58、有象無象
「リリム、付いて来れるか?」
「大丈夫だよ」
2本の剣をクルクルと回しながら、倒れた兵士達を踏まないように気を付けてこちらに歩いて来ると、俺の横に立ち、前方に残る兵士達に鋭い眼光を飛ばす。
「ここで、引いたら俺達に帰る場所は無いぞ!」
「怯むな! 行け! 行けぇぇぇ!」
指揮官らしき男が兵士達に檄を飛ばすと、逃げ腰だった兵士達が奮い立ち俺達、というか、執事達に剣を向けるが、鋼位の剣であれば先に剣が虫に喰われたようにボロボロになる。
しかし、兵士の数が多く何人かを伐ち漏らす。
「行け! 行けぇぇ!」
抜け出た兵士達に、ここぞとばかりに指揮官が歓喜の表情で檄を飛ばすが、あっという間にリリムが殲滅してしまう。
表情を曇らせ、膝を付く指揮官を見た兵士達の指揮が一気に下がる。
「そんなに時間をかけて、余裕だな」
橋の入り口の兵士達を一通り片付けた所で、金髪七三アロハの男が俺の事を揶揄してきた。
「お疲れちゃん、やーやーどうも、時間稼ぎご苦労様」
「雑魚が、どけよ」
「あんたらは、冒険者? どうりで、兵士じゃ役に立たない分けね」
「リリムは冒険者じゃないけどね!!」
「やれやれ、スキルも使えない奴等を相手に調子に乗って……」
豪華な甲冑に身を包んだ3人の男が兵士達の奥から出て来た。
そいつらを目掛けて飛び出そうとするリリムの首根っこを抑える。
“キャンッ”と言って、悲しそうに俺を見つめて来るが、こいつは状況の変化にまったく気付いて居ない。
「お前らの中で、冒険者って居るのか?」
「だったらどうしったて言うの?」
3人は俺の質問に答える事無く、一斉にスキルを発動した。
「スキル発動! 鋼鉄球」
「スキル発動! 全身強化」
「スキル発動! 風狸」
放出された、鋼鉄の球が執事の二体を破壊し、球体に渦巻く風に残りの二体が突っ込むと粉々に粉砕された。
残る大柄の男は、全身から湯気を上げ、こちらに突っ込んでくる。
迎撃するために、首根っこから手を離すと、途端にリリムは2本の剣を振りかざして、次々に大柄の男を斬り付けるが、剣が先に使い物にならなくなり、腹部を蹴られ、俺の後ろまで吹き飛んだ。
「スキル発動! 黒鉄宮」
「スキル発動! 風狸の抱擁」
倒れていた、銀布の男が立ち上がり、俺の足を黒い砂鉄のようなモノで掴み、俺の身体を這うように上に伝わせる。
それと同時に、露出の多い白金の甲冑に草花の紋様を緑色の線で装飾したモノを身に付けた、ショートボブヘアーの化粧をした男が、可愛らしい感じの狸の形を模した風の渦を俺に向けて放つ。
スキルは、精練すればする程にその威力が増す事を、黄金執事を通してよく理解している。
風の狸は俺に抱き付くと、息が出来ない程に風が渦巻き、その隙に砂鉄が俺の身体を多い尽くして行く。
ゆっくりと腹部まで砂鉄が上がってきた所で、足を動かして見ようと試みるが全く動かない。
風で息苦しさはあるが、強風の扇風機に口を開けて声を出す程度のモノだった。
この時、改めて、エドでの経験を通して、それにこの数ヵ月間の拷問の様な山登りを通して上昇した自身のステータスの向上を体感する。
スキルを発動したやつらの余裕の表情を見る限り、これで俺を仕留める、もしくは捕らえた気になってるんだろうが、悪いが検討違いも甚だしい。
「赤きモノよ、さらに紅く、煩わしき色彩を全て白く染め、我が名の元に此の世界を紅と白に染め上げん」
「ちょっと待ってよ、何よ、何なのよ、その詠唱は!」
風狸を放った男が声を上げるのと殆ど同時に、リリムを蹴り上げた男が俺へと物凄い形相で迫る。
だが、もう襲い。
金髪七三男が言う通り、時間をかけすぎた、こいつらを倒した所で次から次にこんなやつらに出て来られて、ここで足止め食らう分けにもいかねーからな。
「出でよ! 忘却の女神!!」




