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GOLD GOD GLORY  作者: 白雲糸
第二章~勇者の帰還~
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66、命乞いをするにはもう遅い

漆喰を使ったような真っ白な部屋に案内された。

壁も床も天井も全て白く、机や椅子まで白く保たれている。

汚れや、ゴミなどは一切見当たらず、綺麗に清掃されている。

聞けば、ここには数多くのメイドが居て、ヒビキ達の身の回りの世話を行ってくれているという事だった。


宝物庫にある大量の金貨と財宝に関しては、半分以上が観光の収入で、残りがイベントを攻略して手に入れたモノだという事だった。


俺は改めて、ヒビキとニカに、この都市の事など、お前達の事などどうでも良い事について話して聞かせた。それでも尚、命乞いをするこいつらの中に完全に拷問の傷跡が残っているんだろう。

俺には良く理解出来た。心臓を握りつぶされたんだから、嫌でもこいつらの服従心は理解出来る。

加えて言うなら、災厄と希望の神の魔力支配というモノも影響しているんだろう。


俺は、白い椅子を引き、おもむろに腰かけた。

他の奴等にも座るように促したが、ヒビキとニカは俺の足元に這いつくばらないと落ち着かないらしく、俺は反対にそいつらの行動に落ち着かず、特に何かを発するでも無くその状況を受け入れた。

アオバはその様子を見て、気分を害するのでは無いかと心配したが、俺のそんな様子を見て、俺の心配をよそに妖艶な表情で俺の足元から顔までを、何度も往復して視線を送っている。


リリムの安全に関しては、災厄と希望の神からの強制的な情報の共有によって把握していた。律儀にも、女性の扱いは丁寧にと、隔離されてこそはいても、設備の整った部屋で軟禁されている。しかも、多分きっと未だに深い眠りについているだろうと言う事だった。


「さて、お前達はやり方を間違えたんだが理解しているか?」

「はいぃぃいいいぃ、ジン様こそ神、ジン様こそ正義」

「あぁあぁぁぁぁぁああ、ジン様……」


ダメだな、全く会話にならない。

精神支配というのであればもう少しまともに会話も、交渉も出来るんだろうが、この様子では当分の間まともに会話する事は出来ないだろう。


「もう良い」

「どうなさいますか?」

「この都市を支配し、バル達を呼び寄せ、冒険者組合の拠点としようかと考えてもいたが、やはり何よりも優先すべきはチイユを助け出す事だ」

「そのチイユと言う者は、もしかしてジン様の…… でも、ジン様にはイエーミュ様と言う方がいらっしゃいますし…… それだとリリム様は…… 私にも一生側に居ろと言って下さいましたし……」

「っ!! あ、違うんです、滅相もありません、私はただお側に支えさせて頂ければそれで良いのです」


アオバの言葉を聞きながらも特に質問に対する答えを言うでもなく、その声を聞き流した。

綺麗で凛々しく整った顔を真っ赤に火照らせ、暑いのか両の手のひらでその顔を一生懸命に扇いでいるアオバの肩を叩き立ち上がると、椅子をゆっくりと机の下に入れ、部屋を出ようとそのままに歩みを進める。

しかし一歩目を踏み出そうとすると、ニカが必死に足にすがりついて来た。


「どこに行かれるのですか? 私達の失態を聞き付け、まもなくシンエツ共和国の者達がここまで参ります、私達を置いて行かないで下さい、どうか、どうか、助けて頂けませんでしょうかぁぁぁああ」


嗚咽を交えて、顔から流れ出るであろう液体を全て流しながら俺にすがる様子を、アオバは侮蔑し、先程までとはどうしてこうも異なると思う程の嫌悪感剥き出しの表情で完全に見下している。

言いたい事もある様子だが、俺の手前、それを一生懸命に飲み込んでいる。

そのまま斬り殺してしまうのでは無いかと心配になる程に薙刀を持つ手に力が入っている。


「嫌だね、最初に助けると言った時に素直に俺に助けられていれば良かったんだ」


その一言を放った時に、不意にチイユの姿がニカに重なって見えた。

もしも、ニカがチイユだったら…… そんなあり得無い“もし”を考える事事態があり得ないとは分かってはいても、助けてやらなければという声が聞こえた気がした。

しかし、それでも今はそんな気になれない。


「ヒビキ! 俺は今から、お前の仲間だったと言うチイユ・タスクロードを救いに行く、分かるか?」


ヒビキは俺の声を聞くと、天からの声を啓示でも聞いているように悦の表情を浮かべ頷いている。


「チイユを救った後には、必ずここに戻り、チイユと共にこの都市を救ってやるから、それまでの間、命をかけてこの都市を守りきれ、良いな分かったな?」

「はい、我が神、ジン様の命のままに」


俺の命令を最後まで聞いたヒビキの表情は、先程までの腑抜けた様子から一変して、最初に出会った時とも違う、凛々しく頼もしい表情に変わり、俺の足を舐め回すように這いつくばっていた所から、片ひざを付き、頭を下げ永遠の忠誠でも誓うかの如く俺が部屋から出るまでその状態を維持していた。


「ジン様、本当にあれで良かったんでしょうか?」

「あぁ、問題無い、あいつの力は本物だ」

「どんなスキルをお持ちでしたんでしょうか?」

「触れたモノは無機物であれば、何でも操れるって言うぶっ壊れスキルだよ」

「何でも…… でしょうか?」

「あぁ、何でもだよ」

「それは、凄まじいですね」

「そうだろ? それよりも、その肩に担いでる男は俺達の言う事を聞くのか?」

「はい、何なりとお申し付けて頂いて結構です」


アオバが腕に力を入れたのか、道具でも拾って来たように担がれている男は悶絶の表情を浮かべるが、口を塞がれている為に声を上げる事も出来ない様子だった。


外に出ると、真っ青で、雲一つ無い空が俺達を出迎えてくれた。

これ以上リリムに暴走される分けにもいかない俺達は、そのままリリムを軟禁しておく事にして、アオバが担いでいる男にスキルを発動するように強要した。

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