がどうとかでは無く、何かを成し遂げようと、そういう男の目だった。


俺は、後に後悔する事になる。

この男を、なぜあの時に殺しておかなかったのかと、なぜ無力化しておかなかったのかと、なぜ城に置いてこなかったのかと。

しかし、この時は、ただその瞳に宿る確かな決意に、根拠の無い安心感を少しだけ頂いてしまっていた。

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